■事実
AMDが2026年8月4日(米国時間)、2026年度第2四半期(6月27日締め)決算を発表しました。
売上高は115.36億ドルで、四半期として過去最高。前年同期比50%増、前四半期比13%増です。
データセンター部門の売上高は67.2億ドルで、前年同期比107%増(実質倍増)。全社売上高に占める比率は58%に達しました。
クライアント部門(Ryzen等)は31億ドルで前年同期比23%増です。
ゲーミング部門は7.79億ドルで前年同期比31%減。減収の主因は「コンソール製品サイクル終盤による半カスタム(コンソール向けAPU)売上の減少」と「部材コスト上昇によるグラフィックスカード価格上昇が需要を圧迫したこと」の2点です。
クライアント+ゲーミングの合算売上高は38.41億ドル(前年同期比6%増)にとどまったが、この合算セグメントの営業利益は7.67億ドルから5.82億ドルへ減少しており、ゲーミングの落ち込みが収益性を下押ししていることが分かります。
エンベデッド部門は9.77億ドルで前年同期比19%増、新規設計獲得は年間180億ドル超のペースで推移しています。
GAAPベースの売上総利益率は54%(前四半期の53%から改善)、非GAAPベースは56%です。(前年同期比200ベーシスポイント超の改善)
GAAP営業利益は19.9億ドル。前年同期はGAAP営業損失だったが、これは前年同期に中国向けMI308輸出規制に伴う8億ドルの在庫関連費用が計上されていたことが主因です。
非GAAP希薄化後EPSは1.66ドル(前年同期0.48ドル)、GAAPベースは1.38ドル(前年同期0.54ドル)です。
好決算にもかかわらず、時間外取引でAMD株は約7〜8%下落しました。要因は非GAAP売上総利益率が市場予想の56%に対し実績54%にとどまったこと(Helios立ち上げに伴う近視眼的コスト増が影響)です。
決算発表と同時期に、イーロン・マスク氏が率いるSpaceXがAMD製チップの購入を打ち切り、NVIDIAのBlackwellアーキテクチャに一本化する方針だとWall Street Journalが報道(金額規模は非開示)です。
第3四半期の売上高ガイダンスは中央値130億ドル(±3億ドル)。達成すれば前年同期比約41%増となります。
AMD CEOのリサ・スー氏は「AI導入の複数年サイクルはまだ初期段階」と説明し、2027年にはデータセンター部門の売上高が倍増以上になるとの見通しを示しました。
MI450世代GPU・第6世代EPYC・Pensandoネットワーキングを組み合わせたラックスケールAIシステム「Helios」が量産段階に入り、第3四半期末までに出荷開始予定です。
AnthropicとはHeliosラックを通じ最大2ギガワット規模のInstinct MI450系GPUを導入する提携を締結。AMDはAnthropicに対し最大50億ドルの株式投資も行う。最初の1ギガワット分は主に2027年に出荷予定です。
Microsoft(Azure)、Meta、OpenAI、Cerebras、Ciscoなど大手顧客もHelios/AI基盤の採用・検証を進めていると説明しました。
サーバー向けEPYC CPUの売上高は2026年下半期に前年同期比80%超、2027年に70%超の成長を見込むとガイダンスです。
2027年投入予定の次世代アクセラレータ「MI500」は、これまでで最大の世代間性能向上になるとAMDは説明しています。
NVIDIAの直近発表決算は2027会計年度第1四半期(2026年4月26日締め)で、データセンター部門売上高は752億ドル、前年同期比92%増です。
同四半期の全社売上高は816億ドルで、前年同期比85%増です。
2026会計年度通期(2025年1月27日〜2026年1月25日)のデータセンター部門売上高は1,937.4億ドルで、全社売上高の89.7%を占めています。
NVIDIAの2027会計年度第2四半期(2026年7月26日締め)決算は2026年8月26日発表予定であり、本稿執筆時点(8月6日)ではまだ公表されていません。
NVIDIAは同第2四半期の全社売上高ガイダンスを910億ドル(±2%)としており、これが現時点で判明している最新の会社側見通しです。
AMDのデータセンター部門売上高(2026年第2四半期、6月27日締め)は67.2億ドル、前年同期比107%増です。
単純に金額を比較すると、NVIDIAのデータセンター売上高(752億ドル、4月締め)はAMDのデータセンター売上高(67.2億ドル、6月締め)の約11.2倍です。
成長率で見るとAMDの前年同期比107%増はNVIDIAの92%増をわずかに上回っています。(ただし基準となる四半期がそれぞれ異なる点に留意)
ソース
比較表(セグメント別売上高)
| セグメント | Q2 2026売上高 | 前年同期比 | 全社売上高に占める比率 |
