自作PCユーザーがゲーム用PCの解説をします

自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド

TSMC一強に陰り? Intelの巻き返しで「米国製半導体は米国内製造」が定着する可能性

投稿日:

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんのでご注意ください。

■事実

TSMCは10年以上にわたり半導体受託製造(ファウンドリ)で製造能力・先端プロセスの両面でIntelを圧倒し、米国企業設計のスマートフォン・PC・AIチップの製造の大半を担ってきました。

Appleを筆頭に、NVIDIAなど主要ファブレス企業もTSMCの先端プロセスに生産を集中させてきました。

Intelの最先端プロセス「18A」は2025年3月に初期生産を開始したが、当初は歩留まりが著しく低迷しています。2025年夏時点では約10%にとどまり、CFOも改善の必要性を認めていました。

その後歩留まりは着実に改善し、2026年前半時点でIntel 18Aは50〜60%台に到達しています。(KeyBanc Capital Marketsなど複数の分析による)

SamsungのSF2(2nm、最終製品ベースで約40%、プロセス単体で約55%)は上回る水準まで来ているが、TSMC N2の歩留まり(約65%、量産時には75%近くまで高まる見込み)にはなお届いていません。

2026年に入り、Intelは改良版プロセス「18A-P」をVLSI Symposium 2026で発表しました。同じ性能なら消費電力を18%以上削減、同じ消費電力なら性能を9%以上向上させるとしていました。

18A-Pは業界初となるデュアルコンタクト構造「Power Boost」を採用し、既存の設計ルールを変えずに性能を引き上げられる点が特徴です。

次世代プロセス「14A」は2028年にリスク生産を予定しています。

Intelは裏面電源供給技術「PowerVia」を18Aで先行導入済み。TSMCが同種の技術を導入するのは2026年後半の「N2P」からとなる見通し

Intelは先端パッケージング技術「EMIB」でも歩留まり90〜95%という高水準を達成。AI需要急増でTSMCの「CoWoS」パッケージングが深刻な供給不足に陥る中、これを突破口とした顧客獲得戦略も進めています。

2026年に入り、AppleがIntel Foundry Services(IFS)向けに、Mac・iPadのエントリーモデル向けチップの一部を「18A-P」プロセス・Foverosパッケージングで生産する契約を締結したと報じられました。

ただし対象はローエンド・レガシー向けチップに限られ、最先端ノードを使うフラッグシップ向けチップは引き続きTSMCが担う見通し。アナリストのMing-Chi Kuo氏は、Intelの体制が完全に立ち上がってもTSMCは供給シェアの90%超を維持する見込みと分析しています。

Intel Foundry部門は2026年第1四半期時点で24億ドルの営業赤字を計上しています。外部顧客からのファウンドリ売上はわずか1.74億ドルにとどまります(セグメント全体売上54億ドルに対して)。黒字化は2026年末〜2027年になるとの見方が多くなっています。

Google、Microsoftなど大手テック企業もIntelの先端パッケージング技術を検討しているとの報道があります。

SEAJ会長で東京エレクトロン社長の河合利樹氏は、台湾以外の地域でも2nm投資が始まっていると指摘しており、製造拠点の分散化が進んでいます。

トランプ政権は半導体の「米国内製造」を推進する方針を掲げており、Intel 18A・14Aは研究開発からウェハ製造・アセンブリまで米国内で完結する点で同政権の方針に合致すると位置づけられています。

表:先端プロセス3社比較(2026年前半時点)

項目 Intel 18A / 18A-P TSMC N2 Samsung SF2
歩留まり 約50〜60% 約65%(量産時75%近くまで上昇見込み) 約40〜55%
裏面電源供給技術 PowerVia(量産導入済み) N2Pで2026年後半導入予定 未導入
トランジスタ密度 TSMC N2よりやや低い 業界最高水準
主要顧客・用途 自社Panther Lake、Apple(ローエンド向け一部) Apple、NVIDIA中心のフラッグシップ向け Tesla(AI6チップ)

※複数の業界レポート・アナリスト分析を統合した数値です。

解説

要するに「TSMC一強」だった構図に、Intelという第二の選択肢が本格的に生まれつつあるという話だ。

ただし現時点でIntelが取れているのはローエンド・レガシー向けチップのみで、フラッグシップ向けの主戦場ではまだTSMCの牙城は崩れていない。

個人的には、歩留まりの数字そのものより「AppleがIntelに発注した」という事実の方が象徴的な意味を持つと見ている。

HPC(高性能computing)シナリオではPowerViaの先行導入によって、Intelがエネルギー効率の面で優位に立てる可能性がある点は、地味だが重要な技術的強み。

EMIBパッケージングの高歩留まりは、AI特需によるCoWoS供給不足という「TSMCの弱点」を突く形になっており、Intelにとって現実的な突破口になり得る。

一方でIntel Foundry部門はまだ大幅な赤字を抱えており、「技術的な巻き返し」と「事業として黒字化できるか」はまったく別の問題だ。

歩留まり50%台を「TSMCに勝った」と言うにはまだ気が早いが、去年の10%と比べれば十分「頑張った」と褒めてあげたいレベルだ。

トランプ政権の「米国内製造」方針との親和性は、純粋な技術競争力とは別の軸で、Intelにとって政治的な追い風になっている。

TSMC一強時代が終わるかはまだ分からないが、「TSMC一択」の時代は確実に終わりつつある。

 

一気にこのような強気な話が出てくるのが国策企業(苦笑)の最大の強みだろう。

Intelは同じ米国籍の半導体企業が一度の大きな失敗で会社が傾くリスクを負う中、まったく別の種類の競争をしている。

言ってみれば、みんなが普通のゲームをしている中で、一社だけ秘密コマンドを入力して無敵モードでゲームをしているようなものだ。