自作PCユーザーがゲーム用PCの解説をします

自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド

中国のDUVリソグラフィ企業「上海アイシェンナ」の実態、ガラス基板とEUV試作機併用で北京が布石

投稿日:

■事実

Reuters(2026年7月28日、シンガポール発)が、中国の国産浸漬式DUV(深紫外線)露光装置の量産を主導している企業として「上海愛勝納電子科技集団(Shanghai Aishengna Electronic Technology Group)」の名を初めて特定します。

Aishengna社は2023年8月設立、登録資本70億元(約10億ドル)。株主は上海電気(Shanghai Electric Holding)と上海国際信託傘下企業の2社のみで、いずれも国有企業でする

同社は公式サイトを持たず、事業内容についての公表情報がほぼ皆無です。

露光装置開発チームは、DUV試作機をSMICで2025年9月からテスト中だったスタートアップ「毓亮生(Yuliangsheng、ファーウェイ系SiCarrierの関連会社)」と、上海微電子装備(SMEE)の人員を吸収して編成しています。

WCCFtechの取材では、SMEEスピンオフのAIMES Technologyが後工程設備を担当し、SMEE自体はKrFレーザー(248nm)およびi線(200〜400nm)を担当、Aishengnaは浸漬式DUV露光工程(純水の高屈折率を利用して開口数を高め、より微細な回路を焼き付ける技術)を担当する体制です。

生産計画は2026年に約5台、2027年に約20台です。

納入予定先はSMIC、Hua Hong Semiconductor、CXMT(長鑫存儲技術)の3社です。

部品の大半は国産化されているが、一部の重要部品は依然として日本からの輸入に依存しており、国内サプライヤーの納期遅延が2026年の生産台数を圧迫しています。

浸漬式DUV+マルチパターニング技術を組み合わせれば7nmクラスのチップ製造まで到達可能(SMICが現在EUVなしで採用している手法と同じ)だが、マルチパターニングは工程が増える分コストと歩留まりの悪化を伴います。

調査会社AI Futures Project(2026年6月発表)は、ASMLが浸漬式露光装置市場で約98.7%のシェアを握っているとし、中国の浸漬式DUVが商業規模に達するのは2030年代半ば以降になると予測しています。

発表当日(7月28日)、ASML株が一時8%超下落。部品サプライヤーのBE Semiconductor(-8.5%)、Soitec(-5%)、Infineon(-3%)も連れ安でする

同日、SamsungとSK Hynixの株価もそれぞれ13%超下落し、両社合計で約2700億ドルの時価総額が消失。CXMTの86億ドル規模の新規株式公開(IPO)によるDRAM供給過剰懸念も重なり、下落を増幅させました。

中国はDUVとは別に、EUV(極端紫外線)露光装置の試作機も保有していると報じられている(Reutersが2025年12月に既報)。中古のASML製装置部品を活用したリバースエンジニアリングによるものとされ、ファーウェイが主導。2028年までの量産チップ生産を目標としています。

中国政府は2026年を「大型ガラス基板量産元年」と位置づけており、BOEなど display 大手が先端パッケージング向けガラスコア基板事業に参入しています。DUV露光装置の国産化とは別軸の取り組みだが、半導体製造装置の対中輸出規制を回避するための多方面での布石という位置づけでWCCFtechは報じています。

中国半導体製造装置:3つの布石比較

項目 浸漬式DUV(Aishengna) EUV試作機 ガラス基板パッケージング
主体 上海Aishengna(国有) ファーウェイ主導 BOEなどdisplay大手
現状 量産開始(2026年5台、2027年20台) 試作機がテスト段階 2026年を「量産元年」と位置づけ、パイロット段階
到達可能ノード マルチパターニングで7nmクラス 目標は先端ノード(未達) ノードとは別軸(後工程・熱設計の高度化)
目標時期 商業規模到達は2030年代半ば以降との予測あり 2028年までのチップ生産が目標 2027〜2028年に量産移行との報道
制約 一部部品を日本に依存、歩留まり課題 中古ASML部品流用、規模はASML級には未達 ガラスの脆さに由来する新たな歩留まり課題

ソース:

  • WCCFtech: https://www.reuters.com/world/china/china-starts-production-home-grown-immersion-duv-chipmaking-tools-source-2026-07-28/

解説

「Aishengna」という無名企業が突如、ASML・Samsung・SK Hynixの株価を吹き飛ばした事実そのものが象徴的。中身より「存在」が市場を動かした典型例だ。

ただし冷静に見れば、これはEUVへの到達ではなくDUV(旧世代技術)の国産化に過ぎない。「最先端に追いついた」のではなく「輸出規制の急所を一つ塞いだ」というのが正確な理解だ。

マルチパターニングでの7nm到達は既にSMICが実証済みの手法であり、目新しさは薄い。今回の本質は「その装置を自前で作れるようになったこと」自体だ。

国有2社のみが株主で情報開示ゼロという体制は、いかにも「国家プロジェクトを一社に集約してブラックボックス化する」中国式のやり方。設立からわずか3年弱でこの存在感は、裏を返せば「隠す必要があるほど本気」の表れとも読めるる

一部部品を依然として日本から輸入している点は見逃せない。国産化と言いつつ完全自給にはまだ距離があり、サプライチェーンの結節点は残っている。

AI Futures Projectの「2030年代半ばまで商業規模に届かない」という予測と、ASML株が8%も吹き飛んだ市場の反応との間には明確な温度差がある。市場は「実力」ではなく「自給自足という物語」に反応した。

SamsungとSK Hynixの下落はDUVのニュース単体というより、CXMTの86億ドルIPOによるDRAM供給過剰懸念との「合わせ技」だ。DUV国産化のニュースがちょうど良いタイミングで火に油を注いだ格好だ。

無名企業が一晩で時価総額2700億ドル分の恐怖を演出できるあたり、半導体業界の株価はもはや「実体」より「気配」で動く相場になっている感がある。

EUV試作機・ガラス基板・DUV量産という3つの布石を同時並行で進めている点が、中国の本気度を示す。1本足打法ではなく「どれか当たればいい」という分散戦略だ。

ASMLの独占が崩れるかどうかより、「崩れるかもしれない」という懸念だけで市場が動く今の状況こそが、規制と自給自足競争の現段階を物語っている。

 

もとはといえば、中国企業にNY株式市場を通じて資金調達を許したのはアメリカなのでアメリカが育てた脅威だが、ここまで来たのは笑えない話だ。

アメリカは制御可能と思っていたようだが、完全に制御不能なように見える。