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AIがメモリを食い尽くす2026年 ─ DRAM/NAND高騰はなぜ「一時的」で終わらないのか

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■事実

TrendForceが2026年7月3日に発表した最新調査によると、2026年第3四半期(3Q26)の通常DRAM契約価格は前期比13〜18%上昇、NAND型フラッシュ契約価格は前期比10〜15%上昇の見通しです。

これは2Q26(DRAM前期比58〜63%、NAND前期比70〜75%)や1Q26(DRAM前期比約93〜98%、NAND前期比33〜38%)と比べると大幅な伸び率の鈍化。ただし上昇基調そのものは継続しています。

TrendForceはこの鈍化について、供給が改善したためではなく、PC・スマートフォンなど消費者向け市場が「価格許容の限界」に達したことによる需要側の要因と説明しています。

サーバー向けDRAM需要は引き続き旺盛。AI推論用途の汎用サーバーおよび高容量RDIMMへの需要が価格を下支えしています。

PC向けDRAMはOEMの在庫補充需要がある一方、サーバー向けへの生産能力振替が進み、PC向け供給は縮小傾向にあります。

米UBSは2026年7月時点でDRAM価格予測を上方修正し、3Q26に前期比32%、4Q26に18%の上昇を予測です(従来予測の17%・12%からほぼ倍増)。NANDについても3Q26に30%、4Q26に12%の上昇を見込みます。

米Jefferiesはさらに強気な見立てで、3Q26にDRAM・NANDともに前期比40〜50%、4Q26にさらに30〜40%の上昇があるとし、2028年まで価格是正は見込めないとしています。

Gartnerは2026年通年でDRAM価格が約80%、NAND価格が約202%上昇する「メムフレーション(memflation)」を予測。DRAM・SSD合算では130%の価格上昇によりPC平均価格が17%上昇し、世界のPC出荷台数は10.4%減少(過去10年で最大の落ち込み)すると試算しています。

価格高騰の構造的な要因は、AIデータセンター向け高帯域幅メモリ(HBM)へ生産能力(ウェハ)が振り向けられていること。HBMは通常のDRAMと比べて1ギガバイトあたり約3〜4倍のウェハ面積を消費するため、HBM生産に割かれるウェハ1枚ごとにコンシューマー向けDRAMの供給が圧迫される構図になっています。

米調査会社の推計では、AI・エンタープライズ向け需要が世界のDRAM生産量全体の60〜70%を占めるまでに拡大しているとされています。

消費者向け実勢価格として、DDR5 32GB(6000MHz CL30)キットは2025年半ばに約80〜120ドルだったが、2026年6月には370ドル台まで上昇しています。(3〜4倍以上)

GamersNexusが集計したDDR5 16Gbのスポット価格は、2025年8月から2026年3月までの半年強で6〜6.7倍に上昇しています。。NAND(512Gb TLC)のスポット価格も同期間で最大8.57倍に達しました。

Intelは快科技の報道どおり、DRAM・NAND価格上昇を理由にCore Ultra 200S Plusシリーズなど複数のCPU公式価格を引き上げ済みです。

Microsoftはメモリ調達コストが2025年末比で約2.5倍になったと説明しており、Xbox Series S/Xの価格を2026年8月から最低100ドル引き上げる予定です。

Apple・Sony・Valve・MSIなど各社もメモリ高騰を受けた値上げを表明しています。(詳細は下表)

供給側の動きとして、中国CXMTがDDR5量産を拡大しており、快科技記事にあるとおりMSIが中国向けAM5マザーボードでCXMT製DDR5-8200対応を解禁。米国政府も2026年にCXMT・YMTCへの一部輸出規制を緩和する動きがありました。

ただしCXMTの生産能力は依然としてSamsung・SK hynix・Micronの3社に比べて小さく、2026年末時点でも世界シェアは1桁台にとどまる見通しで、短期的な価格下落要因にはなりにくくなっています。

新規メモリ工場は着工から量産まで通常2〜3年を要するため、業界では価格是正の開始時期を早くて2027年後半、本格的な安定化は2028年以降と見る向きが多いです。

参考:主要調査機関の価格見通し比較

主要調査機関の価格見通し比較

調査機関 DRAM見通し NAND見通し 対象期間
TrendForce 前期比+13〜18% 前期比+10〜15% 2026年第3四半期(3Q26)
UBS 前期比+32%(4Qは+18%) 前期比+30%(4Qは+12%) 2026年3Q・4Q
Jefferies 前期比+40〜50%(4Qはさらに+30〜40%) 前期比+40〜50%(4Qはさらに+30〜40%) 2026年3Q・4Q
Gartner 年間+約80% 年間+約202% 2026年通年(メムフレーション)

※各社で算出方法・対象範囲(製品カテゴリ/期間区分)が異なるため単純比較はできない点に注意。

各社の値上げ発表まとめ

企業 対象製品 値上げ内容
Intel Core Ultra 200S Plus 等CPU 公式希望小売価格を引き上げ
Microsoft Xbox Series S/X 2026年8月から最低100ドル値上げ
Apple MacBook Neo 等 599→699ドルなど全製品ラインで値上げ
Sony PlayStation 5 Pro(2TB) 899ドルに値上げ
Valve Steam Machine 発売価格1,049ドル(当初想定より約300ドル高)
MSI 全製品ライン 2026年内に15〜30%の値上げを表明

DRAM/NAND契約価格 前期比上昇率の推移

 

解説

今回の値上がりは過去のいわゆる「メモリサイクル」的な一時的需給逼迫ではなく、AIデータセンター向けHBM生産へウェハが恒常的に振り向けられているという構造変化。新工場が数量を追加すれば元に戻る、という単純な話ではない点は強調しておきたい。

TrendForceの数字だけ見ると3Q26は「減速」に見えるが、これは供給が改善したからではなく、消費者側がもう価格を受け入れられなくなってきたという需要側の限界にすぎない。実際Gartnerは2026年通年でDRAM+80%・NAND+202%という強烈な数字を出している。

UBSとJefferiesの予測差(32% vs 40〜50%)を見ると、専門家の間でもどこまで上がるかについて見立てが割れており、「これが天井」と言い切れる材料は現状ない。

Xbox・PS5・Steam Machineが軒並み値上げというのは象徴的で、ついにゲーム機本体の価格までもが「メモリ相場」に直接左右される時代に入った、ということだ。

CXMTなど中国勢の台頭は供給の多様化という意味では歓迎すべき動きだが、現時点でのシェアはまだ一桁台にとどまり、短期的な価格緩和の決め手にはならない。Samsung・SK hynix・Micronの寡占状態が崩れるのはもう少し先の話だ。

新規メモリ工場は着工から量産まで2〜3年かかるため、今から設備投資を積んでも効果が出るのは2028年前後。「今すぐ値下がりする」シナリオは業界構造上ほぼあり得ない。

DDR5 32GBキットが80ドルから370ドル超になった、と聞くと、もうメモリを買っているのか金塊を買っているのか分からなくなってくる。

自作PCを組む予定がある人は、「値下がりを待つ」より「今の価格を受け入れて動く」方が現実的なフェーズに入っているかもしれない。