※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんのでご注意ください。
■事実
元Intel CEOのパット・ゲルシンジャー氏が、All-Inポッドキャストに出演し、Intel在職時の発言を複数を披露しました。
Intelが「CPU優位の絶頂期」にあった当時、NVIDIAのGPUを「グラフィック用のマシン、一部のゲーマー向け」と軽視していたと発言しました。
ジェンセン・ファン氏(NVIDIA CEO)については「高性能なスループット型マシンを作り続けていただけ」と評価しつつ、その姿勢を貫いたことを称賛しています。
ゲルシンジャー氏は、CPUの汎用性とGPUのスループット指向アーキテクチャを橋渡しする社内プロジェクト「Larrabee」に言及しました。
Larrabeeは2009年、ゲルシンジャー氏がIntelを離れた直後に開発中止となったと説明しました。
ゲルシンジャー氏は「Larrabeeが継続していれば、その後の展開は違っていたはず」と述べました。
Larrabeeはx86命令セットにGPU的な拡張を加えたアーキテクチャで、汎用並列計算には有利だったが、グラフィックス用途では不利だったとされています。
のちにLarrabeeはXeon Phi(スーパーコンピューティング向けプロセッサ)として再展開されました。
番組内でゲルシンジャー氏は、Intelが過去に約1,000億ドルを株主還元(配当・自社株買い)に費やしたことを批判しています。
この配当重視の経営判断は「技術系ではなく財務系の経営陣」によるものだったと指摘しています。
財務偏重の経営判断が、工場投資を怠らせ、Appleとの取引機会の喪失や、TSMCへの製造リーダーシップの明け渡しにつながったと説明しています。
ゲルシンジャー氏は現在、量子コンピューティング企業PsiQuantumと関係が深い立場にあります。
番組では「量子コンピューティングは今後10年以内に複数の産業を再構築しうる」との見方を表明しています。
同氏は以前から「量子コンピューティングは2年以内に主流化し、GPUを置き換えうる」とFinancial Timesのインタビューでも主張しています。
この見解は、ジェンセン・ファン氏の「量子コンピューティングの主流化には20年以上かかる」という発言と真っ向から対立しています。
ゲルシンジャー氏は「クラシック計算(CPU)」「AI計算(GPU)」「量子計算」を計算の”三位一体”と位置づけています。
解説
IntelがNVIDIAを「ゲーマー向けおもちゃ」扱いしていた過去は、業界内では半ば伝説的な逸話になっている。今回はそれを本人の口から改めて認めた形だ。
CPU全盛期の成功体験が、次のパラダイムへの感度を鈍らせた典型例。半導体業界では「勝ちすぎた企業ほど次を見誤る」というパターンが繰り返されている。
Larrabee中止のタイミング(ゲルシンジャー氏退社の直後)は示唆的。技術的ビジョンを持つ人物が去った途端に、賭けをやめる経営判断が下されたとも読める。
1,000億ドル規模の株主還元批判は、当時のIntel経営陣への直接的な批判であり、現CEOのリップブー・タン氏が推進する「ファウンドリ再建」路線とは対照的な経営哲学の違いが浮き彫りになる。
「あの頃はゲーム機のオマケくらいに思ってた」という発言、今のNVIDIAの時価総額を知っている読者からすると笑うに笑えない話だ。
量子コンピューティングが2年以内にGPUを置き換えるという主張は、業界の主流的な見立てからは大きく外れている。ファン氏の「20年」という発言との落差がそのまま両者の立場の違いを表している。
ゲルシンジャー氏自身がPsiQuantumという量子コンピューティング企業と近い関係にあることは、この発言のポジショントークとしての側面を割り引いて読む必要がある材料だ。
とはいえ、量子計算・古典計算・AI計算を並列に語る視点自体は、単純な「GPU覇権が未来永劇続く」という楽観論への一つの対抗軸として意味がある。
Intelの現在地(18Aプロセスの歩留まり改善、Panther Lakeの本格出荷、外部顧客獲得の動き)を踏まえると、ゲルシンジャー氏の総括は「過去の反省」であって「現在への処方箋」ではない点に注意だ。
GPUを見下していた過去を語れるのは、もうGPU覇権を諦めた者の特権なのかもしれない。
薄暗いオフィスで物思いにふける経営者風の男性。背景にはぼやけたデータセンターのサーバー群。過去を振り返るような静かなトーン(参照用)