■事実
中国のFEVM(奋微)がデスクトップGPU向けの外付けGPUドック「FNGT5 PLUS」を発表しました。VideoCardzが報じています。
オープン型シャーシ(カードが露出する構造)でデスクトップ用ビデオカードを装着する設計です。
ホスト接続はThunderbolt 5(TB5)とOCuLinkの両対応です。
対応GPUはNVIDIA GeForce RTX 3000・4000・5000シリーズです。ただしTGP(Total Graphics Power、カード全体の消費電力上限)500W未満という制限があります。
結果として上位のRTX 5090(公称TGP 575W)は対象外で、RTX 5080以下までが想定範囲です。
上部マウント方式のPCIe x16スロット、3基の8-pin 12V電源コネクタ、U字ブラケットでカードを固定しています。
コントローラはIntel JHL9480です。(コードネームBarlow Ridge、TB5世代)
OCuLink接続はPCIe 4.0 x4で最大64Gbpsです。
OCuLinkコネクタは1000回の挿抜耐性、信号品質維持のためRedriverチップを搭載です。
ダウンストリームポート構成:Thunderbolt 1基、USB-A 2基、RJ45 Ethernet 1基です。
アップストリームのThunderboltからホスト側へ最大100WのPower Delivery供給可能です。
内蔵電源は「LOP(リトルパンサー、コンパクト電源規格)」方式の600W、変換効率最大95%、ピーク出力900Wです。
動作騒音は250W負荷で静音、600W負荷でも40dB以下とFEVM公称しています。
価格は中国本土で1699 RMB(約250ドル)、税抜・地域別調整前。北米・欧州市場への展開はまだ未公表しています。
京東(JD.com)の販売ページでは「双8PIN显卡供电线」(8-pin GPU電源ケーブル2本)が付属版として確認できます。
先行モデルのFNGT5 PROはノートPC向けRTX 4000シリーズ内蔵タイプ(コンパクト・電源なし・$555〜$1367)。FNGT5 PLUSはデスクトップGPU装着型・内蔵電源付きという別ラインです。
競合eGPUドックとの位置づけ
| 製品 | 価格 | 内蔵電源 | TB5 | OCuLink | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| FEVM FNGT5 PLUS | ~$250 | 600W LOP | ○ | ○ | 本記事の主役 |
| Minisforum DEG2 | $239 | なし(ATX/SFX要) | ○ | ○ | M.2スロット内蔵 |
| AOOSTAR EG02 | $219 | なし(ATX/SFX要) | ○ | ○ | コスパ重視 |
| GTBox G-Dock | $249 | 800W | ○ | ○ | 内蔵電源強い |
| Razer Core X V2 | $350 | なし(V1は650W内蔵) | ○ | × | 値上げ+電源後退 |
解説
まず「内蔵600W電源付きでThunderbolt 5・OCuLink両対応のオープン型ドックが約250ドル」というのが現時点でかなりアグレッシブな価格設定だ。Razer Core X V2が350ドルで電源なし・OCuLinkなしに「後退」したのと比べると、中国系メーカーの攻勢が露骨に見える。
TB5とOCuLinkを両方載せた「両対応」モデルは2025年後半から立て続けに出てきていて、FNGT5 PLUSもその流れに乗った形。ホストPC側がTB5搭載ノートPCでもOCuLink搭載Mini PCでも、ドック側を買い替えずに済むのは実用上ありがたい。
ただし、TB5とOCuLinkの「実効性能」は同じではない点に注意。スペック上はTB5が80Gbps、OCuLinkが64Gbpsで一見TB5優位に見えるが、eGPU用途では事情が違う。
TB5の80Gbpsはトンネルの総帯域で、その中でPCIe通信に割り当てられるのはPCIe 4.0 x4(64Gbps)までだ。つまりGPU通信そのものの帯域はOCuLinkとほぼ同じだ。
それに加えてTB5はコントローラ経由でPCIeをルーティングするのでオーバーヘッドが発生する。OCuLinkはダイレクトPCIe接続でレイテンシが低いだ。
実測ベースではTom’s HardwareがRTX 5070 Tiでテストしたところ、TB5はOCuLink比でゲーミング平均最大14%遅い結果。OCuLink推奨と素直に言える。
つまりFNGT5 PLUSの「TB5 + OCuLink両対応」は性能のためというより、ホスト側の柔軟性のための装備。性能を取りに行くならOCuLink側で繋ぐ、というのが現実的な使い方だ。
500W TGP制限でRTX 5090が弾かれた件。元記事の “sorry, no 5090!” は秀逸だが、よく考えるとRTX 5090をeGPUで使う動機がそもそも薄い。母艦PCに直接挿せばPCIe 5.0 x16のフル帯域が使える話で、eGPU化した時点で帯域が1/8に絞られるのは本末転倒だ。
実用面で意味があるのはRTX 5070 Ti〜RTX 5080あたりまでだ。このクラスならeGPUのボトルネックも比較的見えにくく、Mini PCやノートPCのアップグレードパスとして成立する。
内蔵電源の話。LOP(Little Output Powerの略で、コンパクトATX代替の中国系規格)方式で600W、ピーク900W、変換効率95%という数字は額面通りなら立派。ただし600W負荷で40dB以下というのは「うるさい掃除機よりはマシ」レベルで、机上で常用すると静かではない。
ただこの種の数字はメーカー公称値の常で、実機レビューが出るまでは話半分が無難だ。eGPUドック向け電源の80 PLUSプラチナ相当の効率は実際にはAC-DC変換の損失が出やすく、ピーク時の発熱処理が肝になる。
1000回の挿抜耐性は仕様上のOCuLink規格の一般値だ。FEVMが特に長寿命設計をしているわけではないが、明示している点は好印象。日常的に抜き差ししても5年は持つ計算だ。
JHL9480(Barlow Ridge)はIntelの最新TB5コントローラで、これを採用している時点でTB5仕様としては本格派だ。USB4 v2との互換性もあるのでホスト側のTB4機やUSB4機からも繋がる。(ただし帯域は40Gbpsに落ちる)
個人的に気になるのは、京東で確認できる販売ページに「双8PIN显卡供电线」(8-pin GPU電源ケーブル2本)の付属表記があることだ。本体側に3基の12V出力があるのに付属が2本なのは、運用上3本目を別途用意する必要があるかもしれない。
このセグメント(中国系eGPUドック)は半年単位で新製品が出ていて、TB5+OCuLink+内蔵電源の組み合わせはもはや「標準仕様」になりつつある。RazerやSonnetといった老舗が完全に遅れを取っている状況で、ジャンルの主導権が中国系に移ったことを象徴する1機種だ。
Razer Core X V2が「値上げして電源を抜く」進化を遂げる横で、中国メーカーが「価格据え置きで電源強化」を出してくる構図はもはやコントだ。
eGPUの裾野は確実に広がっている。あとは「そもそも何のためにeGPU化するのか」を、買う前に冷静に考えるだけだ。