■事実
K2プロジェクトとは何か
プロジェクトの立ち上げ背景には、AI機能の過剰実装・ブロートウェア・パフォーマンス低下・アップデートの不安定性という、Windows 11への継続的な批判があります。
K2の3本柱は「パフォーマンス」「品質(Craft)」「信頼性(Reliability)」であり、このいずれかが崩れると製品全体が損なわれるとMicrosoftは定義しています。
Microsoftが2025年後半に立ち上げた社内プロジェクト「Windows K2」が、Windows Centralの報道により明らかになりました。
K2は新しいOSではなく、Windows 11への継続的なアップデート・パッチを通じた改善イニシアチブです。
終了時期は設定されておらず、現行および将来のWindowsバージョンにわたって継続する長期的な取り組みとして位置づけられています。
パフォーマンス改善の具体内容
スタートメニューをWinUI 3で書き直し、最大60%の応答速度向上を見込んでいます。
WinUI 3向けに新たな「System Compositor」を開発中。UIレイテンシとメモリオーバーヘッドを削減し、高負荷時もスタートメニューとタスクバーが常に応答する状態を維持してます。
アイドル時のメモリ使用量削減を目指し、ローエンドハードウェアやゲーミングハンドヘルドでの動作改善を図っています。
社内ベンチマークでWindows 10がWindows 11より高速という結果が出ており、Microsoftはこの差を是正することを明確な目標としています。
ゲーミング性能においてはValveのSteamOSをベンチマークとして設定。同一ハードウェア上でSteamOSと同等以上の性能を、1〜2年以内に実現することを内部目標としています。
File Explorerに大幅な速度改善を施す。ファイルナビゲーションと検索の高速化、「インスタントファイル名検索」機能の追加が予定されています。
AIブロートウェアとUI改善
タスクバーの移動・リサイズ機能が復活予定です。(Windows 11で削除された人気機能)
Windows Updateの再起動頻度を月1回程度に抑制。これまでは更新のたびに再起動が求められていました。
AIタスクバーエージェントなど新たなAI統合は引き続き実施されているが、K2では不要なAI機能の削減と、コア機能の品質向上を優先するという姿勢に転換しています。
スタートメニューから広告を削除する方針です。(確認済み)
ウィジェットボードでMSNニュースフィードをデフォルト非表示にし、ウィジェットを優先表示としています。
Windows Recallと信頼の喪失
2025年4月に再リリースされた際にはWindows Hello認証・オプトイン形式・ローカル暗号化などの改善が施されたが、ユーザーの採用率は低水準にとどまりました。
2025年11月にPavan Davuluri氏(Windows & Devices担当社長)が「エージェントAI OS」構想を投稿したところ、150万回閲覧・批判的コメントが殺到。返信欄は閉鎖されました。
2025年10月のWindows 10サポート終了後も、Windows 11のシェアは2026年1〜2月に53.7%から50.73%へと低下。Windows 10のシェアは逆に42.7%から44.68%へ上昇しました。
Windows Recallは2024年に発表されたフラッグシップAI機能(PC上の操作を定期的にスクリーンショットで記録し、自然言語で検索できるもの)だったが、プライバシー・セキュリティ上の重大な欠陥が発覚し、約1年遅延しました。
セキュリティ研究者からは「マルウェアにとって宝の山」と評された初期実装のデータベース保護の不備が問題視されました。
SteamOSとの性能差(K2のベンチマーク根拠)
Lenovo Legion Go S(SteamOS版とWindows 11版)の同一ハードウェア比較テストにおいて、SteamOSが複数タイトルで大差をつけました。
Tom’s Guideの別検証では、4タイトル平均でSteamOSが約23.9%高い性能を記録。前年のROG Ally Xを使った検証(約25%差)とも一致します。
SteamOSの優位性の技術的背景として、Proton互換レイヤーの成熟、Vulkan活用、ゲーミング専用に最適化されたカーネルスケジューラ、不要なバックグラウンドプロセスの不在が挙げられます。
一方でSteamOSはカーネルレベルのアンチチートを使用するゲーム(Valorant、Fortnite等)が動作しないという制約があります。
