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NVIDIA、H200の対中輸出が承認も出荷ゼロ — 「シェア0%」の実態と中国の二重構造

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■事実

H200輸出承認の経緯

2026年5月14日、トランプ大統領の訪中(習近平との首脳会談)に伴いNVIDIA CEO、ジェンスン・ファン(Jensen Huang)氏も急遽代表団に加わりました。当初のホワイトハウス訪中リストには名前がなく、アラスカ経由でトランプ機に合流しました。

米国政府はNVIDIAのHopper H200 AIアクセラレーターについて、中国の約10社への販売を承認済み。対象はAlibaba、Tencent、ByteDance、JD.comなど主要テック企業に加え、LenovoやFoxconnなどの現地ディストリビューターも含まれます。(Lenovoは声明で承認を確認)

各社が購入できる上限は1社あたり最大75,000基。10社合計で最大75万基に相当します。

ただし承認後も1基も出荷されていません。(Reutersが3名の関係者情報として報道)

取引が止まっている主因は中国政府側からの購入抑制の指示です。北京は注文を阻止するか厳格な審査を課す方向で圧力をかけているとされています。

米商務長官ハワード・ラトニック氏も上院公聴会で「中国中央政府が(国内投資を国産チップに集中させるため)購入を許可していない」と発言しています。

今回の取引には異例の条件が付いているが、売上の25%を米国側に還元し、チップをまず米国領土を経由して出荷するという内容。中国側から「改ざんの恐れがある」として警戒されています。

NVIDIAの中国市場シェア推移

輸出規制強化以前、NVIDIAは中国の先端AIチップ市場で約95%のシェアを持っていました。

段階的な輸出規制(2022年からA100・H100禁止、2025年のより包括的な規制)によりシェアは急減しています。

ジェンスン・ファン氏は自社の中国での「公式」シェアが現在ゼロであると認めています。

2024年にはH20(中国市場向け性能制限モデル)を約100万基販売していたが、2025年5月の輸出規制追加でH20も禁止。NVIDIAは2025年度Q1に約45億ドルの損失計上しています。

競合の動向

Huawei(ファーウェイ)のAscend(アセンド)シリーズが中国市場でシェアを拡大しています。2024年はAscend 910Bを20万基販売しています。(同年のNVIDIA H20は100万基)

Huaweiは2026年のAscend 910C生産を60万基まで引き上げる計画ですが、SMIC(中芯国際集成電路製造)との7nmプロセス協業で歩留まり課題が残っています。(2025年時点で20〜40%程度)

Huaweiは次世代として910D(2026年後半予定)、さらにAscend 950/960/970(2028年まで)のロードマップを公表しています。

Wedbush証券アナリストによると、今回の承認はNVIDIAのH200に相当するAMDのMI(Instinct)シリーズアクセラレーターも対象に含まれるとしています。

今後の見通し

750万基(10社×75,000基)が実際に出荷されても、米国内の大手AI企業1社がホッパー+ブラックウェルを合計で約100万基近く保有しているスケールと比較すると、限定的な規模です。

BlackwellおよびRubin世代はNVIDIAが中国への販売を明言しない姿勢を維持しています。

Rubin世代が市場に出た後、中国向け廉価版「B30」が出荷される可能性が以前から指摘されています。(未確認)

解説

「シェア0%」という数字の欺瞞性

ジェンスン・ファン氏の「公式シェアはゼロ」という発言は、統計的には正確かもしれないが、実態を反映していない可能性が高い。

2026年3月に起訴されたSupermicro(スーパーマイクロ)の密輸事件では、タイなど東南アジア経由のトランスシップメントで約25億ドル相当のNVIDIA GPU搭載サーバーが中国に流出したとされる。AlibbabaへNVIDIA製品が届いていたとの報道もある。

今回起訴された案件はあくまで「発覚した事例」に過ぎない。摘発されていない密輸が存在する可能性は十分あり、その分は「シェア0%」の数字には当然含まれていない。

統計に乗らないNVIDIA製品が中国国内に存在しているという事実を無視してシェアゼロを語るのは、かなり都合のよい解釈に聞こえる。

中国政府の「使うな」政策の限界

北京はH200の購入さえ抑制しようとしているが、ではAscendエコシステムに移行する間の空白期間をどうするのか、という問題は解決されていない。

Ascend 910Cの生産能力は2026年で60万基を目指しているが、歩留まり課題が続いており需要を満たせていない。

CUDAに相当するROCmどころかAscendのソフトウェアエコシステム(CANN)の成熟度はさらに低く、既存のAIフレームワーク移植コストが高い。移行を急ぐほど研究・開発効率が落ちる。

「国産チップを使え」という指示と「AIで米国に追いつけ」という目標は、少なくとも短期的には矛盾している。

「買っていいよ」(米国)「買うな」(中国)に挟まれたAlibaba等の担当者の困惑は、想像するだけで胃が痛い。

今回の承認が持つ意味

米中双方が「完全なデカップリング」から一歩引いている合図として読むことができる。政治的な演出として機能しているかどうかは別として・・・。

一方で、25%収益還元・米国経由出荷という条件は、中国側に「チップを監視・改ざんされるリスクがある」と解釈される余地を残しており、信頼醸成の観点では逆効果になりかねない。

本当に75万基が出荷されるかどうかは、中国政府が購入解禁に動くかどうかにかかっている。現状では「承認されたが1基も届いていない」という状況が継続中だ。

H200は2世代前のチップだ。出荷が実現する頃にはBlackwellがある程度普及している可能性もある。「遅すぎた和解」になるかどうかは、今後数か月の動向次第だろう。