■事実
AMD公式の技術文書ポータルに掲載されたページから、次世代Threadripperの内部コードネームが「Mustang Peak」であること、新型ソケット「TR6」を採用すること、CPUID表記が「BA0F80」であること、製品分類が「Family 1Ah Model A8h」であることが確認されました。このページは「AMD Ryzen Threadripper TR6 Desktop Processors」という見出しの下にあるが、説明文自体は「Threadripper Pro」というCPUを指しています。発見者はリーカーのInstLatX64で、2026年6月16日に情報が公開されました。
新世代ThreadripperはTSMCの2nmクラスのプロセスで製造されるCore Complex Die(CCD)を採用するZen6世代のコアアーキテクチャを使うとされています。
メモリはDDR5規格を継続し、PCIe Gen 6をサポートする。PCIe 6.0はx16リンクで双方向256GB/秒(片方向128GB/秒)の帯域を提供する見込みで、現行のPCIe 5.0比で帯域幅が2倍になります。
ソケットはTR5からTR6へ移行する。現行のThreadripper 9000シリーズはTR5プラットフォーム(TRX50・WRX90チップセット)を使用しており、TR6への移行はThreadripper 7000以来初めてのプラットフォーム変更となります。
AMDはSKU・コア数・クロック・キャッシュ容量・TDP・チップセット・発売時期について公式には何も明らかにしていません。
業界では、デスクトップ向けZen6のCCDが1基あたり8コアから12コアへ増加するとの見方が有力。同じCCD構成がThreadripperにも使われると仮定すると、12基のチップレットで最大144基のZen6コアを搭載する可能性があると複数メディアが推測しています。
現行のThreadripper PRO 9000シリーズ(コードネーム「Shimada Peak」)は最大96コア/192スレッド、TDP 350W、PCIe 5.0レーン最大128本という仕様で、2025年7月に発売されました。製造プロセスはTSMCの4nmクラス(CCD側)とTSMC 6nm(I/Oダイ側)の組み合わせであり、一部メディアでは「3nmアーキテクチャ」と紹介されているが、AMD公式仕様やスペックデータベースでは4nmプロセスとされています。
同時期に展開予定のサーバー向けZen6 EPYC「Venice」は、標準のZen6版とより高密度なZen6c版の2種類が用意され、それぞれSP7・SP8の2種類のソケットに対応する予定で、最大256コアのZen6c構成を採用し、1ソケットあたりのメモリ帯域は1.6TB/秒(現行の614GB/秒から倍増以上)に達するとされています。
次世代Threadripper(Mustang Peak)の市場投入は2027年の中盤から後半にかけてになると見込まれています。
仕様比較表(複数の報道・推測情報を統合)
| 項目 | Threadripper PRO 9000(Shimada Peak、現行) | Threadripper次世代(Mustang Peak、推定) | EPYC Venice(参考・サーバー向け) |
|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | Zen5 | Zen6 | Zen6 / Zen6c |
| 製造プロセス | TSMC 4nm(CCD)+6nm(I/Oダイ) | TSMC 2nmクラス | TSMC 2nmクラス |
| ソケット | sTR5 | TR6(新規) | SP7/SP8(新規) |
| 最大コア数 | 96コア/192スレッド | 未公表(最大144コア説あり) | 最大256コア/512スレッド |
| メモリ | 8チャンネルDDR5-6400 ECC | DDR5継続(チャンネル数未公表) | 16チャンネルDDR5想定 |
| PCIe | PCIe 5.0(最大128レーン) | PCIe 6.0 | PCIe 6.0想定 |
| TDP | 350W | 未公表 | 未公表 |
| 発売時期 | 2025年7月(発売済み) | 2027年中盤〜後半(予想) | 2026年中(予定) |
ソース:
- 快科技「核战永不止息 Zen6架构线程撕裂者能上144核:就看AMD的了」https://news.mydrivers.com/1/1130/1130419.htm
- 快科技「AMD下代线程撕裂者确认2nm Zen 6!配套TR6原生支持PCIe 6.0」https://news.mydrivers.com/1/1130/1130306.htm
解説
今回の情報源はリーク経由とはいえAMD公式の技術文書ポータルそのものなので、コードネーム・ソケット名・プロセスノードといった「骨格」部分の信頼性は高い。ただしコア数・価格・発売時期など「肉付け」部分はまだ完全に白紙という点は冷静に見ておきたい。
「最大144コア」という数字は、「CCDが12コアに増える」という業界の予測値から逆算した推測であり、AMD自身が公言した数字ではない。話が独り歩きしやすい段階にあることは念頭に置いておくべきだろう。
サーバー向けEPYCがZen6c(高密度コア)を使って256コアまで伸ばす一方、ワークステーション向けThreadripperは過去も96コアで頭打ちだった実績がある。コア数の優先順位は今後もEPYCが上、Threadripperはその下というヒエラルキーが続く可能性が高い。
メモリ規格がDDR5のまま、という情報は地味だが重要。DDR6の標準化がまだ進んでいない以上、今のタイミングで飛び級するのは時期尚早であり、妥当な判断と言える。
PCIe 6.0は帯域が2倍になると聞くと派手だが、実際にPCIe 6.0対応のGPUやSSDがどれだけ市場に出回るかは別の話。新世代ソケットが出ても周辺機器が追いつかない「箱だけ立派」状態は、HEDT(ハイエンドデスクトップ)の歴史ではお馴染みの光景だ。
ソケット移行(TR5→TR6)は既存ユーザーにとってマザーボードの買い替えを意味する。AMDのメインストリーム向けAM5が長期サポートを売りにしているのとは対照的に、ハイエンド帯は世代ごとに作り直す方針が続いている。
現時点でAMDが確約しているのは「ソケットの名前」「CPUIDの番号」「プロセスノード」だけで、一番気になるコア数は誰も知らないという、リーク記事としてはなかなかシュールな構図だ。
発売はまだ1年以上先の2027年。発表の段階だけ見ると気が早い印象もあるが、半導体業界では「次世代の輪郭が見えた瞬間にリークが先行する」のはもう恒例行事と言っていい。
コア数の数字に踊らされる前に、まずは「TR6マザーボードがいくらになるか」を冷静に待ちたいところ。