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GDC 2026:NVIDIAが「パストレーシング100万倍」ロードマップを提示――DLSS 4.5 MFG 6xは3月31日ベータ開始

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※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージで、必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。

 

■事実

NVIDIAは2026年3月に開催されたGDC(ゲーム開発者会議)において、副社長(VP)のジョン・スピッツァー氏がゲームグラフィックスの長期ロードマップを発表した(https://www.youtube.com/watch?v=YwsiMOzB2rc)。

スピッツァー氏はNVIDIAのデベロッパー&パフォーマンステクノロジー部門を統括しており、1999年の入社以来26年以上在籍するベテランだ。

同氏は今回の発表で新製品のGPUを発表したわけではなく、レンダリング技術の進化を10年単位で俯瞰するロードマップを提示することに注力した。

10,000倍から100万倍へ

NVIDIAによれば、2016年に発売されたPascalアーキテクチャ(GeForce GTX 10シリーズ)と比較して、現行のBlackwellアーキテクチャ(RTX 5000シリーズ)はパストレーシング性能が10,000倍に達しているという。

この数字はハードウェアの世代交代だけで達成されたものではなく、第4世代RTコア、第3世代テンソルコア、DLSSによるAI推論の積み重ねが複合的に効いた結果だ。

さらにスピッツァー氏は、将来のGPUアーキテクチャでPascal比100万倍(1,000,000倍)のパストレーシング性能を目指すとするロードマップを示した。

ただしこれは次世代製品への即座の約束ではなく、長期的な技術目標として提示されている。

業界観測筋は、この100万倍目標が2027〜2028年に登場するとされる次世代「Rubin」アーキテクチャ世代あたりを見据えたものと分析している。

スピッツァー氏は「ムーアの法則は死んだ」と断言し、シリコンだけで100倍・1,000倍の性能向上を実現することは今後困難だと述べた。

ブルートフォース(総当たり)による演算増強ではなく、アルゴリズムの革新とAIの全面活用によって、ゲームのリアルタイムグラフィックと映画品質のレンダリングとの差を埋めていくというのがNVIDIAの方針だ。

DLSS 4.5:24ピクセル中23ピクセルを推論

DLSS(Deep Learning Super Sampling)は現在800本超のゲームに対応し、RTX搭載PCのゲーマーの90%以上が有効化して使用しているとNVIDIAは説明した。

最新のDLSS 4.5では、24ピクセルのうち23ピクセルをAIが推論生成する。

MFG(マルチフレームジェネレーション)の最新モード「MFG 6x」では、エンジンが1フレームをレンダリングするたびにAIが5フレームを追加生成し、合計6フレームを出力する。

第2世代トランスフォーマーモデルを採用したことで、前世代のMFG 4xと比べ速度・画質の両面で向上している。

DLSS 4.5のDynamic MFGとMFG 6xのDLSSオーバーライド機能は、3月31日よりNVIDIAアプリのオプトインベータとしてRTX 5000シリーズユーザー向けにリリースされる。

利用にはNVIDIAアプリの「設定→バージョン情報」からオプトインが必要で、GeForce Game Ready Driver 595.79 WHQL以降が必須となる。

GDCでは20本の新規DLSS 4.5統合ゲームが発表された。 パストレーシング対応ゲームには007 First Light(5月27日発売)、CONTROL Resonant、Tides of Annihilation、Pragmata(4月17日発売)、Directive 8020(5月12日発売)などが含まれる。

新レンダリング技術:ReSTIR PTとRTX Mega Geometry

NVIDIAはGDCにおいてパストレーシング関連の新技術を2つ発表した。

ひとつは「ReSTIR PT」で、RTX Dynamic Illumination SDKに追加されたパストレーシング間接照明アルゴリズムだ。 複雑な鏡面反射やグロッシーサーフェスでの光の経路再利用に対応し、より忠実な全体照明を実現する。

もうひとつは「RTX Mega Geometry」で、数百万本の植物・樹木を含む高密度なシーンをパストレーシングで描画するための新システムだ。

Alan Wake 2への実装ではVRAM使用量を最大300MB削減しつつFPSを最大20%向上させる効果が確認されている。

NVIDIAはCD PROJEKT REDと共同で、この技術をウィッチャー4(The Witcher 4)に統合するデモを披露した。 展示されたデモは完全パストレーシングで、シーンを展開すると2兆トライアングルに相当するジオメトリを表現するものだった。 毎フレーム、数千万トライアングルを動的に構築してレイトレーシング用のアクセラレーション構造を再構築しているという。 これはあくまで技術デモであり、ウィッチャー4の最終的なビジュアルを示すものではない。

なおRTX Mega GeometryはCONTROL Resonantへの統合も確認されており、NVIDIAは今後オープンソースとして公開する予定も明らかにしている。

ゲーム内AI:ACEと「PUBG ally」

NVIDIAのゲーム内AIプラットフォーム「ACE(Avatar Cloud Engine)」では、音声認識、スモールランゲージモデル(SLM)、テキスト読み上げ(TTS)を統合した技術スタックが発表された。

