■事実(論旨箇条書き)
モッダーのZortos氏が開発者dpadGuy氏と共同で、NVIDIA GeForce NOWの制限されたゲームストリーミングインターフェースを回避し、NVIDIAのクラウドハードウェア上で動作するフルWindowsデスクトップへアクセスする手法を7月31日に公開しました。
手法はdpadGuy氏が開発したオープンソースツール「SalsaNOW」をベースにしています。
エントリーポイントとして無料プレイ可能なMMO「Trove」(Trion Worlds開発、現gamigo運営)を使用。GeForce NOWのカタログに含まれるF2Pタイトルであれば誰でも利用可能です。
手順は次の通りで、Troveを起動→Steam内蔵ブラウザでローカルのC:ドライブへアクセス→Steamappsフォルダ内のTrove実行ファイルのパスを特定→dpadGuy氏製の改造版実行ファイルに差し替え→再度「Play」を押すとゲームの代わりにタスクバー・スタートメニュー・デスクトップアイコン付きのWindowsデスクトップが起動します。
高度な脆弱性の突破ではなく、単純なファイル差し替えによるものです。
この手法は有料会員(Performance/Ultimate)でのみ動作し、無料プランおよびGeForce NOW Alliance Partnerのサービスでは利用不可です。
Zortos氏はUltimateティア(月額19.99ドル)のインスタンスでデモを実施。使用ハードウェアはAMD EPYC 9375F(32コア)+GeForce RTX 5080、VRAM48GB、システムRAM56GBです。
デスクトップ内ではWallpaper Engineによる動的壁紙のカスタマイズや、LM StudioでのGemma 4 31Bローカル実行(約41トークン/秒)などを実演しました。
一部ユーザーはこの手法を使い、GeForce NOW公式カタログ外のタイトル(Grand Theft Autoなど)をインストールしたと報告されています。
このデスクトップは標準ユーザー権限で動作するサンドボックス内にとどまり、管理者権限は付与されない。カーネルレベルのアンチチートは機能せず、管理者権限を要するソフトの多くはインストール時に「アクセス拒否」エラーになります。
File Explorerを開くとセッションが強制終了される、ブラウザからのダウンロードが制限されるなど、複数の制約も併せて報告されています。
記事執筆時点でNVIDIAから公式な声明や修正パッチは出されていません。
有料ティア比較(本手法との関連仕様)
| 項目 | Performance | Ultimate |
|---|---|---|
| 月額料金 | $9.99 | $19.99 |
| セッション最大時間 | 約6時間 | 約8時間 |
| 解像度/フレームレート | 1440p/60fps程度 | 4K/120fpsまたは1080p/360fps(DLSS4対応) |
| サーバーGPU | RTX 4000シリーズ級 | RTX5080級(Blackwell、VRAM48GB、62TFLOPS) |
| 今回の手法の利用可否 | 可(デスクトップアクセス自体は可能) | 可(最高スペックのクラウドPCとして利用可) |
※ 複数ソースの情報を統合。地域やキャンペーンにより価格は変動する場合がある。
ソース:
- Tom’s Hardware: https://www.tomshardware.com/service-providers/streaming/geforce-now-exploit-lets-you-access-the-full-windows-desktop-through-a-simple-file-swap-modder-runs-local-ai-models-on-ultimate-tier-with-48gb-of-vram-and-no-restrictions
解説
そもそもクラウドゲーミングサービスはどれも「ゲームランチャーが被さったWindows VM」でしかなく、今回の話は「化けの皮がはがれた」というより「元々こうだった」というのが正直なところだ。
面白いのは、この脱獄が高度な脆弱性の突破ではなく、単なる「実行ファイルのすり替え」で成立している点。GeForce NOWがゲームプロセスをある程度信頼しすぎていた、というだけの話だ。
「月10ドルで高性能Windows Cloud PCが借りられる」という切り口はキャッチーだが、実際に一番強いスペック(RTX5080級、VRAM48GB)を引き出すにはUltimateティア(月19.99ドル)が必要だ。
とはいえ標準ユーザー権限しか持てないサンドボックスなので、「本物のクラウドPC」と同じ使い勝手を期待するのは禁物。管理者権限が必要なソフトはほぼ入らない。
それでもLM StudioでローカルLLMを動かせてしまうのは象徴的。GPUクラウドのレンタル代がじわじわ上がっている今、こういう「裏技」でGPUリソースを間借りする発想が出てくるのは自然な流れだ。
ただしセッション制限や課金体系(100時間キャップ、超過時の追加課金)を考えると、まともにAI推論用途で常用するのは割に合わない。あくまで「話のタネ」レベルだ。
NVIDIAの利用規約では明確に禁止されている行為であり、過去にはこの手のexploit利用でアカウントBANになった報告もフォーラム上に複数存在する。試す場合はその点を理解した上で自己責任で。
【ネタ候補】999ドルのRTX5080を月20ドルの間借りで動かせると考えると一瞬お得に見えるが、それはNVIDIA自身が「クラウド版でも同じ値付けにしたい」と思っていないという話でもあるので、塞がれるのは時間の問題だ。
過去にもGeForce NOWの利用規約違反で大量BANが出た事例があり、NVIDIAが今回の手法を長く放置し続けるとは考えにくい。
【締め候補】クラウドゲーミングの「箱」の中身は結局のところただのWindows PC。中身が見えたところで驚くことではないが、こうして可視化されると「借りているのはゲームではなく計算資源そのものだった」という当たり前の事実に改めて気づかされる。
ゲームウィンドウが割れて背後のデスクトップ環境が現れる様子を抽象化したイラスト。背景にクラウドサーバーのシルエット、青紫系の配色(参照用)
GPUサーバーラックの上に解錠された南京錠アイコンが光るミニマルな構図のイラスト(参照用)