■事実
WCCFtechが2026年7月25日付で報じたところによると、中国国内でGIGABYTE製RTX5060(Eagle OC SFF 8GB)の販売価格が数日のうちに約16%上昇しました。
価格は約2,650元前後から3,215元(約77,800円、CNY/JPY=24.19換算)へと変動し、上昇幅はドル換算で約75ドルに達しました。
一方、米国市場ではRTX5060は依然として約350ドル前後で販売されており、値上げの影響は現時点で中国市場に集中しています。
NVIDIAは既にボードパートナー各社に対し、メモリキット価格の引き上げを通知していたと報じられています。
台湾メディアCommercial Timesの報道によれば、GDDR6・GDDR7価格の上昇を受けMSIはRTX50シリーズの値上げを既に実施しており、ASUSとGIGABYTEも月内に追随する見通しです。
同報道では、VRAM仕様に応じて値上げ幅は10〜15%とされています。
16GB以上のVRAMを搭載するRTX50シリーズモデルでは、値上げ幅が15〜20%とさらに大きくなっています。
AMDのRadeon RX9000シリーズも、欧州・中国のチャネル価格が過去2週間で10〜18%上昇したと報じられています。
NVIDIAは供給戦略として、GDDR7使用量の少ないRTX5060 8GBおよびRTX5060 Ti 8GBへ生産配分を重点化しているとされています。
一方でRTX5060 Ti 16GBやRTX5070 Ti 16GBなど大容量VRAM搭載モデルは、生産が縮小される見通しとされています。
調査会社TrendForceは、標準DRAM契約価格が2026年第3四半期に前四半期比13〜18%上昇すると予測しています。
NAND型フラッシュの契約価格も同時期に10〜15%上昇すると予測されており、前四半期の約60%上昇からは伸び率が鈍化しています。
TrendForceは、AIデータセンター向け需要が2026年のDRAMウエハ生産能力の約20%を占めると分析しています。
GDDR7の製造には標準DRAM(DDR5等)の約1.7倍のウエハ容量が必要とされ、AI需要による生産能力逼迫の影響を受けやすい構造にあります。
SK hynixのクァク・ノジュンCEOは2026年7月、メモリ不足が2030年代まで続く可能性があるとBloombergに対して述べたと報じられています。
比較表
| モデル | VRAM構成 | 直近の値上げ幅(報道ベース) | NVIDIAの生産方針 |
|---|---|---|---|
| RTX5060 | GDDR7 8GB | 中国で短期間に約16%上昇(例:GIGABYTE Eagle OC SFF) | 生産重点化(供給優先) |
| RTX5060 Ti(8GB版) | GDDR7 8GB | 10〜15%(台湾筋) | 生産重点化 |
| RTX5060 Ti(16GB版) | GDDR7 16GB | 15〜20% | 生産縮小方針 |
| RTX5070 Ti | GDDR7 16GB | 15〜20% | 生産縮小方針 |
| AMD RX9000シリーズ | GDDR6 | 欧州・中国で10〜18%上昇 | ― |
主要ソースURL
- https://wccftech.com/nvidia-rtx-5060-spikes-75-overnight-in-china-as-memory-kit-hike-ripples-across-the-entire-gpu-market/
解説
今回値上がりしたのはハイエンドではなく「エントリー〜ミドル帯の代表格」であるRTX5060。これまで「メモリ危機はハイエンドカードの話」と思っていた層にも直撃し始めた点が重要だ。
NVIDIAが8GBモデルへ生産を寄せる判断は、GDDR7消費量を抑える合理的な戦略ではあるが、消費者側から見れば「値段は上がるのにVRAMは増えない(むしろ大容量モデルは減る)」という二重の割高感につながる。
「メモリ不足でVRAMを増やせないから、逆に減らして数を確保する」という今回の構図は、AI優先の生産配分がしわ寄せとして消費者に及んでいる典型例だ。
AMDのRX9000シリーズも同時期に値上げされていることから、これは特定ベンダーの経営判断ではなく、業界全体を覆う構造問題であることが分かる。
TrendForceの「13〜18%」という数字は前四半期比では「鈍化」とされているが、それでも四半期ごとに二桁の値上げが続く状況は、消費者感覚では十分に異常事態だ。
SK hynixのCEOが「2030年代まで続く可能性」と発言した時点で、これはもう一時的な品薄ではなく、新しい価格水準がそのまま定着すると考えた方が現実的だ。
GDDR7が標準DRAMの1.7倍のウエハを食うという構造は、GPUメモリが今後もAI優先のあおりを受け続けることを示している。
「そのうち値下がりするだろう」と待ち続けていた人は、そろそろ気持ちを切り替えるタイミングかもしれない。
「安くなるのを待つ」から「値上がりする前に手を打つ」へ。GPU選びの前提そのものが変わりつつある時代だ。