■2025年Q4のクライアントCPU・サーバーCPU出荷動向
Jon Peddie Research(JPR)が発表した最新のCPU市場レポートによれば、2025年第4四半期(Q4)のグローバルCPU市場は、クライアント向けとサーバー向けの両セグメントで出荷台数が増加した。
クライアントCPU市場は前四半期比(Q3からQ4)で2.7%の成長を記録し、4四半期連続での拡大を継続した。
ただし、前年同期比(2024年Q4と2025年Q4の比較)では7%の減少となっている。
デスクトップ市場とノートブック市場の比率は、デスクトップが31%、ノートブックが69%で、ノートブックが市場の大部分を占めている。
JPRのプレジデントであるジョン・ペディ博士は「PC CPUの成長は季節的な購買行動に沿ったものだが、やや低調だった」と述べている。
「二転三転する関税政策と、MicrosoftによるWindows 10サポート終了の影響があった」とペディ博士は説明した。
「2026年第1四半期(Q1)は、メモリ不足と価格上昇により減少すると予想している」との見通しも示された。
一方、サーバーCPU市場はより堅調な伸びを見せた。
前四半期比で6.5%増加し、前年同期比では13.6%の大幅な成長を記録している。
この成長は、データセンター需要の拡大とAIサーバー向けの強い需要によるものとされる。
■AMDとIntelのサーバー市場シェア動向
サーバーCPU市場におけるAMDのシェアは2025年Q4に28.8%に達し、2024年Q4の25.2%から3.6ポイント上昇した。
対するIntelのシェアは71%となり、2024年Q4の75%から4ポイント低下している。
これらの数値は、Mercury Researchが報告した数値とも一致している。
Mercury Researchのデータでは、AMDのサーバーCPUの売上高シェアは41.3%に達しており、台数シェア以上に収益性の高い製品構成になっていることが示唆される。
AMDは2026年にZen 6アーキテクチャを採用した次世代プロセッサファミリーの投入を予定しており、サーバー向けの「EPYC Venice」、デスクトップ向けの「Olympic Ridge」、モバイル向けの「Medusa Point」などが発表されている。
EPYC Veniceは最大256コア・512スレッドを実現し、現行のTurinシリーズ(最大192コア)から33.3%のコア数増加となる。
TSMC 2nmプロセスを採用し、前世代比で70%以上の性能・効率向上が見込まれている。
一方、Intelは2026年のロードマップでシェアの安定化と強化を目指している。
Intelの新CEOであるリップブー・タン氏は、前回の決算発表でPanther LakeやNova Lakeを含む製品ロードマップを提示した。
「Intelは簡素化され加速されたロードマップに全力で取り組んでいる。強力なサーバー需要と主要なクライアント製品ポートフォリオの更新に支えられ、2026年に向けてシェアを安定化・強化する」とIntelの広報担当者はコメントしている。
Panther Lakeは2025年後半から出荷が開始され、Intelの新しい18Aプロセスを採用した最初のクライアント製品となる。
デスクトップ向けには2026年後半にNova Lakeが投入される予定で、Arrow Lakeの課題を解消した設計になると期待されている。
■クライアント市場におけるAMDの躍進とIntelの供給制約
クライアントCPU市場では、AMDが着実にシェアを拡大している。
Mercury Researchのデータによれば、AMDのクライアントCPUシェアは2025年Q4に29.2%に達し、前四半期比で3.8ポイント、前年同期比で4.6ポイント上昇した。
デスクトップ市場では特に顕著で、AMDのシェアは36.4%に達し、Intelとの差は約27ポイントまで縮小している。
2024年Q4と比較すると、Intelは9.5ポイントものシェアを失っており、急速な変化が起きている。
モバイルCPU市場でもAMDは26%のシェアを獲得し、前年同期の23.8%から上昇した。
この背景には、Intelの供給制約がある。
Intelは2025年、より利益率の高いサーバープロセッサの生産に製造能力を再配分する戦略を取った。
この結果、クライアントCPU、特にモバイル向けの出荷が季節的な平均を大きく下回る事態となった。
