■事実
コア構成が42→44に変更
Intelの次世代デスクトップCPU「Nova Lake-S」について、信頼性の高いリーカーJaykihnがXに新たな情報を投稿した(https://x.com/jaykihn0/status/2040172580200443914)。
デュアルコンピュートタイル構成のフラッグシップモデルが、従来の42コアから44コアに変更されることが明らかになった。
新しい構成は、Coyote Cove P-Core 16基(8×2タイル)、Arctic Wolf E-Core 24基(12×2タイル)、LPE(低電力効率)コア4基の合計44コアとなる。
変更前の42コア構成は、片方のタイルにP-Coreを7基搭載する設計だった。 1タイルあたり7基という半端な数は技術的に不自然であり、今回の変更で各タイルがP-Core 8基×E-Core 12基という対称的な整数構成に整理された。
ただしJaykihnは「予備的な情報」と断ったうえで、元の6P+12Eタイル構成を使ったロックド(非K)版bLLCモデルが別途登場する可能性についても言及している。
bLLC(Big Last Level Cache)とは
bLLCはIntelがコンピュートタイルのシリコン内部に直接統合する大容量L3キャッシュ技術だ。 AMDが「3D V-Cache」として別のキャッシュチップレットを垂直に積み上げるのとは異なり、ダイへの直接統合という設計を取る。
AMDの3D V-Cacheは現行のフラッグシップでも片方のCCDにしか搭載できないため、キャッシュへのアクセスが非対称になる問題がある。 Nova Lake-SのbLLC搭載デュアルタイルモデルは両方のコンピュートタイルにbLLCが載るため、この非対称問題が発生しない。
リーク情報によれば、bLLC搭載版のNova Lake-Sはゲーミング性能でArrow Lakeを30〜45%上回ると記載された社内文書が存在するとされる。 標準(非bLLC)版のNova Lake-Sでもゲーミングで10〜15%の向上が見込まれている。
bLLC搭載ラインアップ
現時点で判明しているNova Lake-SのbLLC搭載モデルは以下のとおりだ。
| 構成 | コア数(LPE含む) | bLLC容量 | タイル数 |
|---|---|---|---|
| 2×(8P+16E) | 52コア | 288MB(144×2) | デュアル |
| 2×(8P+12E) | 44コア | 288MB(144×2) | デュアル |
| 8P+16E | 28コア | 144MB | シングル |
| 8P+12E | 24コア | 144MB | シングル |
非KモデルへのbLLC展開
これまでbLLCはKシリーズ(アンロックモデル)のみの搭載と報じられてきた。 しかしJaykihnの最新情報では、一部の非KモデルにもbLLC搭載版が登場する可能性が浮上した。
bLLC搭載非Kモデルは、通常のKシリーズよりも上位のプレミアムセグメントに位置づけられる見通しだ。
42コア→44コアへの変更で余剰となった6P+12E構成のコンピュートタイルは、bLLC(144MB)を搭載したまま廃棄されるのではなく、非K向けゲーミングCPU用シリコンとして転用される計画があるとも伝えられている。 AMD次世代X3Dシリーズへの対抗軸をメインストリームまで広げる戦略とも読める。
Nova Lake-S vs Arrow Lake-S 主要スペック比較
| 項目 | Nova Lake-S | Arrow Lake-S |
|---|---|---|
| 最大コア数 | 52 | 24 |
| 最大スレッド数 | 52 | 24 |
| 最大P-Core数 | 16 | 8 |
| 最大E-Core数 | 32 | 16 |
| 最大LP-Eコア数 | 4 | 0 |
| 最大キャッシュ(L2+L3) | 160〜320MB | 76MB |
| 最大bLLCキャッシュ | 144〜288MB | 非対応 |
| DDR5対応(1DPC 1R) | 8,000MT/s | 6,400〜7,200MT/s |
| PCIe 5.0レーン数(最大) | 36 | 24 |
| PCIe 4.0レーン数(最大) | 16 | 4 |
| ソケット | LGA 1954 | LGA 1851 |
| 最大TDP(PL1) | 125〜175W | 125W |
| 最大消費電力 | 約700W(デュアル)/約350W(シングル) | 約400W |
| 発売時期 | 2026年下半期 | 2025年上半期 |
LGA 1954ソケットと複数世代継続
Nova Lake-Sは新ソケット「LGA 1954」を採用した初のデスクトップCPUファミリーとなる。
対応マザーボードはZ990・Z970・B960などの900シリーズチップセットを搭載した製品が予定されている。 Noctua(ノクチュア)など一部クーラーメーカーはすでにLGA 1954対応を公表している。
IntelはこのソケットをNova Lake以降の複数世代(Nova Lake、Razer Lake、Titan Lake、Hammer Lakeなど)にわたって継続使用する方針を示している。 これはLGA 1851をArrow Lake(事実上1世代)で終了させた方針からの転換であり、AMDがAM5ソケットで複数世代をサポートしてきた戦略に近い姿勢だ。
