※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージであり、必ずしも現実を反映しているわけではありません。
■事実
ZAMとは何か
設計目標は「高密度・広帯域・低消費電力」の三点同時達成です。
ZAM(Z-Angle Memory、Z角度メモリ)は次世代の積層DRAMアーキテクチャで、AI/HPCデータセンター向けのHBM(高帯域幅メモリ)の代替を狙う製品です。
名称の「Z」はZ軸(垂直方向)に由来し、従来技術のほぼ垂直な貫通配線(TSV)とは異なり、斜め方向のZ角度インターコネクトで各DRAMダイを接続する構造が最大の特徴です。
今回の発表:NEDO採択
2026年4月24日、「Intel Connection Japan 2026」にてIntel日本法人(Intel K.K.)とSAIMEMORYが共同で発表しています。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に、ZAM開発プロジェクトが採択されました。
NEDO採択により政府補助金が投入され、約3.5年にわたる開発計画がさらに加速する見通しです。
SAIMEMORYは自社としても今後約80億円規模の投資を計画しています。
SAIMEMORYとプロジェクトの背景
IntelはSandia・Lawrence Livermore・Los Alamos各国立研究所と連携し、「Next Generation DRAM Bonding(NGDB)」技術として高密度・低消費電力DRAMの積層・接合技術を実証してきました。
開発コンソーシアムにはSoftBank、Fujitsu、理化学研究所(RIKEN)、日本政策投資銀行が参加しています。
東京大学の学術特許、Shinko Electric Industries、PowerChip Semiconductor Manufacturing(Micronが買収済み)も関与していしています。
SAIMEMORYはSoftBank 100%子会社として2024年12月に設立、2025年6月に正式発足しています。
Intel-SAIMEMORY間の協業合意は2026年2月2日に締結しています。
プロジェクトの技術的ルーツは米国エネルギー省(DOE)と核安全保障局(NNSA)が管理する「Advanced Memory Technology(AMT)」研究開発プログラムしています。
技術仕様と目標値
複数のDRAM ICを多段垂直積層し、各ダイ間をZ角度インターコネクトで斜めに接続する構造です。
ベースダイと演算チップ(CPUやアクセラレータ)はIntelのEMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)パッケージング技術で接続しています。
※ EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)とはIntelが開発した2.5D先端パッケージング技術
HBM比で消費電力を40〜50%削減することを目標としています。
※ HBM(High Bandwidth Memory、高帯域幅メモリ)とは主にサーバーのAIアクセラレーターに使われている高速メモリです。
メモリ容量はHBM比で2〜3倍を目指し、1チップあたり最大512GBの実現を狙っています。
製造コストはHBMの約60%程度への低減が目標です。
開発ロードマップ
2027年度(FY2027、2028年3月期)までにプロトタイプ完成を目標としています。
2029年度(FY2029、2030年3月期)までに商業化を目標としています。
HBM市場の現状(背景)
HBM価格はTrendForceの予測で2026年に前年比50〜55%の上昇が見込まれています。
HBM需要は年率80〜100%成長する一方、供給増は年率50〜60%程度にとどまり、構造的な需給ひっ迫が続いています。
HBM市場規模は2025年の約350億ドルから2027年には約430億ドル、2028年には約1,000億ドル規模への拡大が予測されています。
HBMを製造できるメーカーはSK Hynix・Samsung・Micronの3社のみで、供給が強度に集中しています。
SK HynixはNVIDIAへのHBM供給で市場シェア約60%を確保しており、2026年分の生産はすでに完売済みです。
Intelとメモリの歴史
ZAMはIntelが約40年ぶりにメモリビジネスへ復帰することを意味しています。
Intelは1970年に世界初の商業用DRAM(Intel 1103)を発売し、かつてはグローバルシェア約90%を占めていました。
その後、日本メーカーとの価格競争に敗れ1985年にメモリ市場から撤退した経緯があります。
解説
ZAMの技術的なキモはHBMはTSVという「ほぼ垂直の貫通配線」が主流だが、ZAMはZ角度の斜め配線を採用することで熱の逃がしにくさと配線密度の限界という2つの壁に同時に挑もうとしている──独自のアプローチではある。
NEDO採択の意味は単なる補助金ではなく「日本の国家半導体戦略の一部」として組み込まれたことを意味する。ポスト5G枠という政策フレームワークの中に入ったことで、開発が止まりにくい構造になった。
このプロジェクトは「米国国立研究所で培った基礎技術→日本企業(SoftBank)が商業化」という経路で動いており、米日半導体連携の新しい形として注目に値する。
Intelの立場から見ると:AIアクセラレータ市場でNVIDIAに大きく遅れをとっている状況で、チップを直接戦わせるのではなく「メモリ供給側から生態系に食い込む」迂回戦略として機能する可能性がある。
HBM市場の現実はSK HynixとNVIDIAの関係が強固で2026年分の在庫はすでに完売、ZAMが直接競合できる環境ではない。現実的には「大規模クラウドではなく、エッジや中小規模AIサーバー向けの差別化製品」として市場を切り開くシナリオが最も現実的だ。
数値目標の達成可能性は消費電力40〜50%削減・コスト60%という数値が本当に実現できれば、採用ポテンシャルは大きい。ただし「次世代メモリ」は過去にも有望とされながら量産まで至らなかった例が多い。(Intel自身のOptane/3D XPointが最たる例)
ロードマップを見ると:プロトタイプ2027年・商業化2029年という計画で、NEDO採択での加速があっても商業出荷まで最短でも3年以上かかる。HBMは現在すでにHBM4世代に突入しており、2029年時点にはさらに先へ進んでいる可能性がある。
40年前にIntelをメモリ市場から追い出したのは日本メーカー、そして今Intelをメモリ市場に呼び戻したのも日本企業(SoftBank)──出禁にした店が自分から「またいらっしゃい」と招き入れたようなもので、歴史の巡り合わせは皮肉でなかなか面白い。
ソース: https://x.com/IntelJapan/status/2047527201852051779