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Nintendo、30%オフ「顧客感謝セール」の原資は関税還付金(顧客への還元を法廷で争っていた分)

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■事実

Nintendo of Americaが「Customer Appreciation Sale」を発表しました。

開催期間は2026年9月13日〜9月26日です。

対象はNintendo eShop・Nintendo Store・一部対応小売店です。

数十タイトルのSwitchデジタルゲーム・バンドルが30%オフです。

一部の物理版ソフト・DLC・アクセサリー・amiibo・アパレルも対象です。

Nintendo公式の説明文言は「関税関連の還付金により、一部このプロモーションが可能になった」と言っていまする

公式発表内では「関税関連コストの大部分はNintendoが自社で吸収した」とも説明しました。

Nintendoは連邦政府から約3億ドル(約450億円)の関税還付を受け取っています。

一方でNintendoは、関税を理由に値上げされた製品(Pro Controller 2、Dock Set等)を購入した顧客から、集団訴訟(クラスアクション)を起こされています。

訴訟の主張:Nintendoは値上げで顧客から余分に徴収し、かつ政府から還付も受けており「二重取り」をしているというものです。

Nintendoは今年7月、この集団訴訟の却下を求める申し立てを裁判所に提出済みです。

Nintendo自身も今年3月、米国際貿易裁判所に対し、Costco・FedEx・Revlon等1,000社以上とともに関税還付を求める訴訟を起こしていました。

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解説

そもそもこの騒動の発端は、2026年2月に米連邦最高裁が6対3で「トランプ政権がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に発動した関税は違憲」と判断したことだ。

この最高裁判断により、対象となった関税を払っていた全企業に還付請求の道が開かれ、還付総額は全米で1,660億ドル(約25兆円)規模とされる。

ゲーム機業界は3社横並びで「還元拒否」: SonyもMicrosoftも、Nintendoと全く同じ立場を取っている。Sonyは約5億800万ドルの還付を見込み、その大半がPlayStation部門分。Microsoftも消費者への還元義務はないと主張し、両社ともすでに提訴されている。

Sonyの反論はやや技巧的:「関税が値上げの原因なら、関税撤廃後は値下げするはずが、実際には最高裁判断後の2026年3月にPS5をさらに値上げした。つまり価格には関税以外の複合要因がある」という理屈で、値上げと関税の因果関係そのものを切り離そうとしている。

Nintendo単独の3億ドルと合わせると、任天堂・Sony2社だけで少なくとも約8億ドルがゲーム機業界に還流している計算になるが、これは全米還付総額1,660億ドルの中ではごく一部に過ぎない。

一方、物流・小売業界は対応が真逆: Costcoは会員への一部還元を明言(ただし4件の集団訴訟を受けた後の対応)。FedExは約8億ドルの還付分を「顧客払い戻し用」として保持し専用ポータルまで設置。UPSはすでに250万件・約5億ドル相当の還付処理を実行済み。

つまり今回の対立構図は「Nintendo vs 消費者」ではなく「ゲーム機・エンタメ業界 vs 物流・小売業界」という、業界ごとの温度差の問題。同じ最高裁判断・同じ還付という状況で、業種によって対応がここまで割れるのは単なる企業倫理の差というより、顧客との関係性の違い(会員制・継続利用が前提のCostco/FedExと、単発購入が中心のゲーム機販売)が影響している可能性がある。

小規模メーカーPanic(携帯ゲーム機「Playdate」開発元)は実際に顧客への払い戻しを実施しており、「大手ほど還元を渋る」という構図の反例としても興味深い。

Nintendo側の法的な立場(「完了した取引を遡って調整する法的義務はない」)は、契約法の一般論としては特に奇異な主張ではない。

問題は、法的に還元を拒否する立場を取りながら、同時に「還付金のおかげでこのセールができました」と公式にアピールしてしまった点。還付を独占する権利を法廷で主張しつつ、その還付金を原資にした善意アピールを同時にやるのは、広報としての一貫性に欠ける。

「顧客感謝セール」と名付けているが、感謝されるべきは値上げ分を払わされた側であって、Nintendo自身ではないのでは、

集団訴訟の行方は、ゲーム機3社だけでなく「業種を問わず、関税還付を受けた企業は消費者に何か返す義務があるのか」という、最高裁判断の余波全体を占う試金石になる可能性がある。

同じ還付金という棚ぼたに対し、業界によって「顧客に返す」と「自社の宣伝に使う」で真っ二つに割れたのは、なかなか皮肉が効いている。

 

「IEEPA」とは何か?

そもそも「IEEPA」って何?というと、大統領が緊急事態を理由に強い経済的措置を取れる法律のことで、トランプ政権はこれを根拠に幅広い関税をかけていた。今回最高裁が「関税を課す目的でこの法律を使うのはダメ」と判断したのが発端だ。

「じゃあ政府は丸儲けだったのが帳消しになっただけ」と思うかもしれないが、実際はそれ以上に損しています。返還には利息が付くルールで、個人向けは年7%、法人向けは年6%、しかも複利。2026年6月には、その月に新しく入ってきた関税収入より、返還した金額の方が2倍以上多くなり、完全に持ち出しの状態になった。

ただしこれで「関税自体が終わった」と考えるのは早計だ。今回違法とされたのはあくまで「IEEPAを根拠にした関税」だけで、安全保障を理由にした鉄鋼・アルミ・自動車向けなどの関税(Section 232)や、不公正貿易慣行を理由にした関税(Section 301)は今回の判断の対象外で、そのまま生きている。

政権もすでにこちらへ乗り換え済みで、財務長官のベッセント氏は「複数の根拠を組み合わせれば、2026年の関税収入規模はほぼ変わらない」と明言している。

要するに「今回の一件で関税負担がなくなる」わけではなく、法律の根拠を挿げ替えて、同じくらいの負担を取り続ける準備がもうできている、ということだ。ここを理解していないと、「関税が違法認定されたなら製品も安くなるのでは」という誤解が生まれやすいポイントだ。

今回のNintendoの一件は、その大枠の中で「たまたま企業側に一時的に還付金というキャッシュが転がり込んだ」という、いわば制度移行の過渡期に生まれた一過性のボーナスに近く、消費者から見た関税負担そのものの構造は、実はほとんど変わっていない。