自作PCユーザーがゲーム用PCの解説をします

自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド

インテルのEMIB-T先進パッケージング技術、来年量産開始:TSMCのCoWoSに対しコスト面で50%の優位性

投稿日:

■事実

台湾の基板メーカーUnimicronは、インテルの先進パッケージング技術「EMIB-T」が本格的な量産段階に入るのは2027年になるとの見通しを示しました。

EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)は、大型のシリコンインターポーザーを使わず、有機基板に小型シリコンブリッジを埋め込んでダイ間を高密度接続する2.5Dパッケージング技術です。

EMIBには複数の派生版があり、MIMコンデンサを内蔵する「EMIB-M」、TSV(シリコン貫通電極)を搭載する「EMIB-T」が存在します。

EMIB-TはTSVにより垂直方向の電源供給が可能になり、数キロワット級の高電力ASICパッケージにも対応できます。

EMIB-Tの最大の利点は、高価なインターポーザーが不要な点で、これによりTSMCのCoWoSと比較して40〜50%のコスト削減が見込めるとUnimicronは説明しています。

Unimicron・Ibiden・新光電気工業(Shinko Electric)の3社は、EMIB-Tの初期歩留まり目標をいずれも50%に設定しています。

Unimicronの設備投資全体に占めるEMIB-T関連投資の比率は10%未満で、そのうち専用設備は15〜20%にとどまる見込みでする(大部分は汎用設備で対応)

Broadcom・MetaといったASIC設計企業が、コスト削減を主因にTSMCのCoWoSからEMIBへの切り替えを検討しているとDigitimesは報じています。

背景として、TSMCのCoWoS生産能力は2026〜2027年にかけて月産13万〜16万枚規模を目指しているが、NVIDIA・Broadcom・AMD・主要クラウド事業者からの需要がその大半を吸収しており、供給逼迫が続いています。

一部報道では、NVIDIAの次世代GPU「Rubin Ultra」向けCoWoS-L設計(2+2ダイ構成)で基板の反り(ワーピング)問題が発生しているとの未確認情報もあります。

こうした状況を受け、TSMC自身も「EMIB的」な独自パッケージング技術の開発に着手しているとの報道があります。(台湾Kinsus Interconnect Technologyが協力)

一方で、現時点でEMIBまたはFoverosによる外部顧客の量産実績は一件もなく、Broadcom・Meta・Googleなどの案件はいずれも2027〜2028年投入予定か、評価段階にとどまっています。

インテル自身はEMIBを自社サーバー向けCPU(18A「Clearwater Forest」、17タイル構成・12ブリッジ使用)にはすでに実装済みです。

ソース

表:EMIB系技術とCoWoSの比較

項目 標準EMIB EMIB-M EMIB-T TSMC CoWoS
インターポーザー 不要 不要 不要 必要(コスト増要因)
特徴 シリコンブリッジのみでダイ間接続 MIMコンデンサ内蔵 TSV搭載、垂直方向の電源供給が可能 ラウンドウエハーからの切り出しで端材ロスが発生
主な用途 ロジック-ロジック/ロジック-HBM接続 電源安定化が必要な用途 数kW級の高電力ASICパッケージ GPU・大型AIアクセラレータ
コスト(対CoWoS比) 約30〜40%減の報告あり 約40〜50%減 基準
量産状況 インテル自社製品で稼働中 2027年に本格量産の見通し 稼働中だが供給逼迫

解説

「コスト50%減」という数字は非常にインパクトがあるが、これはあくまでインターポーザーを省く構造上の理論値。歩留まり目標がまだ50%という段階であることを踏まえると、実際の実効コスト差は歩留まりが上がるまで理論値通りにはならない可能性が高い。

現時点で外部顧客によるEMIB/Foverosの量産実績がゼロという事実は重要。Broadcom・Meta・Googleの名前が並ぶと「もうTSMC離れが始まっている」ように見えるが、実態はまだ評価・検討段階にとどまる案件ばかりだ。

インテルファウンドリ事業はこれまでも18Aなどで計画遅延を繰り返してきた経緯があり、忖度なしで言えば「2027年量産」という見通しも額面通りには受け取れない。過去の実績を踏まえた慎重な見方が必要だ。

とはいえ、TSMC自身がEMIB類似技術の開発に着手しているという報道は、TSMCがこの動きを本気の脅威として捉えている証左とも読める。これは今回のニュースの中で一番「効いている」情報かもしれない。

そもそも顧客がEMIB-Tを検討する主因は「EMIB-Tが優れているから」というより「TSMCのCoWoSが逼迫していて選択肢がないから」という側面が大きい。競争力というより供給リスク分散の文脈で読むのが妥当だ。

同日ニュースで取り上げたMediaTekのASIC案件(EMIB-T採用を公式確認)と合わせて見ると、EMIB-T陣営に加わる企業は着実に増えている。ただし「採用検討」と「量産稼働」の間には大きな距離があることは繰り返し強調しておきたい。

インターポーザー要らずで数十%コスト減という触れ込みは、家電量販店の「他社より50%お得」広告を彷彿とさせる。中身(歩留まり)をちゃんと見てから判断したいところ。

TSMC一強だったAIチップ向けパッケージング市場に、ようやく本格的な選択肢が生まれつつある。ただし主役交代のニュースにするにはまだ早い、というのが正直なところ。