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ASUS、過去最大規模のPC価格引き上げを準備中 メモリ在庫枯渇がベンダー各社を苦しめる

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■事実

ASUSが台湾市場で最大30%の値上げを予告

ASUSがPC価格を最大30%引き上げる方針を表明したことが、台湾メディアUDNおよびEconomic Daily Newsの報道で明らかになった。

この値上げは2026年第2四半期(4〜6月)の台湾消費者市場を主な対象としたものだが、他地域への波及も懸念されている。

ASUSのシステムビジネス部門ゼネラルマネージャーは、32GBメモリモジュールが昨年は約3,000台湾ドル(約1万4,000円)で取引されていたのに対し、第2四半期には約20,000台湾ドル(約9万3,000円)近くまで跳ね上がる可能性を示唆した。

第1四半期にはすでに前年比で約15%の値上がりが確認されており、今回の追加値上げで累積上昇幅はさらに拡大する。

ASUSは2026年1月5日時点ですでに一部製品の価格を15〜20%引き上げており、今回発表された最大30%という数字はその追加値上げを意味する。

ASUS共同CEOは、2026年のPC出荷台数を前年比約10%増と予測しているものの、第3四半期以降にさらなる値上げが始まれば需要が落ち込み、通年の出荷見通しが不透明になると警告している。

台湾のAcer、MSI、GigabyteなどほかのPC主要メーカーも同様に、二桁パーセント台の値上げを準備していることが報じられている。

MSIはエントリークラスのPC製品ラインアップを約3分の1削減することで、値上げの影響を吸収しようとしている。

ASUSはDRAM・NAND・SSD各価格の上昇と、Intel・AMDによるCPU供給の中高価格帯への集中という複合的な要因がBOM(部品コスト)を急激に押し上げていると説明している。

値上げへの先高懸念からすでに購入を前倒しする「プルイン需要」が台湾市場で発生しており、短期的には出荷数を押し上げる一方、値上げが本格化する第2四半期以降の需要の反動落ちが懸念されている。

ASUS・Acer・Dell・Lenovoなど複数のPC大手は、サーバーODM(受託製造)事業への多角化によってAI需要を取り込む動きを並行して進めており、コンシューマーPC事業の縮小と法人・AI向け事業の拡大という業界構造の転換が進んでいる。

なぜ今、PCが値上がりするのか——DRAM不足の構造的背景

この価格高騰の根本原因は、AI需要に起因するDRAMの構造的不足だ。

Samsung、SK hynix、Micronという世界3大メモリメーカーは、AIデータセンター向けのHBM(High Bandwidth Memory)に製造ラインを集中的に振り向けており、PC・スマートフォン向けの汎用DRAM(DDR5・LPDDR5X)の生産量が大幅に減少している。

HBMはDDR5と比べて同じウェハから得られるbit数が少なく、製造能力をHBMに移管するほど汎用DRAMは希少になるという構造的なジレンマがある。

業界分析によれば、2026年にはAIアプリケーションがDRAM生産全体の約20%を消費するとされており、データセンター向けメモリの旺盛な需要がPCや家電向けの供給を圧迫する「ゼロサムゲーム」が続いている。

DDR5スポット価格は2025年9月から4倍以上に跳ね上がり、DRAM価格全体では前年比170%超の上昇が報告されている。

TeamGroupのゼネラルマネージャーは、一部DRAMカテゴリの契約価格が1カ月で80〜100%上昇したと明言しており、2026年後半まで正常化は見込みにくいとの見通しを示している。

市場調査会社TrendForceは2026年の世界ノートPC出荷台数を前年比5.4〜10.1%減と修正しており、GartnerおよびIDCは2026年のPC・スマートフォン市場がそれぞれ10〜11%・8〜9%縮小すると予測している。

Gartnerは500ドル以下のエントリーノートPCが2028年までに採算割れに陥る可能性を指摘しており、安価なPC市場の「消滅」を警告している。

複合的なコスト圧力——三重苦に直面するPCメーカー

PCメーカーが直面しているのはDRAM不足だけではない。

NANDフラッシュもAI向けエンタープライズSSDへの優先配分が進んだ結果、コンシューマー向けSSDの供給が逼迫しており、価格が急騰している。

2025年9月以降、HDD価格も平均46%上昇したとされており、ストレージ全体が値上がりの圧力にさらされている。

さらにASUSによれば、Intel・AMDのCPUもミッドレンジ以上の製品に供給が集中しており、エントリークラスのCPUは入手が難しくなっている。

このCPU・DRAM・SSDという三重苦が同時進行し、PCのBOM全体が急激に膨らんでいる。

HPの2026年第1四半期決算では、メモリコストがPC製造コスト全体の35%を占めるに至ったことが報告されており、これは従来の15〜18%から約2倍に跳ね上がった数字だ。

