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デルのCEOは、AI向けメモリの需要が2028年までに「想像を絶するレベル」まで爆発的に増加し、「言い値でなければ買えなくなる」と言った。

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■事実

マイケル・デル氏の発言:Bank of Americaイベント(2026年4月7日)

Dell Technologies CEOのマイケル・デル(Michael Dell)が、Bank of Americaが主催するイベントでAIメモリ需要に関する見通しを述べました。

発言は「AIインフラにおいてアクセラレーター1台あたりのメモリ容量とシステムの展開規模が同時に拡大しており、メモリ需要の合計は約625倍に増加する構造が形成されつつある」というものです。

625倍の根拠は①アクセラレーター1台あたりのメモリ容量が25倍に増加、②データセンターへのアクセラレーター導入規模が25倍に拡大の掛け算(25×25=625)です。

①の根拠は2022年時点の主力アクセラレーターだったNVIDIAのH100はHBMを80GB搭載、2028年のVera Rubinでは最大2TBに達するという試算(約25倍)です。

②の根拠はAIデータセンターへのアクセラレーター展開台数が同期間に25倍規模になるという見通しです。

デルは「メモリ供給の拡大には数年かかるが、現在のAIインフラ需要は減速していない。われわれはまだテクノロジー採用の初期段階にいる」とも説明しました。

 

625倍という数字の注意点

Vera Rubinが搭載できる最大2TBというスペックを使った計算であり、実際の平均的な1ラック構成は576GB HBM4にとどまるという指摘もあります(PC Gamer)

それでも「控えめに見積もっても180倍規模」という試算も出ており、いずれにせよ需要の拡大幅は過去に例がない規模となります。

2022年基準(H100時代)からの比較であり、現時点ではなく将来の推計値です。

供給側の現状

HBM(高帯域幅メモリ)を製造できるのは世界でSK hynix・Samsung・Micronの3社のみとなります。

Micronは2025年12月の決算で「コア顧客の需要の約55〜60%しか満たせていない」と認め、不足状態が2026年以降も続くと警告しています。

新規のDRAM Fabが稼働するのは2027年後半以降が大半。新設発表から量産開始まで18〜24ヶ月かかるのが通例です。

TrendForce予測では2026年Q2のDRAMコントラクト価格は前四半期比58〜63%上昇しています。

SK hynixはHBM・DRAM・NANDの生産キャパシティが2026年分はほぼ完売済みと表明済みです。

HBMだけの問題ではない

AI向けインフラはHBMだけでなく、LPDDR5X(ノートPC・スマートフォン向け)やNANDフラッシュも大量に消費します。

NVIDIA GB200 NVL72の1ラック・コンピュートトレイ1台あたりのLPDDR5X搭載量は480GB(スマートフォン1台の約30倍)にも上ります。

メーカー各社はHBMやサーバー向け高付加価値製品に生産ウェーハを振り向けており、コンシューマー向けDRAM・LPDDR5Xの供給がその分圧迫されています。

IDCは2026年のDRAMとNAND供給成長率はそれぞれ前年比16%・17%と過去平均を下回る見込みです。

データセンターが世界のメモリチップ生産量の約70%を消費しているとの推計もあります。

ハイパースケーラーの動向

ハイパースケーラー(クラウドを運営する巨大テック企業)は最長5年の長期メモリ供給契約をメーカーと締結し始めており、売り手にとって有利な条件を受け入れてでも供給を確保しようとしています。

OpenAIのStargateプロジェクト単独で月間90万枚のDRAMウェーハ相当の需要が生じる可能性があるとの試算があります。(SK hynixの四半期HBM売上全体に匹敵する水準)

デルは「競合に遅れることへの恐怖が購買行動を動かしている」と分析しています。

MicronはHBM4を含む2026年カレンダー年の生産分をほぼ事前に価格・数量確定済みと表明しています。

TurboQuant騒動という背景

2026年3月24日、GoogleがAI推論時のKVキャッシュ(過去の計算結果を保持する作業用メモリ)を最大6分の1に圧縮するアルゴリズム「TurboQuant」を発表しました。

これを受けてMicron株が48時間で約14%下落、SK hynixやSamsungも5〜6%超下落する株式市場での売りが発生しました。

TurboQuantはKVキャッシュという推論時の一層のみを対象としており、モデルの学習・ファインチューニング・モデルウェイト保存には影響しないとの分析が複数のアナリストから出ていいます。

Morgan Stanley、Mirae Asset Securitiesなど複数の証券会社が「TurboQuantの影響は過度に織り込まれた」との見方を表明しています。

デルの発言はこのTurboQuant騒動後の市場の悲観論に対して「需要のスーパーサイクルは変わらない」と正面から反論しました。

 

解説

625倍という数字の読み方

25×25という計算はきれいすぎるほど単純で、「数十倍」や「百倍超」のオーダーが間違っている可能性は低く、方向性として受け取るべき数字だろう。

ただし、メモリが足りなくて買えない状況が数年続くという本質的なメッセージと解釈できる。

Vera Rubinの最大スペック2TBをそのまま使っているという批判は正当だが、「実際の運用は576GB」としても25倍→約7倍となり、デプロイ規模の25倍と合わせれば175倍で、それでも「想像を絶する」水準となる。

 

ジェヴォンズのパラドックスとTurboQuant

ジェボンズのパラドックス(逆説)とは、技術進歩で資源(エネルギーなど)の利用効率が高まっても、コスト低下と需要拡大により、結果的に総消費量が増加してしまう現象のことです。

結論から書くとTurboQuant騒動で株を売ってしまった人は、Netflixが動画圧縮を改善したとき「動画需要が消える」と思った人に近い。

TurboQuantで「メモリ効率が6倍になったらメモリが要らなくなる」は短絡的で、ストレージが安くなったら人類はより多くのデータを保存するようになったという歴史の繰り返し

DeepSeekの時と同じ構造で、「効率が上がる→需要が下がる」ではなく「効率が上がる→より多くのユーザーがより長いコンテキストでAIを使う→総需要は増える」ということだ。

 

コンシューマーへの波及という本質的な問題

IDCは2026年のPC市場が11%以上収縮すると予測しており、その要因の一つがメモリ価格高騰である。

HBMが不足しているという話は「データセンターの話」と感じがちだが、同じラインでLPDDR5Xも作っているため、コンシューマー向けPCのメモリ価格にも直撃する

PC・スマートフォン向けのメモリが値上がり・品薄になるのは「AIが豊かになるための税金」を消費者が払わされている構造だ。

「いくらでも払う」ハイパースケーラーの問題

5年間の長期供給契約を喜んで結ぶ買い手がいる時点で、売り手(メモリメーカー3社)の影響力は圧倒的だ。

新規供給が2027年後半まで出てこない以上、この構造は少なくとも数年は続くだろう。

競合に遅れることへの恐怖が合理的な判断を上書きしており、これはAIインフラへの「チキンレース」的投資の一形態

AIが賢くなるたびに、メモリは値上がりを続けゲーマーの財布を圧迫する。

嫌でもなんでもこの「チキンレース」の影響を受けざるを得ない。