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Radeon RX 9070シリーズ、ドイツでMSRP割れ──メモリ不足が続く欧米市場で明暗分かれる

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■事実

ドイツで初のMSRP割れ、RX 9070が€539まで下落

Radeon RX 9000シリーズのミドルレンジ2モデル、Radeon RX 9070とRadeon RX 9070 XTが、ドイツ市場においてついに希望小売価格(MSRP)を下回る価格で販売され始めた。

ドイツの価格比較サービスGeizhalsの最新リスト(2026年4月時点)によると、Radeon RX 9070の最安値はASUS Prime Radeon RX 9070 OCで€539となっており、欧州MSRP€629(VAT 19%込み)を€90下回っている。

複数のRX 9070モデルが€600を切る価格帯に並んでおり、数週間前は同モデル群が€600超で販売されていたことを踏まえると、急速な価格調整が起きていることがわかる。

Radeon RX 9070 XTについても同様の動きがある。 最安値はASRock Radeon RX 9070 XT Challengerで€640となっており、欧州MSRP€689に対して€49下回っている。 複数モデルが€640〜€650のレンジに収まっており、数週間前はこの価格帯が€700近くにあったことを考えると、下落幅は50〜60ユーロに達する。

TechPowerUpの報道によれば(https://www.techpowerup.com/347952/amd-radeon-rx-9070-and-rx-9070-xt-fall-below-msrp-in-germany)、メモリ不足が始まって以来、RDNA 4のカードがMSRPを下回るのはドイツではこれが初めてのことではないが、今回は複数の小売業者がこの水準を維持しており、一時的な値下げとは性質が異なる。

RX 9070シリーズのスペック

Radeon RX 9070シリーズは2025年3月6日に発売されたAMDのRDNA 4アーキテクチャ採用製品だ。

製造プロセスはTSMC 4nm、GPUダイはNavi 48、VRAM 16GB GDDR6、接続はPCIe 5.0 x16という仕様が両モデルに共通する。

項目 RX 9070 XT RX 9070
ダイ Navi 48 XTX Navi 48 XT
シェーダープロセッサ 4,096基 3,584基
レイトレーシングアクセラレーター 64基 56基
テンソルコア 128基 112基
ブーストクロック 最大2,970 MHz 最大2,520 MHz
TDP 304 W 220 W
VRAM 16 GB GDDR6 16 GB GDDR6
欧州MSRP €689 €629
米国MSRP $599 $549

RX 9070 XTはGeForce RTX 5070(米国MSRP $549)に対する競合として位置づけられており、$50安い設定でより多くのVRAMを備えるという価値提案が、当初から注目されていた。 ただし、実売価格が長期間にわたってMSRPを大幅に上回ったことで、カタログ上の価格優位が現実には機能しない状況が続いていた。

米国市場は依然として50%超のプレミアム

対照的に、米国市場のRDNA 4価格は依然として高止まりが続いている。

PCPartPickerのトラッキングデータによれば、RX 9070の現在相場は$810〜$820、RX 9070 XTは$880〜$890で推移しており、それぞれのMSRP $549と$599に対して47〜50%のプレミアムが乗った状態だ。

Amazon USでは一時的にRX 9070 XTが$700以下に下落する場面があったが、それはごく短期間にとどまり、継続的な価格水準には至っていない。

PCPartPickerはAmazon USのデータを含まないことに留意が必要だが、それを加味しても実勢価格がMSRPを大幅に超過していることに変わりはない。

米国では価格が上昇トレンドを維持しており、ドイツのような供給過多による価格調整は起きていない。

メモリ不足とGDDR6高騰の構造

今回の価格動向の根本的な原因は、GDDR6メモリの調達コスト高騰にある。

2025年を通じて、AI向けデータセンターの急拡大がHBM(High Bandwidth Memory)への需要を爆発的に引き上げた。 Samsung、SK Hynix、Micronの3社が世界DRAM市場の90%以上を握る中、各社はより利益率の高いHBMとサーバー向けDDR5への生産ラインを優先的に拡充した。 この結果、コンシューマGPU向けのGDDR6生産への設備配分が相対的に縮小し、市場価格が上昇した。

GDDR6の調達コストは2025年を通じて30〜60%程度上昇したとされており、VRAMがBOM(部品調達コスト)の大きな割合を占める16GB搭載モデルへの影響は特に大きかった。

一方で、AMDは2025年末まで固定価格の長期調達契約でGDDR6メモリを確保していたとされる。 しかし2026年以降の再交渉ではスポット市場価格に近い条件での調達を余儀なくされており、実際に2026年1月からAIBパートナー向けの出荷価格に段階的な値上げが実施されている。 NVIDIAも同様の圧力を受けており、2026年2月以降に価格改定が行われたと複数媒体が報じている。