|---|---|---|---|
| データセンター | 67.2億ドル | +107% | 58% |
| クライアント+ゲーミング(合算) | 38.41億ドル | +6% | 約33% |
| うちクライアント | 31億ドル | +23% | ― |
| うちゲーミング | 7.79億ドル | −31% | ― |
| エンベデッド | 9.77億ドル | +19% | 約8% |
| 全社合計 | 115.36億ドル | +50%(前四半期比+13%) | 100% |
AMD公式決算発表資料の数値を基に作成。クライアント/ゲーミングの内訳は決算説明会での言及に基づく。
NVIDIAとの比較表(データセンター部門・直近発表決算ベース)
| 項目 | AMD | NVIDIA |
|---|---|---|
| 対象四半期 | 2026年第2四半期(〜6/27締め) | 2027会計年度第1四半期(〜4/26締め) |
| データセンター売上高 | 67.2億ドル | 752億ドル |
| 前年同期比 | +107% | +92% |
| 全社売上高に占める比率 | 58% | 92.1%(816億ドル中) |
| 全社売上高 | 115.36億ドル | 816億ドル |
注:両社の会計年度区切りが異なるため、対象期間は約2カ月ずれている。NVIDIAの2027会計年度第2四半期(AMDの対象四半期とより近い期間)の実績は2026年8月26日発表予定で、本稿時点では未公表。
解説
データセンター事業が全社売上の58%を占め、ゲーミングが7%程度まで縮小したという構図は、AMDがもはや「ゲーミングGPUの会社」ではなく「AIインフラの会社」に変貌したことを数字で裏付けている。
ゲーミング減収の理由として挙げられた「部材コスト上昇によるグラフィックスカード価格上昇」は、直近取り上げたGDDRメモリ価格高騰の話と地続きの現象。AIデータセンター需要が民生向け製品の値上げを引き起こすという構図が、AMD自身の決算発表という一次情報の形で改めて裏付けられた形だ。
「コンソール製品サイクル終盤」という説明は、AMDが四半期ごとに繰り返してきた定型句であり、今回も目新しさはない。むしろ半カスタム事業の構造的な縮小基調がいよいよ隠しようのない水準まで来たとも読める。
クライアント+ゲーミング合算の営業利益が減少している点は見過ごされがちだが重要。売上高の合算だけを見ると「微増」に見えるものの、実際にはゲーミングの落ち込みが収益性を目に見えて悪化させている。
好決算にもかかわらず株価が下落したのは典型的な「完璧を織り込んだ株価」の反応。売上・利益とも市場予想を上回ったにもかかわらず、粗利率がわずか2ポイント予想を下回っただけで時間外に7〜8%売られた。
SpaceXがAMDチップの購入を止めてNVIDIA Blackwellに一本化したという報道は、金額規模こそ不明だが、AI向けアクセラレータの大口顧客がいつでも競合に切り替えうるという顧客集中リスクを象徴する出来事だ。
AMDが自社発表するHeliosの性能優位性(「競合ソリューション比15%高いスループット」「30%優れたトークン単価」)はあくまで自社ベンチマークであり、第三者検証や実運用データが出揃うまでは割り引いて評価すべき。
Anthropicへの最大50億ドルの出資とセットになったチップ供給契約は、単なる納入契約ではなく資本関係を伴う囲い込み戦略。半導体各社が主要AIラボへの出資を通じて需要を先食いする動きが常態化しつつある。
金額そのものを見れば、NVIDIAのデータセンター事業は依然としてAMDの10倍超の規模。AMDの「倍増」という見出しのインパクトに比べ、絶対額の差は依然として圧倒的。
一方で成長率だけを取り出すとAMDがNVIDIAをわずかに上回っている点は事実。ただしNVIDIAは既に単月換算で数百億ドル規模まで積み上がった上での90%超成長であり、AMDの「小さな分母からの倍増」とは意味合いが異なる。
NVIDIAの全社売上高に占めるデータセンター比率が92%に達している一方、AMDはまだ58%。NVIDIAは既に「データセンター企業」と言い切れる状態だが、AMDはクライアント・エンベデッド・ゲーミングを含めた多角経営がまだ色濃く残っている。
CUDAエコシステムの牙城がある以上、AI学習用途ではNVIDIAへの一極集中がすぐには崩れないという見立てを裏付ける材料が今回の数字にも表れている。AMDのHelios/MI450が推論市場でシェアを伸ばしても、NVIDIAの絶対的な規模を短期間で埋めるのは依然として難しい。
「AMDのデータセンター事業が倍増した」というニュースだけを見ると景気が良く聞こえるが、NVIDIAと並べると「体格差のあるボクサーがどちらも同じペースで筋トレしている」ようなもの、というのは分かりやすい比喩かもしれない。