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NVIDIAの保証請求件数は、16ピンコネクタ搭載GPUの発売以来1000%増加した。

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■事実

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映していない可能性がありますのでご注意ください。

概要

保証業界の専門ニュースレター「Warranty Week」が、NVIDIAとAMDのGPU保証費用の急激な上昇を報告しました。

調査対象は両社が公開している財務報告書(公開データ)であり、GPUチップを搭載したすべての「ディスクリートGPU」製品が対象——ゲーム用グラフィックカード、ワークステーション向け、AIアクセラレーター、ノートPC用GPUを含みます。

NVIDIAの保証費用の推移

NVIDIAの保証請求率(売上高に対する比率)は2025年Q1は0.17%だったが、Q4には0.90%に達しました。

2024年Q4との比較では請求率が9倍増加しています。

2022〜2024年のNVIDIA保証請求(実払い額)は概ね年間$100M前後で推移、2024年は$81Mでした。

2025年の保証請求支払い総額は$894Mとなり、2024年比で約1,000%(10倍強)の急増しています。

2025年の四半期別内訳:Q1 $147M、Q2 $80M、Q3 $156M、Q4 $511M——Q4が突出しており、年間合計の約57%が最終四半期1期に集中しています。

 

NVIDIA保証積立金(将来の保証費用引当)

2023年の積立金は$109M → 2024年は$948M(約8倍)→ 2025年は年間$2.59Bに達しました。

2025年の四半期別積立:Q1 $428M、Q2 $870M、Q3 $220M、Q4 $1.07Bでした。

保証積立金(accrual)は「将来の保証対応費用として今期に計上する見積額」であり、実際の支払いとは別数値です。

 

AMDの保証費用の推移

AMDの保証請求支払い:2024年 $110M → 2025年 $238M(約2/3増、約116%増)でした。

AMDの積立金:2023年 $126M → 2024年 $213M → 2025年 $358Mです。

AMDの請求率:2024年 0.43% → 2025年 0.69%でした。

費用増加の要因①:16ピンコネクター問題

16ピン電源コネクター(12VHPWR → 12V-2×6)の溶損・発火問題は、RTX 4090(2022年発売)の発売直後から報告が始まった

RTX 4090のTGP(総消費電力)は450Wで当時最大級だったが、コネクターの不完全な接触による電流集中が溶損を引き起こした

NVIDIAは当初「ユーザーの挿し込み不足」としたが、その後新規格「12V-2×6」コネクターに移行した

2025年1月発売のRTX 5090はTGP 575Wに増加したが、12V-2×6コネクターを採用しても同様の溶損・発火報告が継続している

ドイツのオーバークロッカーder8auerの計測では、12VHPWRコネクターのPSU側が最高150℃、GPU側が90℃近くに達することが確認されている

MSIが採用した黄色チップ付きコネクターも問題を根本的には解消できていないと報告されている

RTX 5080など他のBlackwellシリーズGPUでも同様の損傷事例が報告されている

費用増加の要因②:DRAM価格高騰と関税

2025年Q4は米国の関税問題が最も深刻な時期に重なりました。

GPU本体の価格自体が上昇しており、交換対応のコストも連動して増大しています。

2025年Q4時点でDRAM価格が急騰、AI向け需要による供給逼迫から、2025年初頭比で最大4倍程度に上昇したとされています。

保証対応で修理・交換を行う際、部品調達コスト(DRAMを含む)が増大しています。

 

市場環境の背景

AIBパートナー(ASUS、MSI、Gigabyte、PowerColor、Sapphire、Zotacなど)は独自の保証も提供しており、NVIDIAとAMDの公表数値はチップメーカー側分のみを反映しています。

2025年を通じてNVIDIAのディスクリートGPUシェアは90〜94%水準(Jon Peddie Research調べ)、AMDは5〜7%となりました。

AIブームによるGPU出荷台数の増加が保証費用増加の一因でもあります。(出荷が増えれば絶対額は増える)

 

