ドイツのテックメディア「ComputerBase」が、DLSS(Deep Learning Super Sampling)4.5・FSR(FidelityFX Super Resolution)4・ネイティブ描画(TAA)の3方式を比較するブラインドテストを2週間にわたって実施し、その結果を公開した。
総投票数6,747票のうち、DLSS 4.5が48.2%(3,249票)を獲得してトップとなった。 次点はネイティブ+TAAの24.0%(1,619票)、FSR 4は15.0%(1,013票)にとどまった。 「3つに差は感じられない」と回答したのは12.8%(866票)だった。
テストはAnno 117、ARC Raiders、サイバーパンク2077(Cyberpunk 2077)、ホライゾン フォービドゥン ウエスト(Horizon Forbidden West)、Satisfactory、ラスト・オブ・アス パートII(The Last of Us Part II)の6タイトルで実施された。 すべて4K出力での比較で、ネイティブにはTAA(Temporal Anti-Aliasing)を使用し、DLSS 4.5とFSR 4はいずれも「Quality」プリセットで比較している。
参加者は同一ゲームプレイ映像を「1番〜4番」という中立的なラベルで視聴し、最も画質が良いと感じたものを1つ選ぶ形式で行われた。 どの番号がどの方式に対応するかは参加者には知らされず、ブランドバイアスを排除した純粋な知覚評価となっている。
ゲームごとの投票結果
タイトル別に見ると、DLSS 4.5は全6タイトルで1位を獲得した。
| タイトル | ネイティブ(TAA) | DLSS 4.5 | FSR 4 | 差なし | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| Anno 117 | 282票(22.8%) | 621票(50.1%) | 204票(16.5%) | 132票(10.7%) | 1,239票 |
| ARC Raiders | 328票(27.3%) | 570票(47.4%) | 166票(13.8%) | 138票(11.5%) | 1,202票 |
| サイバーパンク2077 | 372票(32.4%) | 394票(34.4%) | 122票(10.6%) | 259票(22.6%) | 1,147票 |
| ホライゾン フォービドゥン ウエスト | 208票(19.4%) | 604票(56.3%) | 125票(11.7%) | 135票(12.6%) | 1,072票 |
| Satisfactory | 155票(15.1%) | 627票(60.9%) | 128票(12.4%) | 119票(11.6%) | 1,029票 |
| ラスト・オブ・アス パートII | 274票(25.9%) | 433票(40.9%) | 268票(25.3%) | 83票(7.8%) | 1,058票 |
| 合計 | 1,619票(24.0%) | 3,249票(48.2%) | 1,013票(15.0%) | 866票(12.8%) | 6,747票 |
DLSS 4.5の得票率が最も高かったのはSatisfactoryで60.9%、次いでホライゾン フォービドゥン ウエストの56.3%、Anno 117の50.1%と続いた。 唯一の接戦となったサイバーパンク2077ではDLSS 4.5が34.4%に対してネイティブが32.4%と僅差で、「差なし」と回答した割合も22.6%と最も高かった。 一方でラスト・オブ・アス パートIIはFSR 4が25.3%と、他タイトルに比べて善戦した点が目立つ。
テスト設計上の注意点
ComputerBaseはテスト結果の公開に際し、重要な制限事項も明記している。
今回のアンケートは「最も画質が良いと感じたもの」を1択で選ぶ設計であり、2位・3位の評価は捉えられていない。 したがって、この結果から「FSR 4はネイティブより劣る」という結論を直接導き出すことはできないとComputerBase自身が注記している。
またネイティブ比較にTAAが使われている点も考慮が必要だ。 多くの現代ゲームではTAAが唯一の標準アンチエイリアシング手法となっているが、動きのある場面でのブラー(残像感)が生じやすいという弱点がある。 ComputerBaseがネイティブをより有利に見せる可能性のあるDLAA(ネイティブ解像度でのNVIDIAのAA技術)を除外したのは、AMDに同等の技術が存在しないためで、比較の公平性を保つための判断だ。
