■事実
生産台数と公式ガイダンスのギャップ
Bloombergが報じたところによると、任天堂はSwitch 2のサプライヤーへの生産割り当てをFY2027(2026年4月〜2027年3月)で2,000万台に設定しています。
これは5月8日の決算発表で示した公式ガイダンス1,650万台より約21%高い水準です。
ただしこの生産計画は未確定であり、需要動向次第で変更の可能性があるとBloombergの情報源は述べています。
FY26(2025年6月〜2026年3月)の実績は1,986万台。当初の社内目標1,500万台を大幅超過し、その後1,900万台に上方修正したにもかかわらずさらに上回りました。
任天堂の「保守的ガイダンス」の歴史的パターン
業界アナリストのSerkan Toto氏(Kantan Games CEO)はBloombergに対し「数字を低く抑えてから後で上回っても任天堂に不利益はない。直前の会計年度がその好例だ」と発言しています。
同氏のFY2027予測は1,800万台で、実際にはそれを上回る可能性があると述べています。
任天堂の古川俊太郎社長は決算会見でSwitch 2の初年度を「我々の期待を大幅に超えた」と評し、過去のハードと比べて最速の立ち上がりだったと強調しています。
値上げの内容と理由
- 米国:$449.99 → $499.99(9月1日より)
- 欧州:€469.99 → €499.99(9月1日より)
- 日本:¥49,980 → ¥59,980(5月25日より)
- カナダ:CAD$629.99 → CAD$679.99(9月1日より)
日本ではSwitch 2だけでなくSwitch OLED・Switch Lite・無印Switchも一斉値上げ(各約1万円増)しています。
任天堂は値上げ理由として「市場環境の変化と世界全体のビジネス見通しを考慮した」と説明しています。
具体的な要因はメモリ価格の高騰(AIデータセンター需要が逼迫させている)と米国関税の影響。FY2027の追加コスト影響は約1,000億円と試算しています。
Q1 2026にDRAM価格は前四半期比で倍増し、TrendForceは当四半期にさらに63%上昇すると予測しています。
FY26・FY27の業績概要
- FY26純売上高:2兆3,130億円(前年比+98.6%)
- FY26営業利益:3,601億円(+27.5%)、ただし営業利益率は15.6%で10年以上ぶりの低水準
- FY27ガイダンス:純売上高2兆500億円(-11.4%)、純利益3,100億円(-26%)——アナリストコンセンサスを大幅に下回り、決算発表時に株価が8〜12%下落
FY27でのSwitch 2ソフト販売目標は6,000万本(FY264,871万本から増加)
FY26の主要タイトル販売実績
- マリオカートワールド:1,470万本(バンドル含む)
- ドンキーコングバナンザ:452万本
- ポケモンレジェンズZ-A Switch 2版:394万本
- トモダチコレクション わくわく生活(Tomodachi Life: Living the Dream):390万本以上(発売2週間)
FY2027の公表済みソフトラインナップ
| 発売時期 | タイトル |
|---|---|
| 2026年6月3日 | ファイナルファンタジーVII リバース |
| 2026年6月18日 | The Adventures of Elliot: The Millennium Tales |
| 2026年6月25日 | スターフォックス |
| 2026年7月23日 | スプラトゥーン レイダーズ |
| 2026年内 未定 | エルデンリング:ターニッシュドエディション |
| 2026年内 未定 | The Duskbloods |
| 2026年内 未定 | ファイアーエムブレム フォーチュンズウィーブ |
| 2026年内 未定 | 007 ファースト ライト |
| 2027年 未定 | ポケモン ウィンズ&ポケモン ウェーブス |
未発表タイトルも複数存在すると古川社長が決算会見でコメントしています。
噂レベルでは「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の高予算リメイクが言及されている。同作はMetacriticで平均スコア99点を記録する史上最高評価のゲームのひとつです。
解説
Nintendoの「ローボール戦略」は計算済みである
1,650万台のガイダンスと2,000万台の生産割り当てが同時に存在する状況は矛盾ではなく、任天堂の定番の情報管理戦術。「予測を外す」リスクより「予測を超える」喜びの方が株式市場と消費者に与える影響が良い。
FY26で1,500万台→1,900万台→1,986万台という軌跡を見れば、今回のFY27 1,650万台ガイダンスが実態を反映している可能性は低い。2,000万台に近い数字になると見るのが自然だ。
$499という価格帯について
Switch 2が$500に達したことで、歴史上初めてNintendoのゲーム機がPS5・Xbox Series Xと同じ価格帯に並んだ。任天堂が「手頃なファミリー向けゲーム機」というポジションを事実上手放したことを意味する。
ただしNintendoのハードは他社と競合していない。PS5・Xbox Series Xと並んだとしても、Switch 2を買う理由は「Nintendoのソフトがやりたい」であり、ハード価格は購入判断の決定打にならないケースが多い。
バンドル販売でうまく体感価格を下げることができれば、Toto氏の言う通り「消費者は慣れる」という展開になりうる。
値上げの真犯人はAI
メモリ価格急騰の原因がAIデータセンター需要であるという点は、ゲーム機の価格に直接AIが影響を与えているという珍しい構図。Nintendo・Sony・スマートフォンメーカーが、NVIDIAとAWSとGoogleのDRAM争奪戦の余波を被っている。
この構造は短期で解消しない。SK HynixとMicronは「2027年後半まで供給不足が続く」と予告しており、任天堂の「市場環境の変化は中長期的に続く」という表現はそれを踏まえたものと読める。
ソフトラインナップが防波堤になる
ファイナルファンタジーVII リバース(6月3日)・エルデンリング・ポケモンなど、任天堂ファースト以外の大型タイトルがFY2027に集中しているのは意図的な設計に見える。価格抵抗が高まる局面をソフトの魅力で突破しにいく構成だ。
時のオカリナのリメイク噂は真偽不明だが、仮に本当なら後半の切り札として機能しうる。Metacritic最高評価という肩書きと「世代を超えたIP」としての訴求力は別格だ。
任天堂のビジネスモデルの正しさ
今回の値上げ局面でもNintendoの戦略の正しさが改めて見える。自社IPのソフトをSwitch 2でしか遊べない状態に保つことで、ハードとソフトが一体の「移行コスト」を作っている。$500でも買い替えが起きる構造はここにある。
PCへのファーストパーティIP移植を続けているSonyとは対照的に、任天堂のプラットフォーム囲い込み戦略は長期で機能している。今回の値上げがその戦略の耐久テストになる。
AIがDRAMを買い占めた結果、ゼルダとスプラトゥーンまで値上がりした。シリコンバレーの大型言語モデルがNintendoのガイダンス保守主義に間接的に貢献している、とも言える。
任天堂が「1,650万台」と言うとき、それは目標ではなく床である。歴史がそれを証明し続けている。
ソニーもかつては「ぼくのなつやすみ」などの素晴らしいIPを保有していたが、今では海外IPが最大のキラータイトルになってしまった。
この点は残念でならない。
ぜひともかつてのタイトルを今の技術で復活させてほしいところだ。