Arrow Lake(LGA 1851)からのアップグレードには、CPUとマザーボード両方の交換が必要となる。
発売時期
Nova Lake-Sは「Core Ultra 400」シリーズとして2026年下半期の投入が予定されている。 Intel CEOのリップ=ブー・タン氏はNova Lakeの登場でデスクトップCPU市場の首位をAMDから奪還すると公言している。
一部情報では、リテール販売開始がCES 2027(2027年1月)以降にずれ込む可能性も指摘されている。
なお今回の情報はリーカーJaykihnによる速報であり、Intelの公式発表ではない。
解説
42コアが44コアになっても慌てなくていい
正直、42コアって時点でちょっと変だとは思っていた。
2タイル構成でP-Coreが1タイルあたり7基(14÷2)というのは、整数で割り切れない中途半端な数字だ。 今回の44コアへの変更は性能アップというより「設計の歪みを直した」に近く、純粋なグレードアップとして興奮するのは少し早い。
とはいえ、48コア(52コアのフル構成)から44コアへの削減があった場合の話ではなく、もともと変則だった42コアを正規構成に揃えたという理解が正確だ。
「両タイルに均等搭載」は地味に重要なポイント
bLLCの最大の強みは、デュアルタイル構成で両方のコンピュートタイルに均等搭載される点だ。
AMDの3D V-Cacheは現在、複数CCD構成でも片方にしか積めないため、どちらのコアにタスクが振られるかでゲーミング性能に差が出る問題がある。 OSがうまくスケジューリングしてくれれば問題ないが、最適化が不十分なゲームではキャッシュの恩恵を十分受けられないケースも出てくる。
IntelのbLLCはこの非対称問題が起きない構造なので、「均一に速い」という体験につながりやすい。 理論上はフラットな性能が期待できるが、18AとTSMC N2Pを組み合わせた複雑な製造フローが歩留まりにどう影響するか次第で、価格に跳ね返るリスクもある。
余り物を活かす非K bLLC戦略
42→44コア変更の副産物として生まれた余剰6P+12Eタイルを、bLLC付きのまま非K向けゲーミングCPUに転用するという発想はなかなか合理的だ。
「捨てるには惜しい144MBキャッシュ付きシリコン」を活かしながら、AMD X3Dへの対抗軸をメインストリームまで広げられる。 一石二鳥どころか一石三鳥くらいある。
ただし、bLLC搭載非KモデルはKシリーズより「上位プレミアム」に位置づけられるという。 つまり「オーバークロックできないのに、K版より値段が高い」という少し不思議な立場になる可能性がある。 ゲーミング特化の割り切った用途なら需要はあると思うが、価格が強気すぎると「ならKでいいじゃないか」という話になりかねない。
ソケット長寿命化は素直に歓迎
LGA 1954を複数世代で継続するというIntelの方針は、ユーザー目線では歓迎したい変化だ。
LGA 1851がArrow Lakeでほぼ終わりそうな雰囲気になっていることを考えると、「今度こそ長く使える」という安心感は重要だ。 AMDがAM5で実際に複数世代サポートを継続している実績があるだけに、Intelも同じ土俵に立とうとしている格好だ。
もっとも、ロードマップ上の「Razer Lake」「Titan Lake」「Hammer Lake」がすべて市場に出るかどうかは別の話で、かつてのMeteor Lake-Sのように計画が変更されることもある。
発売は2026年末から2027年初頭が現実的
「2026年下半期」という予定はあるが、CES 2027以降にずれ込む可能性も指摘されている。
Intelが「AMDから首位を取り返す」という言葉は、ここ数世代で何度か聞いた気がする。 Nova Lakeでそれが実現するかどうかは、Panther Lakeのモバイル市場での受け入れ状況を見てから判断しても遅くはない。
それよりも個人的に気になるのは、bLLC搭載モデルの実売価格だ。 双方のタイルにキャッシュを積む分、製造コストは確実に上がる。 AMD X3Dシリーズとガチンコ勝負するなら「高性能かつリーズナブル」が理想だが、インテル製品の歴史はしばしば「高性能かつ高価格」の方向に収束してきた。
Intelが本気で市場を取り返したいなら、価格設定こそが最大の勝負どころになるだろう。
IntelはAMDの躍進を止められるか
読者が一番気になるところはこれでIntelがAMDの躍進を止められるのかというところだろう。 IntelのCEOであるタン氏はそうなると考えているようだ。
bLLCやPコアのIPCも大きく向上するとされており、先行するリーク情報ではZen 6を上回るとされている。 次はAMDも2nmか3nmで製造される見込みとのことで、お互い拮抗した状態になるだろう。 ここで優劣がはっきりつくということもあるかもしれない。
しかし、残念ながらPCパーツはDRAM需要やホルムズ海峡閉鎖による輸送費の高騰など、価格上昇圧力にさらされており、手軽に購入できるという状況ではなくなりつつあるのが残念なところだ。