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Anthropicが自社AIチップ開発に着手、三星2nmプロセスで協議へ ― OpenAIに続く動き

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■事実

The Information(米国時間7月2日)の報道として、Anthropicが自社AIチップの早期開発に着手し、三星電子と製造委託について協議を始めたことが判明しました。

現時点では計画の初期段階で、チップの機能・性能仕様・サーバー/クラスタへの実装方法はまだ確定していません。

詳細設計や製造作業はまだ始まっておらず、計画自体が中止される可能性もあります。

協議の中心は三星の2nmプロセスと、同社の先端パッケージング技術の活用です。

Anthropicは今月、OpenAIの自社チップチーム初期メンバーだったクライブ・チャン氏を採用しており、社内のチップ設計体制強化の一環とみられています。

三星電子・SK Hynix・Micronはいずれも、2026年5月に実施されたAnthropicのシリーズH資金調達ラウンド(650億ドル規模、評価額約9,650億ドル)に出資しており、三星は「出資者」と「製造委託先候補」を兼ねる唯一の存在です。

Anthropicは今回の動きについて、既存のハードウェア関係(AWSのTrainium、GoogleのTPU、NVIDIAのGPU)を置き換えるものではないと説明しています。

MicrosoftのチップやイギリスのスタートアップFractileのチップも並行して評価中とされています。

The Informationの試算によると、NVIDIAは現在もAIチップ市場の約74%のシェアを持つとされ、各社の自社チップ開発が本格化する以前より高い水準です。

同時期、OpenAIは2026年6月24日にBroadcomと共同開発した推論特化型チップ「Jalapeño」を発表済み。設計開始から9カ月というASIC開発として異例の短期間でテープアウトに至り、2026年末までにMicrosoftのデータセンター等で初期展開予定とされています。

三星グループとSK Group(三星電子・SK Hynixの親会社)は今回の報道の直前、韓国国内に4カ所のメモリ工場を新設する総額5,180億ドル規模・10年間の投資計画を発表しました。

Google側も、将来のTPUの一部製造について三星への委託を別途検討しているとされ、三星のファウンドリー事業にとっては複数の追い風が重なっています。

三星は先端プロセスの歩留まりで従来TSMCに後れを取ってきた経緯があり、業界ではTSMCのN2プロセスとの技術差が今後の焦点として指摘されています。

表:主要AI企業の自社チップ開発動向(2026年7月時点)

企業 チップ/取り組み パートナー 用途 進捗状況
OpenAI Jalapeño Broadcom、Celestica 推論特化 2026年6月発表済み、年内展開予定
Anthropic 未定(開発初期) Samsung(協議中) 未定 構想・協議段階
Amazon Trainium/Inferentia 自社 学習・推論 稼働中
Meta MTIA 自社(一部Broadcom) 推論中心 稼働中

注:Google TPUについては本記事の直接情報源に含まれないため表から除外。三星の将来TPU製造協議は別件として本文中で言及

■解説

OpenAIが自社チップを発表した直後というタイミングを考えると、「隣の芝生」的な焦りというより、AI各社が横並びで同じ結論(NVIDIA依存からの脱却)にたどり着きつつある、という方が実態に近そう。

ポイントは、Anthropic自身が「既存パートナーを置き換えるものではない」とわざわざ釘を刺していること。これは自社チップ構想がまだ「保険」レベルの位置づけであることの裏返りとも読める。

三星が「出資者」と「製造委託先候補」を同時に兼ねているのが今回地味に面白いところ。出資したうえで受注もできれば三星にとっては一粒で二度おいしい話だ。

ただし三星の2nmは歩留まり面でTSMCに劣るという評価が根強く、Anthropicがここで三星を選ぶかどうかは技術的な賭けの側面もある。

クライブ・チャン氏の採用は、AI業界内でチップ設計人材の引き抜き合戦が起きていることを示す一例。OpenAIから人材が流出している構図は、OpenAIにとっては皮肉な話でもある。

NVIDIAのシェアが74%で「むしろ以前より高い」というデータは意外に感じるかもしれないが、AI需要全体のパイが急拡大しているため、各社の自社チップ努力がシェアの絶対値を押し下げるには至っていないと見るのが妥当だ。

自社チップ開発が「まだ何も決まっていません」段階なのに、これだけニュースになるあたり、AI業界の「チップを持つと一人前」感が透けて見える。

「NVIDIA一強」の構図は当分揺るがなそうだが、水面下では確実に多極化が進んでいる、という一枚だ。

 

 

SamsungはTSMCに押され続けてきた「万年2位」のイメージがあるうえ、後方からはRapidusという新たな先端ノード候補が本気で追い上げてきている、という二正面の構図になりつつある。

Anthropicが今回Samsungとの協議に至った背景には、技術力の比較だけでなく「TSMCの新規顧客枠にそもそも入れるかどうか」という参入障壁の問題がありそう。

先端ノードほど新規参入への門前払い率が上がる。リードタイムが長期化している以上、発注する側にも相応の実績・体力(数量コミットメントを履行できる信用)が求められる。

Anthropicは評価額こそメガテック級だが、半導体調達の実績やチームの蓄積という点では業界的にまだ「新参の中小企業」に近い立場と言える。