解説

$81M → $894Mという数字の意味

売上が伸びれば保証費用も多少増えるのは当然だが、請求「率」まで0.17%→0.90%と上昇しているため、「たくさん売れたから増えた」では説明しきれない。

AMDも増加しているが増加率は2/3程度であり、NVIDIAの1,000%とは質的に異なる。コネクター問題を抱えていないAMD GPUとの差が数字に出ている。

単純な10倍増ではなく「ビジネス上の意思決定を迫る構造的な異常値」として読む必要があるだろう。

積立金$2.59Bの示すもの

  • 「過去の請求を処理した」のではなく、「今後さらに大規模な請求が来る」という内部見通しに基づいた先行計上
  • RTX 5000シリーズはほとんどがまだ保証期間内(1〜3年)であり、今後の請求増加を見越している可能性が高い
  • Q2の$870Mという積立は特に注目。RTX 5090が1月末に発売されて数ヶ月後の時点での計上であり、問題の深刻さが社内で認識されていたと読める

コネクター問題は「改善」ではなく「継続」

「コネクターが150℃まで上がる」という事実を指摘したのがder8auerというオーバークロッカーがドイツ人というのは、なんとも示唆深く、ある意味「熱さにいちばん厳しい国の人」が測定したということになる。

このまま次世代(RTX 6090?)がさらにTGPを引き上げれば、同じ問題が繰り返される可能性がある。

12V-2×6への移行は「根本解決」ではなかった。電力設計の余裕(マージン)が不十分なままコアデザインが踏襲された。

「差し込み方が悪い」という説明はRTX 5090でも繰り返されたが、週単位で損傷報告が出続けている現実と整合しない。

ASUSは個別ピンの温度を監視するセンサーを5090に搭載したが、これは問題が「あることを前提とした」対処であり、根本解決ではない。

 

複合要因が最悪のタイミングで重なった

1件の保証修理あたりのコストが大幅に増えた「コスト増悪タイミング」と、コネクター問題による「件数増加タイミング」が重なった結果がQ4 $511Mの突出している。

これはNVIDIAの意図とは無関係な外部コスト要因でもあり、問題の全量をNVIDIAの設計責任だけに帰着させるのは単純化しすぎかもしれない。

DRAMの4倍値上がり+関税コスト増加+GPU本体価格上昇が、ちょうど2025Q4に集中した。

消費者にとっての含意

「高い買い物には延長保証をつけましょう」という結論になるのが悲しいが、現時点では現実的なアドバイスだ。

10万円を超えるGPUを購入しても、コネクター損傷が起きた場合は修理期間中PCが使えなくなる。

「保証があるから安心」と言えるかどうかだが、設計上の問題が解消されていなければ、修理品が戻ってきても同様のリスクを再度抱える。

 

安定性のある枯れた技術というものがいかに安心できるのかがよくわかる統計だろう。

新しいもの、性能の良いものが必ずしも優れているとは限らないという事実を端的に裏付けている事例だ。

特に電源にかかわるものに関しては慎重に注意深く判断することが必要だ。

過剰にメーカーに阿ると判断を誤る。

今回の統計はそういう意味で非常に貴重なデータだと思われる。

 

データ表

NVIDIAとAMD 年間保証請求額比較(単位:百万ドル)

NVIDIA 保証請求 AMD 保証請求
2022 約100(推定) 記載なし
2023 約100(推定) 記載なし
2024 81 110
2025 894 238

NVIDIA 2025年 四半期別 保証請求・積立額(単位:百万ドル)

四半期 保証請求(実払い) 保証積立(引当計上)
Q1 2025 147 428
Q2 2025 80 870
Q3 2025 156 220
Q4 2025 511 1,070
年間合計 894 2,590

NVIDIA・AMD 保証請求率の推移

期間 NVIDIA AMD
2024年(通年) 0.17%(Q1相当) 0.43%
2025年Q1 0.17%
2025年Q2
2025年Q3
2025年Q4 0.90%
2025年(通年) 0.69%

時系列グラフ

グラフタイトル:NVIDIAとAMDのGPU年間保証請求支払額(単位:百万ドル)