■事実
PassMarkにArc G3 ExtremeのCPUスコアが出現
PassMarkベンチマークデータベースに「Intel Arc G3 Extreme」のエントリが初登場。Q2 2026が初掲載時期として記録されています。
サンプル数は1件のみで、PassMark自身が「Margin for error: High(誤差大)」と注記があり、あくまでリーク段階のデータとして扱う必要があります。
ビデオカードの欄には「Intel Arc B390 GPU」と記載。これはArc G3 ExtremeのiGPU(統合グラフィックス)がArc B390であることを示しています。
テスト環境はMSIマザーボード(MS-1T91)、32GB LPDDR5Xメモリ(8モジュール構成)、Micron 2500 1TB SSD。ストレージはPCIe Gen 4 NVMeです。
CPUスペックと構成
コア数は14コア14スレッド(ハイパースレッディングなし)です。
コア内訳(PassMark表示)はPコア(Panther Coveアーキテクチャ)×2、Eコア(Darkmontアーキテクチャ)×12で、実際の設計は2P+8E+4LP-E(省電力型Eコア)の14コア構成と見られます。
クロックはベース3.69GHz(計測値)、ブースト4.60GHzです。
キャッシュはL3キャッシュ12MB、L2キャッシュ合計18MB(Pコア側2×3072KB、Eコア側3×4096KB)です。
プロセスノードはIntel 18Aです。
CPUベンチマーク結果と比較
PassMark マルチスレッドスコア:29,622点(5,869チップ中555位)
PassMark シングルスレッドスコア:4,288点(同121位)
AMD Ryzen Z2 Extreme(Strix Point、TSMC 4nm、8コア16スレッド)との比較:マルチスレッドで**+25%、シングルスレッドで+8%**上回ります。
Intel Core Ultra 5 338H(Panther Lake、12コア12スレッド、25W TDP)との比較:マルチスレッドはほぼ同等(338H:29,726点 vs Arc G3 Extreme:29,622点)。シングルスレッドはArc G3 Extremeが微差でリード(4,288 vs 4,238)です。
338Hは25W設定での計測が多く、ハンドヘルド向けの15〜30W枠で動作するArc G3 Extremeとは動作環境が異なる点に注意してください。
iGPUスペック:Arc B390(Xe3世代)
IntelのCES 2026発表資料によるとArc B390はAMD Radeon 890Mより実ゲームで73〜82%高速で、ハンドヘルド向けの競合であるArc 140V(Lunar Lake、8 Xe2コア)比でも50%超の性能向上です。
ソース記事(WCCFTech)では「GPU性能はRadeon 890MおよびArc 140Vより50%超の向上」と記載。ただし実測ではなく現時点での推定値です。
Arc G3 Extreme搭載iGPU:Arc B390(Battlemage Xe3、12 Xe3コア、クロック2.3GHz)です。
標準モデルのArc G3にはArc B370(10 Xe3コア、クロック2.2GHz)が搭載予定です。
Arc B390は統合グラフィックス初のAIベース**マルチフレームジェネレーション(MFG)**対応GPUで、IntelはXeSS(Xe Super Sampling)3と組み合わせた最大4倍フレーム生成をサポートすると主張しています。
ハンドヘルド市場とラインナップ・価格
Arc G3シリーズはComputex 2026での正式デビューを予定。OEMパートナーはMSI、Acer、GPD、OneXPlayerが確認されています。
MSI Claw 8 EX AI+(Arc G3 Extreme搭載)の価格がオンライン小売に掲載。欧州向けで**€1,599**(約1,700ドル)という高価格帯です。
AMD Ryzen Z2 Extreme搭載ハンドヘルドの後継モデルは2027年上半期まで登場しない見込みで、Intel Arc G3は当面、競合不在の市場で戦える可能性があります。
比較表①:Arc G3 Extreme vs 競合CPUベンチマーク(PassMark)
| チップ | コア/スレッド | マルチスレッド | シングルスレッド | 初掲載時期 | サンプル数 |
|---|---|---|---|---|---|
| Intel Arc G3 Extreme | 14 / 14 | 29,622 | 4,288 | Q2 2026 | 1(誤差大) |
| AMD Ryzen Z2 Extreme | 8 / 16 | 23,649 | 3,964 | Q3 2025 | 24 |
| Intel Core Ultra 5 338H | 12 / 12 | 29,726 | 4,238 | Q1 2026 | 16 |
比較表②:Intel vs AMD フラッグシップハンドヘルドSoC
| 項目 | Intel Arc G3 Extreme | AMD Ryzen Z2 Extreme |
|---|---|---|
| プロセスノード | Intel 18A | TSMC 4nm |