Horizon Zero Dawn RemasteredではSteamOSがWindows 11比で最大75%高速というデータが報告されています。(XDA Developers)
Returnal(1920×1200・High設定)ではSteamOS 33fps対Windows 11 18fpsです。
Cyberpunk 2077ではSteamOS約60fps対Windows 11約46fpsです。
解説
SteamOSをベンチマークにすること自体が異例
デスクトップOSの絶対覇者だったMicrosoftが、LinuxベースのゲーミングOSをパフォーマンス目標として公式に設定した事実は、業界的に見て相当な「罪を認めたこと」に当たる。
SteamOSは2013年、MicrosoftのMS Store台頭によるSteam締め出しリスクに対抗するためValveが開発した。当初のSteam Machineは普及しなかったが、2022年のSteam Deck登場で一気に実用プラットフォームとして再評価された。
皮肉なのは、MicrosoftがSteamを守ろうとしたValveの「逃げ場作り」に、10年越しで追いかける立場になったことだ。
SteamOSが速い理由は「引き算」。ゲーム以外の機能を削ぎ落とし、バックグラウンドプロセスを最小化した結果として性能が出ている。Windows 11はその逆をやり続けてきた。
ハンドヘルドPCという「熱量とバッテリーに制約がある極限環境」で差が顕在化したことで、OSの設計思想の違いが可視化された。デスクトップでは見えにくかった問題が、ここで露わになった。
K2は「反省文」か、それとも本物の変革か
「1〜2年でSteamOSを上回る」という内部目標は、逆算すれば2026〜2027年が勝負。そのタイムラインに具体的な進捗が出なければ、また「約束だけ」で終わる。
AIブロートウェア削減は評価できるが、そもそもなぜここまで悪化させたのかの説明責任はまだ果たされていない。「やめます」という宣言よりも「なぜやったのか」の回答の方が、信頼回復には重要だ。
Windows 8→Windows 8.1という修正の前例があり、Microsoftは「やりすぎたら引き戻す」という歴史を繰り返している。K2がその流れの一部である可能性はある。
問題はRecallに象徴される「機能を押しつける文化」そのもの。個別機能の削減ではなく、「ユーザーに確認せずに実装する慣習」を変えられるかどうかが本質的な問いだ。
Windows 11が失った「当たり前」
スタートメニューへの広告掲載は、有料OSでやることとして本来あり得ない水準の施策だった。それを削除することが「改善」として報道される現状は、やや虚しい。
Windows 10より遅いという問題は、ハードウェアの進化がOSの劣化を隠蔽してきたために表面化が遅れた。K2でその隠蔽が剥がれた状態を直視している、とも言える。
Windows 11発売当初から指摘されていたタスクバーの移動・リサイズ不可という制限が、約4年越しに解消予定というのも、優先順位の歪さを示している。
ハンドヘルドPCがMicrosoftに突きつけた現実
Microsoftが密かにFile Pilotというサードパーティ製エクスプローラーをベンチマークにしているとも報じられた。個人開発者のソフトが大企業の開発目標になるとは、なかなかに皮肉な状況だ。
ROG Ally、Legion Go、Steam DeckなどのゲーミングハンドヘルドPCが普及したことで、「WindowsとSteamOSを同じ筐体で比較する」という直接対決の場が生まれた。
この市場で旗色が悪くなったことが、K2のゲーミング改善を加速させた最大の動機ではないかと見ている。性能差が「数字の話」ではなく「消費者が実機で体感する話」になった点が大きい。
画像プロンプト
画像プロンプト1(冒頭ヘッダー):
【英文】concept art digital illustration, Windows OS overhaul project, sleek modern interface, performance optimization theme, blue and dark teal color palette, futuristic minimalist UI elements, clean desktop environment, gaming performance metrics glowing on screen, cinematic lighting, high contrast
【日本語】Windows OSのパフォーマンス改革プロジェクトをイメージしたコンセプトアート。青とダークティールの配色で、洗練されたミニマルなUI要素、ゲーミング性能メトリクスが発光表示されるシーン(参照用)