※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。
■事実
Lenovoが中国国内でThinkCentre X Towerのデュアルグラフィックス構成の販売を開始しました。
構成はIntel Core Ultra 7 270K Plus、GeForce RTX 5060 Ti 16GBを2枚、DDR5メモリ64GB、1TB SSDです。
公式ストア価格は35,999元、税抜きの海外換算で約5,300ドルです。
現時点では中国のJD.com(京東)経由でのみ販売、Core Ultra 7 270K Plus搭載のこの構成について国際展開・価格は未発表です。
ThinkCentre X Tower自体は2026年1月のCES 2026で発表されていたが、当時デュアルGPU構成の地域別価格は未確定だった。
CES発表時点でのベース構成は1,500ドルから、2026年3月より発売開始とされていた。
ThinkCentre X Towerは34Lシャーシで、上位構成ではIntel Core Ultra 9、最大4枚×64GBのDDR5-6400メモリに対応しています。
グラフィックスの選択肢はRTX 5080 24GB、RTX 5090 32GB、RTX PRO 5000 Blackwell、そして今回のデュアルRTX 5060 Ti 16GBが用意されています。
Lenovoはこのデュアル構成を「ゲーミング向け」としては訴求しておらず、公式ドキュメントではAI支援レンダリング、動画編集、3D制作、ローカルAIモデル処理を主用途に挙げています。
RTX 5060 Ti 16GBはGDDR7を採用したBlackwell世代のミドルレンジGPUで、単体では448GB/sのメモリ帯域を持つ。
各GPUは独立した16GB VRAMプールを持ち、2枚合わせて32GBになるが、単一の統合フレームバッファではない。
アプリケーション側でワークロードをGPU間に分散させるか、GPU間でデータを転送する必要があります。(ゲーム用途のような自動的な性能スケーリングは提供されない)
Lenovoの説明ではこの構成は約2010年前後に主流だった「SLI的」なマルチGPUアプローチの再来と位置付けられています。
大容量コンテキストでのローカルLLM実行が主眼で、単一カードでは収まりきらないコンテキスト長を扱える点をメリットとして強調しています。
CES発表時の情報では、Lenovoの「AI Fusion」機能により最大700億パラメータ規模のモデルのローカルなポストトレーニング・ファインチューニングに対応するとされていました。
構成比較表
| 項目 | 今回のデュアル構成 | ThinkCentre X Tower上位構成例 |
|---|---|---|
| CPU | Intel Core Ultra 7 270K Plus | Intel Core Ultra 9 |
| GPU | RTX 5060 Ti 16GB ×2 | RTX 5090 32GB(単体) |
| 合計VRAM | 32GB(16GB×2、非統合) | 32GB(単一フレームバッファ) |
| メモリ帯域(GPU単体) | 448GB/s | 約1,800GB/s級 |
| システムメモリ | DDR5 64GB | 最大DDR5-6400 ×4(256GB) |
| ストレージ | 1TB SSD | 最大2TB M.2 PCIe ×3 |
| 想定価格 | 約5,300ドル(中国税抜き) | 非公開(構成依存) |
| 訴求ポイント | VRAM容量・並列タスク分散 | 単体性能・統合フレームバッファ |
解説
■解説(追記後・全体)
個人的に興味深いのは、Lenovoが業務用のRTX PRO系ではなく、あえて民生用GeForceを2枚積むという選択をした点だ。
NVLinkのようなGPU間の高速相互接続がないRTX 5060 Tiでは、32GBは「合計値」であって「使える連続VRAM」ではないことに注意が必要だ。
つまりこの機体を買っても、70Bクラスの巨大な単一モデルをそのまま1枚のVRAM感覚でロードできるわけではなく、ソフト側の対応(モデル並列やパイプライン分割)が前提になる。
それでも「16GB×2」という構成は、コミュニティのローカルLLM勢が以前からRTX 5060 Ti複数枚構成で実践してきたやり方であり、Lenovoはいわば自作勢の知見を製品化した格好だ。
単体GPUとしてのRTX 5060 Ti 16GBはミドルレンジ(実勢500ドル台)であり、2枚積んでも数字上のGPU代はそこまで高額にならないはずだが、完成品として5,300ドルという価格はシステム全体のプレミアムをかなり乗せている印象だ。
同じX Towerのラインナップに単体RTX 5090 32GB構成もあることを踏まえると、「統合された32GB」と「分割された32GB×2」のどちらを選ぶかはユーザーの用途次第という提案になっている。
ゲーミング用途を明確に切り捨てて「AIワークステーション」と言い切っているあたり、Lenovoも今のGPU市場でどちらの顔で売るべきかを迷わず決めてきた印象だ・
ゲーム用のGPUを2台積んでワークステーション$5300とは恐れ入る錬金術だ。安価なRTX5060TiもAIの魔術にかかると非常に高級な製品に生まれ変わるということなのだろう。
ただしこの構成、実は選択の余地がなかった可能性が高い。2026年1月に投入されたRTX 5090D(輸出規制対応版)は5月にNVIDIA自らが出荷停止、後継のRTX 5090D V2も同5月に中国税関が輸入許可自体を拒否している。
米国側の輸出規制の閾値(メモリ帯域・AI性能)をどう削っても中国税関を通らない状況で、現在の中国市場におけるNVIDIAゲーミングGPUの事実上の天井はRTX 5080だ。
つまりRTX 5090単体32GB構成は中国国内では合法的に調達できず、RTX 5060 Ti(規制閾値を下回るミドルレンジ)を2枚束ねることで32GBという数字だけは確保する、という組み方にならざるを得なかった側面がある。
「足元を見た製品」というより、輸出規制の網をかいくぐるために編み出された苦肉の策と見るほうが実情に近いかもしれない。