■事実
Xbox CEOのアーシャ・シャーマ氏が2026年7月6日、社内向けメモで大規模リストラを発表。「Xbox史上最大の組織再編」と位置づけています。
削減規模はXbox部門全体で約3,200人、部門全体の約20%に相当です。
うち約1,600人は発表当日(7月6日)に即時削減、残り約1,600人は2026年7月〜2027年6月の会計年度(FY27)を通じて段階的に実施されます。
対象範囲はActivision、Bethesda/ZeniMax、Blizzard、King、Mojang、Xbox Game Studiosなど、規模の差はあれど部門全体に及びます。
既存の発表済み(パブリックにアナウンス済み)の第一者タイトル・プロジェクトについては、今回の削減で中止されるものはないとシャーマ氏は明言しました。
傘下スタジオのうちCompulsion Games(『South of Midnight』開発)とDouble Fine Productions(『Psychonauts』『Keeper』開発)は、経営陣のもとへ戻り独立スタジオとして再出発。保有IP・既存作品カタログは維持し、新作開発のための運転資金も付与されます。
Ninja Theory(『Hellblade』シリーズ)とUndead Labs(『State of Decay』シリーズ)は、新たな所有者のもとに移行する契約を締結しました。『Senua』『State of Decay 3』を完成・成長させるための資金も含まれるとされます。
フランス・リヨン拠点のArkane Studios(Arkane Lyon)は、フランスの労働法制に基づき労使協議会との協議プロセスに入っており、売却・独立・存続を含む「戦略的選択肢」を検討中。他4スタジオと異なり結論は出ていません。
Arkane Lyonが開発中の『Marvel’s Blade』は、開発が延期され予算超過に陥っていると報じられており、スタジオの処遇に影響したとみられます。
Arkane Austin(旧テキサス拠点)は既に2024年の削減で閉鎖済みです。
シャーマ氏のメモによれば、Xboxは投資した1ドルにつき平均64セントを失う状態が続いていたと説明します。
現行の粗利率は同業の他社プラットフォーム・パブリッシング事業と比べ3〜10倍低い水準にあるとされます。
一部部門ではマネジメント階層が最大14層に達しており、これを最大5層、可能な場所では3層まで削減する方針です。
Mojang(『Minecraft』開発)およびKing(『Candy Crush』開発)の経営陣は、今後シャーマ氏に直接報告する体制に変更しました。
Helen Chiang氏(元Mojang責任者)がXbox初のCOO(最高執行責任者)に就任。コンテンツ・ハードウェア・プラットフォーム・サービス全体の損益責任を担います。
従来のCOOだったDave McCarthy氏は退任(17年間の在籍)します。
同日、親会社Microsoft全体でも約4,800人の人員削減を発表しており、Xboxの削減はその一部として含まれます。
今回の削減は、2025年7月に実施された前回の大規模削減(Microsoft全体で約9,100人、Xbox内ではThe Initiative閉鎖、『Perfect Dark』リブート中止、『Everwild』中止などを伴う)からほぼ1年後のタイミングとなります。
直近の四半期決算では、Xboxのゲーミング部門売上は前年比7%減、うちXboxハードウェア売上は33%減、コンテンツ・サービス売上は5%減と報告されています。
解説
今回最大のポイントは「スタジオを潰す」のではなく「スタジオを手放す」形を選んだこと。Compulsion・Double Fineが独立、Ninja Theory・Undead Labsが新オーナーの下で存続、という着地は、事前に流れていた「即時閉鎖」という最悪シナリオよりはマシな結果と言える。
とはいえ、3,200人・約20%というのは業界内でも過去最大級の規模で、「マシな着地」という評価自体、期待値がいかに下がっていたかを物語っている。
「投資1ドルにつき64セントの損失」という数字を自ら公表した点は珍しく踏み込んだ表現。Game Pass中心の多角化戦略が数字として結実しなかったことを、経営トップ自らが認めた形だ。
スタジオを積極的に買収して「所有」する戦略から、「全ての優良インディースタジオを自社で抱える必要はない」という方向転換は、ここ数年のXboxの拡大路線からの明確な軌道修正だ。
Arkane Lyonだけが宙に浮いた状態になっているのは、フランスの労働法制(労使協議が必須)による手続き上の違いであって、経営判断としての優先順位の差ではない点は誤解されやすいので注意が必要だ。
『Marvel’s Blade』の開発遅延・予算超過がArkane Lyonの処遇に直結したとみられる構図は、個別タイトルの采配ミスがスタジオ全体の運命を左右してしまう典型例だ。
Mojang・Kingが直接シャーマ氏の傘下に入ったのは、月間アクティブユーザー数で稼ぐ「プラットフォーム化」した事業を、他のコンテンツ制作スタジオ群と切り離して管理する意図が透けて見える。
マネジメント階層14層から3層へというのは、もはや伝言ゲームの参加人数を減らす話に近く、組織図を見ただけで疲れが出そうな数字だ。
ハードウェア売上33%減という数字は、単なる経営判断だけでなく、部品価格高騰(いわゆる半導体・メモリ不足)による消費者の買い控えという外部要因も重なっている点は見逃せない。
昨年の削減からちょうど1年というタイミングの一致は偶然ではなく、Microsoftの会計年度末(6月)に合わせて人員調整を行う慣行が定着しつつあることを示している。
「発表済みタイトルは中止しない」という約束は今回守られているが、”発表済み”という言葉が今後どこまで盾になるかは、正直まだ何とも言えない。