ドイツでの値下がりの背景

ドイツで価格が下落した直接的な要因は、新たな在庫ロットが市場に一気に流入し、一時的に供給が需要を上回ったことと見られている。

GPUメーカーはGDDR6メモリをダイと一体化したキットとしてAIBパートナーに供給しており、メモリ価格の変動は製品単価に直接反映される。 今回流入したロットは、2025年の長期契約価格で調達されたGDDR6を使用している可能性が高く、これが在庫として積み上がった後に市場に放出された形だ。

また、AMD RDNA 4ラインナップの下位に位置するRX 9060 XTシリーズの投入タイミングも重なっており、RX 9070への需要が分散することで在庫消化が促進されているとも考えられる。

ドイツはもともとGPU市場において供給感度の高い地域で、価格比較サービスが整備されているため、供給過多の影響が価格に素早く反映される傾向がある。

ただし今回の価格下落はドイツ国内の特定小売に限られており、欧州全域に一様に広がっているわけではない。

解説

まず素直に言う。ドイツでMSRP割れが起きていること自体は、正直かなり驚きだった。

Radeon RX 9070シリーズは2025年3月の発売直後から欧米ともに価格が高騰していた。 メモリ不足が始まってからというもの、RX 9070 XTは欧州で発売直後に€900近い値段がついた時期もある。 「RDNA 4はコスパが良い」という評価も、実売価格がMSRPの1.5倍になれば、当然ながら成立しない。

それが今や€640で買えるというのだから、ドイツのゲーマーには久々のまともなニュースだろう。

ただ手放しで喜べるかというと、少し複雑な気持ちになる。

今ドイツで値下がりしているのは、2025年の長期契約価格でGDDR6を調達した旧ロットの在庫だと考えるのが自然だ。 GDDR6の市場価格は2026年時点で大きく上昇しており、2026年以降に製造・出荷される新ロットにはそのコストがそのまま乗ってくる。 「メモリ不足が解消されたから安くなった」という話ではなく、「安く作れた旧ロットが消化されている」という話だ。 つまり、今の価格が底値であって、これから再び上がる可能性がある。

米国の状況は、もはや欧州と別の市場として理解すべきだ。 $549のカードが$820で売られているのは「多少高い」というレベルではない。 関税影響や流通構造の差異に加え、米国では在庫ロットの投入タイミングが欧州と異なっている可能性がある。 ドイツの価格回復が米国に波及するという楽観シナリオは考えにくい。

個人的に注目しているのは、RX 9060 XTとの関係だ。 ラインナップに下位モデルが加わることでRX 9070シリーズの需要が分散し、在庫が積み上がりやすくなる。 ドイツの小売がそれを見越して先回りで値下げを始めた可能性は十分にある。 市場合理的な動きではあるが、それが継続するかどうかは別問題だ。

そして今回の価格データは、AMDのちょっとだけカットダウンされたモデルは人気がないの法則・・・この法則は筆者が勝手に唱えているものだが、今回もそれを裏付ける結果になった。 RX 9070 XTがMSRP比€49の値下がりにとどまっているのに対し、非XTのRX 9070はMSRP比€90も下落している。 もともとのMSRP差が€60しかないにもかかわらず、実売ではその差が逆転・拡大している──これは需要の非対称性を如実に示している。 恐らくAMDもその傾向を織り込んで非XTの生産数を少なめに調整しているとは思うのだが、それを差し引いてもやはり人気がなさすぎる。 結局「ここまでお金を出すならXTを買おう」となってしまうのだろう。 これがエントリークラスGPUのような、グレード差が大きいモデルなら話は別だ。価格帯が十分に離れていれば、安い方にも独自の存在意義が生まれる。 しかしRX 9070のように「ちょっとだけ削った」モデルは、価格と性能の両方でXTに負けてしまう場所に立ってしまう。

日本市場については、欧州の価格動向がそのまま参考にはならない。 円安と国内流通コストが別途乗るため、構造的に高止まりしやすい市場だ。 Steam硬件調査においてRX 9070 XTが上位に入らないのは、PCバン(韓国のゲームカフェ)による集計偏重の影響もあるが、実態としてもAMDのミドルレンジが欧米に比べて日本で普及しにくい価格環境にある。

結局のところ、言えることはシンプルだ。 メモリ価格の上昇トレンドが2026〜2027年にかけて継続する限り、「待てば下がる」という従来の常識が通用しない局面が続く。 ドイツの値下がりは構造的な回復の始まりではなく、旧在庫の消化にすぎない可能性が高い。

買うなら今が窓かもしれない──とだけ言っておく。