■事実
AMDは2026年7月22〜24日、サンフランシスコで開催した「Advancing AI 2026」で、2030年までのCPU・GPUロードマップを公式発表しました。(https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1294/aai-2026-amd-delivers-full-stack-compute-for-the-agentic-ai-era)
Zen 7アーキテクチャベースの第7世代EPYC「Florence」(および派生の「Ferrara」「Fidenza」)が2028年投入予定と公式に確認しました。
Zen 8アーキテクチャベースの第8世代EPYC「Ravenna」が2030年投入予定と、今回のイベントで初めて公式に名称・世代が明かされました。
GPU側では、CDNA 6アーキテクチャの「Instinct MI500」シリーズが2027年、後継の「Instinct MI600」シリーズ(アーキテクチャ名「CDNA Next」)が2028年に投入予定と公式発表しています。
次世代ラックスケールソリューションとして、MI500世代を搭載する「Helios 500」(EPYC「Verano」CPU、Pensando「Como」「Monza」ネットワーキング)と、MI600世代を搭載する「Helios 600」(EPYC「Ferrara」CPU、Pensando「Palma」「Levanzo」ネットワーキング)を予告しています。
CEOのLisa Su氏は基調講演で「GPU性能を4年間で2000倍に高める」という目標を発言したと複数メディアが報道しています。(ServeTheHome、Investing.com経由の基調講演レポートより)
この「性能倍率」の主張には変遷がある。2026年1月のCES発表時点でAMDは公式プレスリリースにて「Instinct MI500シリーズは、2023年発売のInstinct MI300Xと比較して最大1000倍のAI性能向上」と明記していました。(https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1272/amd-and-its-partners-share-their-vision-for-ai-everywhere-for-everyone-at-ces-2026)
7月の基調講演で語られた「2000倍」は、より先の世代(MI600、2028年)を基準にした数字とみられ、比較対象世代が1世代先に伸びたことで主張倍率も引き上げられた形です。
AMDは同時に、ROCmソフトウェアのリリースサイクルを「4ヶ月に1回」から「6週間に1回」へ短縮したことも発表しています。
ROCm 7.0世代のソフトウェアスタックにより、DeepSeekモデルで3.3倍、学習で平均2.4倍の高速化を実現したと説明しています。(Investing.com経由の基調講演レポートより)
サーバーCPU(EPYC)については、6th Gen EPYC「Venice」が2026年第4四半期出荷、大容量キャッシュ版「Venice-X」(L3キャッシュ最大1152MB)が2027年投入予定であることも改めて確認しています。
AMD CPU/GPUロードマップ(2026年7月時点、公式発表ベース)
| 区分 | 世代 | コード名 | アーキテクチャ | 投入時期 |
|---|---|---|---|---|
| サーバーCPU | 第6世代EPYC | Venice | Zen 6 | 2026年Q4 |
| サーバーCPU | 第6世代EPYC(大容量キャッシュ版) | Venice-X | Zen 6 | 2027年 |
| サーバーCPU | 第7世代EPYC | Florence/Ferrara/Fidenza | Zen 7 | 2028年 |
| サーバーCPU | 第8世代EPYC | Ravenna | Zen 8 | 2030年 |
| データセンターGPU | Instinctシリーズ | MI400(MI455X等) | CDNA 5 | 2026年 |
| データセンターGPU | Instinctシリーズ | MI500 | CDNA 6 | 2027年 |
| データセンターGPU | Instinctシリーズ | MI600 | CDNA Next | 2028年 |
| ラックスケール | Helios(現行) | Helios | MI455X+Venice | 2026年 |
| ラックスケール | Helios 500 | – | MI500+Verano | 2027年 |
| ラックスケール | Helios 600 | – | MI600+Ferrara | 2028年 |
一次ソース:
- https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1294/aai-2026-amd-delivers-full-stack-compute-for-the-agentic-ai-era(AMD公式:Advancing AI 2026プレスリリース、Zen7/Zen8ロードマップ)
- https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1272/amd-and-its-partners-share-their-vision-for-ai-everywhere-for-everyone-at-ces-2026(AMD公式:CES2026プレスリリース、当初の「1000倍」表明)
解説
「Zen 8を初めて公式確認」という見出しの通り、今回の最大の驚きはZen 7の1世代先、Zen 8とそのコード名「Ravenna」(2030年)まで公式に言及した点。通常ここまで先の世代を名指しで語ることは珍しく、AMDが投資家・顧客双方に対して「長期的な供給の予見可能性」をアピールする狙いが強く出ている。
「GPU性能2000倍」という数字は景気の良いキャッチコピーとして機能しているが、内実を見ると要注意。今年1月のCES時点で公式発表されていた「1000倍」(MI500・2027年基準)が、7月の講演では「2000倍」(おそらくMI600・2028年基準)に変わっており、単純に評価対象の世代が1つ先に伸びただけで数字だけが倍増しているように見える。この手の「◯倍」訴求は、比較対象の条件(何世代分か、どのワークロードか)を精査しないと実態を見誤りやすい。
実際、AMD自身も比較条件の詳細(何GPU構成同士の比較か等)を明確に開示しておらず、第三者からは「システム全体としての理論値であり、単一チップの実効性能ではない」との指摘も出ている。
とはいえ、Zen7/Zen8・MI500/MI600という複数世代先までのロードマップを一度に開示する姿勢自体は、NVIDIAとの技術力競争において「うちは行き当たりばったりではない」というメッセージを投資家に送る効果があり、株価対策としても機能している。
ROCmのリリースサイクルを4ヶ月から6週間に短縮したという地味な発表は、実は今回のロードマップ全体の中でもエンジニア視点では最も実利的なニュースかもしれない。ハードウェアの倍率競争よりも、ソフトウェア対応の速さがNVIDIAのCUDAエコシステムとの実質的な競争力を左右する場面は多い。
「2000倍」と言われてもピンと来ないが、要するに「4年で自転車がロケットになる」くらいの話をハードウェアの世界でやろうとしている、ということらしい。
ロードマップは所詮ロードマップ。2027年のMI500、2028年のMI600が本当にその数字通りに出荷されるかどうかは、あと1〜2年待たないと分からない。