PCメーカーの在庫が底をつきつつある

これまでPC各社は、前年から備蓄してきたDRAMの在庫を活用することで、消費者への価格転嫁を遅らせてきた。

しかし、この緩衝材としての在庫が今まさに底をつきつつあり、仕入れコストの上昇を市場価格に転嫁せざるを得ない状況に追い込まれている。

Lenovoの最高財務責任者は、メモリコストの急騰を「前例のない水準」と表現しており、在庫水準は通常より50%高い状態を維持してきたが、これも徐々に枯渇しつつあると説明している。

ASUSが1月5日に価格を引き上げたことで、台湾の小売業者が競合他社製品にも価格転嫁するドミノ倒し的な効果が生じており、チャネル全体での値上げが定着しつつある。

Dell、Lenovo、HPなどの大手PCメーカーもすでに2025年末から2026年初にかけて15〜20%の値上げを実施しており、業界横断的な値上げの波が現実のものとなっている。

価格正常化の見通し

メモリ価格の正常化については、楽観的な見方から悲観的な見方まで幅広い予測が存在する。

Micronの新工場(アイダホ州)やSK hynixのYonginクラスターが本格稼働するのは2027年以降とされており、これらが市場に与える影響が出てくるのは早くとも2027〜2028年になる見通しだ。

IDCの分析では、2026年の供給成長率はDRAMで前年比16%、NANDで17%にとどまると予測しており、いずれも過去の平均的な成長率を大幅に下回る。

一部の業界関係者は2026年後半には価格が落ち着き始めるとの見方を示しているが、AIインフラへの設備投資が年率36%増で拡大を続けているため、2028年以降まで高止まりが続くと見る向きも多い。

PC各社はこうした状況を踏まえ、消費者に対して今すぐの購入を強く推奨している。

解説

今回のASUSによる最大30%という値上げ幅は、数字として確かに衝撃的だ。

しかしよく考えると、ASUSはこの状況の被害者側であり、「値上げをしたくてしている」わけではないことは明らかだ。

DRAMのスポット価格が4倍超に跳ね上がり、SSD価格も急騰、CPUの供給まで絞られているという三重苦の中では、30%の値上げはむしろ抑制的とも言える。

HPがPC製造コストの35%をメモリが占めると報告した事実を見れば、在庫でコストを吸収できなくなった今、値上げは経営上の必然だ。

ここで一点補足しておくと、自作PCパーツ市場では、DRAMの小売価格がすでに天井を打って下がり始めているという話も出てきている。

しかしOEM調達や完成品PCの仕入れ構造はまったく異なり、価格改定のタイミングが後ろにずれる。

自作ユーザー向けのスポット市場が先行して動き、完成品PCメーカーの価格転嫁はこれから本番を迎えるという構図だ。

では、なぜPCメーカーに吸収余地がないのか。

PC業界というのはもともと競争が極めて激しく、長年にわたってコストダウンが極限まで進んでいる。

どこかにコストの変動要因が生じれば、それがダイレクトに製品価格を直撃する構造になっており、もはやどこにも吸収する余地が残っていない。

あとはユーザーの財布から出すしかないのが現状だ。

この問題の本質はAIにある。

大規模言語モデルや画像生成AIの普及以降、GPUを動かすためのHBM需要が爆発的に膨らみ、Samsung・SK hynix・Micronは一斉に製造ラインをHBMに切り替えた。

HBMはDDR5の数倍のウェハ面積を消費するため、HBMを多く作るほど汎用DRAMは減る。

増産が行われるまで、この構造的な矛盾はいかんともしがたい。

さらに状況を悪化させているのは、エネルギーコストだ。

ホルムズ海峡の封鎖リスクに伴う原油価格の高騰も重なり、今はコストが下がる方向の要因がほぼ存在しない状況になっている。

半導体製造は電力集約型の産業であり、エネルギーコストの上昇は製造コストに直結する。

DRAM需要がひとたび落ち着けば価格は下がるかもしれないが、その前提条件となる増産が間に合うかどうかも不透明だ。

しばらく高止まりするのはやむを得ないところだろう。

そして最も皮肉に感じるのは、引き金を引いたのがAIデータセンターであるという事実だ。

AIによって、そのAIにアクセスするためのクライアントPC——つまりユーザーの手元にある機器——の価格が上がり、調達が難しくなるという矛盾が生じている。

筆者自身、AIは素晴らしいテクノロジーだと思っているし、ローカルLLMも積極的に活用している。

しかし経済的に恵まれない人にとっては、PCの価格高騰によってAIそのものへのアクセスが遠のく可能性がある。

クラウドベースのAIサービスはPCがなければ使えず、ローカルLLMを動かすにはそれなりのスペックが必要だ。

これもAIによる格差拡大の一種だとすれば、なかなか皮肉な話だと思っている。

今PCが必要ならば、各社の「早めに買え」という呼びかけは純粋な商業的メッセージではなく、事実に基づいた助言だ。

AIバブルがPCユーザーの財布に直接ツケを回してくる——そういう時代が始まっている。