| CPU構成(最大) | 14コア / 14スレッド | 8コア / 16スレッド |
| 最大ブーストクロック | 4.60 GHz | 5.0 GHz |
| 最大キャッシュ合計 | 30 MB | 24 MB |
| 対応メモリ | LPDDR5X-9600 | LPDDR5X-8000 |
| TDP想定 | 15〜30W(未確定) | 15〜35W |
| iGPUアーキテクチャ | Arc B390(Battlemage Xe3) | Radeon 890M(RDNA 3.5) |
| iGPUコア数 | Xe3 × 12コア | 16 CU |
| フレーム生成 | XeSS 3 MFG対応 | 非対応 |
| デビュー時期 | 2026年中盤(Computex) | 2025年6月 |
解説
【Intel 18AとTSMC N3E——「垂直統合」の実態】
Panther LakeはマルチタイルSoCであり、プロセスノードはタイルごとに異なる。CPUコンピュートタイルはIntel 18A製だが、GPUタイル(Arc B390)はTSMC N3E(3nm)製、I/OタイルはTSMC N6製という構成だ。
つまり「Intel 18Aで製造された垂直統合ならではの製品」という評価はCPUコア部分には当てはまるが、今回の記事で主役となるiGPU(Arc B390)の性能はTSMCのN3Eに支えられている。「未来から持ってきた製品」という印象はある意味演出であり、TSMCなしには成り立たない現実がここにもある。
逆説的だが、Intel 18Aの真価が問われるのはGPU性能ではなくCPUコアの電力効率と性能密度においてであり、iGPUの競争力はTSMCの製造能力に負うところが大きい。「垂直統合の強み」は現時点では完全ではない。
【コストの現実】
ただし、コストが非常に高くついていることはこの価格帯が雄弁に物語っている。CPUタイルにIntel 18A、GPUタイルにTSMC N3Eという異なるプロセスの組み合わせは、製造コストの面で有利に働くわけではない。
AMDもTSMC 2nmを確保できれば、アーキテクチャ的に同程度の製品は作れるだろう。しかしそのコストがどうなるかは推して知るべしで、結局「高価な製品がもう一つ増える」という結末になる可能性が高い。
実際、Arc B390搭載のノートPCもすでに非常に高価な価格帯に位置している。プロセスの先進性が消費者に届くまでには、コストという厚い壁がある。
【購買層と市場ポジション】
Arc G3 ExtremeはStrix Halo(AMD Ryzen AI Max+)と本質的に似たポジションにある。コストとTDPを度外視した技術的な到達点として素晴らしいが、一般のゲーマーが気軽に購入できる製品ではない。どちらも正直に言えばマーケティング上のイメージ製品という側面が強い、
「現実にどのくらいの人が購入できるのか」という問いに対して、€1,599という価格帯は答えを出してしまっている。ミドルレンジのゲーミングPCが買えてしまう価格でハンドヘルドを選ぶ理由を、一般ゲーマーに説明するのは難しい。
Strix Haloも登場時に「革命的なiGPU性能」として注目されたが、高価格帯で大衆には届かなかった。Arc G3 Extremeも同じ轍を踏む可能性が高い。一般のゲーマーにはどちらも気軽に購入できないという点では同じ立ち位置にある。
【CPUベンチマーク・GPU性能の読み方】
「サンプル1件、誤差大」というPassMarkの注記は非常に重要。スコアが今後大きく変動する可能性があり、「Z2 Extremeより25%速い」という数字を確定的に語るのは時期尚早だ。
Core Ultra 5 338H(25W、ノートPC向け)とほぼ同スコアという結果は「順当」ではなく「上出来」として読むべき。低電力枠でノートPC向けチップと肩を並べるのは設計効率の高さを示している。
GPUサイドはCPU以上の逆転劇になる可能性がある。Arc B390のXe3アーキテクチャはXeSS 3 MFG対応という点でAMD Radeon 890M(RDNA 3.5)に対して非対称な優位を持つ。
ただしフレーム生成したフレームにはプレイヤーの入力情報が含まれない。入力応答性はネイティブレンダリングのフレームレートに縛られるため、FPS系タイトルでMFGが無効化されるケースも出てくるはず。
AMD次世代ハンドヘルドがRDNA 4/5ベースで2027年H1まで来ないとすれば、Arc G3はGPU性能面で約1年間、競合不在の市場で戦える可能性がある、
「Intel 18A製のSoC」と聞いて期待すると、iGPUはTSMC N3E製という事実が待っている——Intelの「垂直統合」はまだ道半ばである。
性能は文句なし、でも財布がついてこない——Arc G3 ExtremeもStrix Haloも、一般のゲーマーには縁遠いという点では双子の兄弟のようなものだ。
これは直接G3 Extremeには関係ないが、Intelが業績不振によりNVIDIAに出資されたことによって、ゲーミングGPU事業全体が不透明になってしまっている。
どんなに性能が高くともCore Ultra+Geforceの方が圧倒的に人気、ブランド共に比較にならないほど優れている。
アーキテクチャーもXe4までは確認されているがXe5自体があるのかどうか不明という状況だ。
これが最後の打ち上げ花火ということにならなければよいなと思う。