DLSS 4.5とFSR 4の技術的背景
DLSS 4.5はCES 2026でNVIDIAが発表した最新アップスケーリング技術で、第2世代Transformerモデル(Preset M)を採用している。 前世代のDLSS 4と比較してゴースティングや遮蔽領域の再構成品質が向上した一方、計算コストは約5倍に増大している。 RTX 4000/5000シリーズのFP8(8ビット浮動小数点)演算を活用することでパフォーマンスへの影響を抑えているが、旧世代GPUではより大きな処理負荷がかかる点には注意が必要だ。
FSR 4はAMDが2025年3月に投入した機械学習ベースのアップスケーラーで、AIモデルによる処理へと根本的にアーキテクチャを刷新した。 専門家の評価では「DLSS 3(CNNモデル)とDLSS 4(Transformerモデル)の間」という位置づけが一般的で、FSR 3以前と比べて画質は大幅に向上している。 ただしFSR 4の対応GPUはAMDのRX 9000シリーズ以降に限定されており、幅広いGPUで動作してきた従来のFSRとは異なる路線を歩んでいる。
ソース:ComputerBase(https://www.computerbase.de/artikel/grafikkarten/nativ-vs-dlss-4-5-vs-fsr-upscaling-ai-leser-blindtest-auswertung.96165/)
解説
正直なところ、今回の結果は「知っていた」という感覚と「やっぱりそうか」という感覚が混在しています。
DLSS 4.5が全6タイトルで1位というのは、技術的な背景から考えれば驚くべきことではありません。 第2世代TransformerモデルをFP8で動かすというアプローチは、純粋にリソース投入量が違うわけで、AMDがFSR 4でいくら頑張っても現時点ではモデル品質に差がある、というのが正直な評価です。
ただ、見方を変えると「ネイティブがDLSS 4.5に負けた」という結果の方が、実は重要なニュースだと思っています。
投票の48.2%がDLSS 4.5を選び、ネイティブ+TAAは24.0%に過ぎなかった。 「アップスケーリングは劣化技術」という先入観で語る人は今でも多いですが、ブランドを隠した状態で実際に映像を見ると、多くの人がアップスケーリング後の画像を「よりきれいだ」と感じてしまう——という事実はかなり示唆的です。 これはある意味、多くのゲームにおけるTAA実装の出来がそれだけ物足りない、という裏返しでもありますが。
サイバーパンク2077だけDLSS 4.5とネイティブが34.4%対32.4%と僅差だったことも興味深い点です。 このタイトルはグラフィック実装の完成度が高く評価されており、TAA品質も比較的良好なため、ネイティブが善戦したのでしょう。 逆に言えば、ゲーム側のTAA実装が優秀であればアップスケーリングとの差は縮まる、ということです。
FSR 4については、15.0%という数字だけ見ると「大敗」に映りますが、ComputerBaseの注記にある通り、「最も良い」の1択投票である点には注意が必要です。 他メディアによる技術比較レビューを見ると、FSR 4はDLSS 4世代に相当するかそれに近い品質まで向上しており、「DLSS 4.5に負けている」ことと「使えない技術」は全く別の話です。
個人的に見ているのは、FSR 4の最大の課題が対応GPUの狭さだという点です。 RX 9000シリーズ以降限定という縛りは、幅広い互換性を強みとしてきたFSRの従来路線とは真逆で、AMDが品質重視に振り切った判断の結果でもあります。 NVIDIAのDLSS対応タイトル数の優位と合わせると、アップスケーリング技術という軸での差は現時点ではNVIDIAが先行していると言わざるを得ないでしょう。
最後にひとつ付け加えると、この手のブラインドテストはどうしても映像の「静止・低速場面の印象」に引っ張られます。 高速な動きやフレーム生成との組み合わせ時の挙動については、また別の評価軸が必要です。 DLSS 4.5でも特定シーンでのアーティファクトは報告されており、「万能」ではないことは忘れないでおきたいところです。