TTSについてはResemble AIとの協業による「Chatterbox」モデル、音声認識にはNVIDIAの独自モデル「Reva」、LLMにはNVIDIAの「Neatron(Nemotron)」が採用されている。

KRAFTONが開発するPUBG:BATTLEGROUNDSへのACE統合「PUBG ally」では、AIチームメイトがローカルのRTX PC上で動作する。 音声認識→Neatronによる推論→TTSというフルスタックが、ゲームエンジンのレンダリングを妨げることなくPCのみで処理される。

フルスタック全体のVRAM使用量は6GB以内に収まるとNVIDIAは説明した。

クラウド展開時は、50時間/週プレイしても推論コストは約15セントに収まると試算されている。

また「Audio2Face」は音声データから口元・顔の動きをリアルタイムにアニメーションさせる技術で、すでにオープンソースとして公開されている。

SLMの品質は急速に向上しており、オンデバイスモデルが6カ月前のクラウド専用モデルの品質水準に近づきつつある。 かつては追い付くのに約2年かかっていたキャッチアップ速度が大幅に加速している。

開発スタジオ向け:GeForce Nowプレイテスト・RTX Pro 6000

NVIDIAはゲームスタジオ向けに「GeForce Nowプレイテスト」機能を発表した。 CI/CDパイプラインに接続してゲームをクラウドにアップロードし、アクセス制御リストで内部QA・外部QA・クローズドベータ・オープンベータと段階的に公開範囲を広げられる仕組みだ。 モバイル、タブレット、MacBook、ローカルスペックの低いPCなど事実上あらゆるデバイスからストリーミングでテストが可能で、2K・Activision・Bethesda・Techland・UbisoftなどがすでにこのサービスをQA目的で活用している。

また「RTX Pro 6000 Blackwell Server Edition」はラックマウント対応のプロフェッショナル向けGPUで、VRAMは96GBを搭載する。 vGPU機能を利用することで、GeForce RTX 5060からRTX 5090まで任意のBlackwellモデルをソフトウェア的に模倣できるため、複数世代のGPUを物理的に用意しなくてもQAを一台でこなせると説明されている。

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージで、必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。

 

解説

まず「100万倍」という数字について整理しておきたい。

NVIDIAがやっているのは、専用RTコアもテンソルコアもDLSSも存在しなかったPascal(2016年)を基準にして、あらゆるソフトウェア・ハードウェア・AI進化を積み上げた現時点と比較するという話だ。

正直、これはちょっと乱暴な比較で、まともに評価するならRTXが始まったTuring(2018年)と比べるべきだろう。

Videocardz.comも指摘しているとおり、NVIDIAはハードウェアの世代間性能差として100万倍を約束しているわけではなく、「10年単位の長期ロードマップ目標」として提示しているに過ぎない。

でも数字の見栄えはいい。NVIDIAは数字を使ったプレゼンが得意ですからね。

もちろん、パストレーシングの描画品質が10年前と比べて劇的に向上していることは事実だ。 サイバーパンク2077、インディ・ジョーンズ、Alan Wake 2……パストレーシング対応タイトルのビジュアルは確かに別次元だし、今後もPragmataや007 First Lightが同じ路線で追加される。

ただここで気になるのが、この進化の恩恵がどのGPUまで届くかという問題だ。

DLSS 4.5のMFG 6xはRTX 5000シリーズ限定で、今回の発表の目玉機能が上位製品にしか提供されないという構図はRTX 4000シリーズ時代から続いている。

個人的に評価したいのは「RTX Mega Geometry」の方向性だ。

Witcher 4の2兆トライアングルデモを見ると、フレームごとに動的にBVH(バウンディングボリューム階層)を再構築しながら大規模な植生を描画するのは相当なエンジニアリングの積み重ねで、これはゲーム制作全体に影響を与える技術だと見ている。

Alan Wake 2で実際にVRAM消費が300MB減ったというのも実用的で、単なるビジュアル向上だけでなくパフォーマンス効率の改善も兼ねているのが面白い。

ACE/PUBG allyについては、「AIチームメイトが誤って後ろから撃ってきた時に『これが罪悪感というやつか?』と言った」というスピッツァー氏の話が笑える。

でも笑えるのはそこだけじゃなくて、6GB VRAMでゲームのレンダリングと音声認識+推論+TTSを同時実行するというのは、実際かなり難しい実装だ。

ローカルで動かせるなら個人的には大歓迎で、プライバシーの観点からもクラウド依存より健全だと思う。

ムーアの法則の終焉をNVIDIAのVPが堂々と宣言し、「だからこそDLSSとAIが必要」というロジックで次世代ロードマップを描いているのは興味深い。

これは同時に、ゲーマーが「より高いハードウェアを買い続けなくても、AIが補ってくれる」という方向性でもあるのだが、実際には上位GPUほど恩恵を受けやすい設計になっている。

その矛盾は意図的なのか、それとも技術の自然な方向性なのか。今後のRTX 6000シリーズ世代で答えが見えてくるだろう。