Mercury Researchのプレジデントであるディーン・マキャロン氏は「Intelの製造能力再配分は、同社のモバイルクライアントCPU出荷に最も大きな打撃を与えた」と指摘している。
「通常は上昇する四半期において、Intelは順次および前年同期比で大幅な減少を経験し、季節的な標準を大きく下回った」とマキャロン氏は述べた。
「対照的に、モバイルクライアントCPUはAMDにとって四半期で最も強力なセグメントとなった」
この結果、AMDはモバイルCPU市場で新記録を樹立した。
■2026年の市場見通しと課題
2026年のCPU市場には複数の課題が存在する。
最大の懸念材料は、DRAM不足と価格高騰である。
AI向けデータセンターが大量のHBM(高帯域幅メモリ)と標準DRAMを必要とするため、メモリチップメーカーはHBM生産にシフトしている。
同時に、全体的な生産能力の拡張には慎重な姿勢を取っているため、DRAM不足が深刻化している。
この影響で、PC価格は2026年に上昇する見込みだ。
Dellは商用PC価格を10%から30%引き上げると報じられており、他のOEMメーカーも追随する可能性が高い。
JPRのペディ博士が指摘した「メモリ不足と価格上昇」は、まさにこの状況を反映している。
また、関税政策の不透明性も市場の不確定要素となっている。
2025年Q4の購買増加の一因は、関税導入前の駆け込み需要だったとされる。
Windows 10のサポート終了も、企業のPC買い替えを促進する要因となった。
しかし、これらの特殊要因が剥落する2026年Q1は、市場縮小のリスクが高い。
解説:
AMDの躍進とIntelの正念場
正直、2025年Q4のデータを見ると、IntelとAMDの勢力図が急速に変化していることが分かります。
デスクトップ市場でAMDが36.4%のシェアを獲得したというのは、数年前には考えられなかった数字ですね。
特に注目すべきは、AMDが単に台数を伸ばしているだけでなく、収益性の高い製品構成になっている点です。
サーバー市場で台数シェア28.8%に対して売上高シェア41.3%というのは、高価格帯の製品が売れている証拠でしょう。
Intelが製造能力をサーバー向けに振り向けたという戦略判断は、短期的には合理的に見えます。
利益率の高いデータセンター市場を優先するのは当然の選択ですから。
しかし、その代償としてクライアント市場、特にモバイルでシェアを大きく失ったのは痛手ですね。
一度失ったブランドロイヤルティを取り戻すのは容易ではありません。
2026年のPanther LakeとNova Lakeが本当にIntelの巻き返しのきっかけになるかは未知数です。
18Aプロセスの量産が計画通りに進むかどうか、性能面でAMDの次世代Zen 6に対抗できるかどうかが鍵になります。
ただ、両社とも共通の敵に直面しているのも事実です。
DRAM価格の高騰は、IntelもAMDも等しく影響を受けます。
PC価格が10%から30%上昇するとなれば、市場全体が縮小するリスクがあります。
特に、IntelのAI PC戦略は大容量メモリを前提としているため、メモリ不足は戦略そのものを揺るがしかねません。
ペディ博士が指摘した「2026年Q1の市場縮小」予測は、かなり現実味があると見ています。
関税駆け込み需要とWindows 10サポート終了という特殊要因が剥落し、メモリ価格高騰が直撃する2026年前半は厳しい局面になるでしょう。
それでも、データセンター市場は堅調に推移する見込みです。
前四半期比6.5%増、前年同期比13.6%増という成長率は、AI需要が本物であることを示しています。
この分野では、AMDとIntelの両社とも次世代製品を積極的に投入する計画を持っています。
AMDのEPYC Venice(最大256コア)とIntelのClearwater Forest(最大288 E-Core)の対決は、2026年の見どころの一つになりそうですね。
個人的には、両社の競争が激化することで、技術革新が加速することを期待しています。
独占状態よりも、健全な競争があった方が消費者にとっては明らかにプラスですから。
ただし、メモリ不足という外部要因が市場全体の成長を抑制する可能性には注意が必要です。
素晴らしいCPUが登場しても、メモリ価格が高すぎてシステム全体の価格競争力が失われては意味がありませんからね。
2026年のCPU市場は、技術的な進化と市場環境の逆風が交錯する、非常に興味深い年になりそうです。