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メモリ価格高騰の波はまだ来ていない――UBSがDellを分析、PC・サーバー市場への本格的な打撃は2026年後半から

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■事実

Dellの決算概要(FY2027 Q1・2026年5月28日発表)

  • 売上高:438億ドル(前年同期比+88%)、過去最高を更新
  • 非GAAP希薄化EPS:4.86ドル(前年同期比+214%)
  • 純利益:34.4億ドル(前年同期9.65億ドルから大幅増)
  • AIサーバー収益:161億ドル(前年同期比+757%)
  • AIサーバーの受注額:244億ドル、受注残高:513億ドル
  • 通期のAIサーバー収益見通し:約600億ドル(従来予想500億ドルから上方修正)
  • 全体の通期売上高ガイダンス:1,650〜1,690億ドル(前年比約50%増見込み)
  • PC部門(CSG):146億ドル(前年比+17%)

UBSアナリストノートの内容

Dellの決算を受けてUBSがアナリストノートを発表しました。

Dellの目標株価を243ドルから440ドルに大幅引き上げました。

FY2027・FY2028の利益予測を上方修正しました。

UBSはDellの供給チェーンがDRAMとNANDの急騰をこれまで「巧みに」管理してきたと評価しました。

ただし今後については警告し、「メモリ価格上昇のコストへの影響は、2026年後半から2027年Q1(暦年)にかけてより深刻になる見込み」です。

UBSはさらに「2027年Q1以降も価格上昇ペースは鈍化するが、PC・サーバー・ストレージのマージンへの悪影響が長引くという意味で価格下落は期待できない」と指摘しています。

Jeff Clarke COOのコメント(決算カンファレンスコール)

NAND・DRAMをはじめとする部材コストの急騰により、Dellは製品価格を急ピッチで改定を余儀なくされていると説明しています。

「燃料、原材料、DRAM、NAND、CPUを問わず、これまで経験したことのないペースで変化するインフレ環境に置かれており、すべての兆候がそれが続くことを示している」と発言しています。

DellのAIサーバー粗利益率は約18%に低下(AIサーバー比率増加が希薄化要因)しました。

メモリ価格の現状(調査機関データ)

  • PC向けDRAM価格:2026年Q1に前四半期比で110%超の上昇(記事中の数値)
  • 通常DRAMの契約価格:2026年Q1に前四半期比55〜60%上昇(TrendForce)
  • 2026年Q2のNAND Flash契約価格:前四半期比70〜75%上昇の見込み(TrendForce)

一部地域では414%の価格高騰も発生(記事中の数値)しています。

2026年2月単月でNAND Flash価格が25%急騰しました。

パニックバイイングによりPC出荷台数も2026年に増加(Counterpoint Research)しました。

構造的背景

HBM(高帯域幅メモリ)の需要急増により、Samsung・SK Hynix・Micronの3社(世界DRAM生産の95%超を支配)が製造能力をHBMへシフトしています。

HBM 1ギガバイトの製造には通常DRAMの3〜4倍のウェハ消費が必要です。

データセンター向けが世界のメモリチップ生産の約70%を消費する状況です。

IDCは「通常の需給サイクルではなく、構造的・恒久的な製造能力の再配分」と分類しています。

新規ファブの建設には着工から生産開始まで18〜24ヶ月が必要。供給正常化は早くとも2027年以降です。

SamsungはHBMの顧客が2027年分の供給枠をすでに確保済みと説明しています。

SK Groupの崔泰源会長は「AI関連のメモリ需要圧力は2030年まで続く可能性」と言及しています。

解説

今回のUBSレポートで重要なのは「DellがAIサーバーで絶好調だが、その裏でメモリ高騰という時限爆弾が近づいている」という構図。好決算とリスク警告が同居している珍しいケースだ。

Dellがこれまでメモリ高騰を「巧みに」しのいできた背景には、大手OEMとしての調達力・長期契約・価格転嫁速度の速さがある。Jeff Clarkeが「製品を急ピッチで値上げした」と明言したことはその証左だ。

しかし「急ピッチで値上げできる」のはサーバー部門の話。コンシューマーPC市場では顧客の価格感度が高く、同じ戦術は通用しない。後半に向けてPC部門のマージン圧迫は避けられない。

UBSが「価格下落は期待するな」と言ったのは重要。通常のメモリ市況なら需給改善とともに価格下落が始まるが、今回はHBMへの構造的シフトが原因であり、サイクルの理屈が通らない。

HBM 1GBに通常DRAMの3〜4倍のウェハが必要、という事実がこの問題の本質。NVIDIA向けGPUが大量に売れれば売れるほど、民生向けのDRAM・NANDが市場から消える。Dellの好決算がそのまま自社のPC部門の苦境を生み出すという皮肉な構造だ。

ABF基板不足(2021〜22年)の記憶がある読者なら構造は見覚えがあるはず。「AI向けが優先されて民生向けが後回し」は今に始まった話ではないが、規模と深刻さが段違いだ。

2027年以降に供給が正常化するとして、その頃にはHBM4が普及し始め、またすぐ次のサイクルが始まる可能性がある。「もうしばらくの辛抱」で終わらない可能性をSKグループ会長の発言が示唆している。

「Dellの決算はAIサーバーが757%増という景気のいい数字なのに、レポートの結論が『でもそれがPC事業を苦しめます』という構造」。好調の原因が自分の首を絞めるとは、なかなか因果な商売だ。

UBSが示したのは「嵐の前の晴天」という警告。Dellが今後どう舵を切るかは、2026年後半の決算で答え合わせになる。