自作PCユーザーがゲーム用PCの解説をします

自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド

Steam Hardware Survey 2026年3月版:Linux史上初の5%超え、システムRAMは16GBが32GBを逆転

投稿日:

■事実

Linux、史上初めて5%の壁を突破

Valveが2026年3月のSteam Hardware Surveyを公開した。

最大のトピックはOS構成比の大幅な変動で、Linuxシェアが前月の2.13%から一気に5.33%へと急上昇し、Steam調査史上初めて5%を超えた。

同期間にWindowsは92.33%(前月比-4.28%)、macOSは2.35%(+1.19%)となった。

LinuxはmacOSの2倍以上のシェアとなり、順位としてはWindows・macOSに次ぐ3位となっている。

Linux内訳ではArch Linuxが0.34%でトップ、Linux Mint 22.3が0.27%で続く。

SteamOS(Steam Deck搭載OS)はLinux全体の24.48%を占め、最大の単一Linuxエントリとなっている。

Linuxユーザー内のCPUベンダー構成はAMDが67.48%、Intelが32.51%で、AMD優位が明確になっている。SteamOSがAMDカスタムAPU搭載のSteam Deck由来であることが主因とみられる。

Linux急上昇の背景:中国語ユーザーの調整

この急激な変動の背景には、言語構成比の大幅な変動がある。

2月のSurveyでは旧正月の影響で簡体字中国語ユーザーのシェアが異常に増加していたが、3月には簡体字中国語が-31.85%(22.75%)へと急落、英語が+16.82%(39.09%)へ急上昇した。

この中国語ユーザー比率の急激な低下が、相対的にLinuxシェアを押し上げた可能性が高いと分析されている。

Linuxデータの一部には分類不明の項目も見られており、Valveが4月に数値を修正する可能性が指摘されている。

なお今回の調査ではWindows 10から11への大規模な移行も観測されており、Windows 11が+10.57%(66.85%)、Windows 10が-14.89%(25.36%)と大きく変動している。

Windows 10のサポート終了(2025年10月)が移行の加速に影響したとみられており、今後もWindows 11へのシフトが続く見通しだ。

GPUシェア:RTX 3060が首位に返り咲き

GPU構成比は2月の異常値(旧正月バイアスによるRTX 5000シリーズの急増)が概ね1月水準に戻った。

GeForce RTX 3060が4.1%でGPU首位に復帰した。

RTX 5000シリーズ内ではRTX 5070が最多シェアを維持している。

NVIDIA全体のGPUシェア(統合GPU含む)は72.8%で、1年以上ぶりの低水準となった。

AMDのGPUシェアは18.5%に増加した。これは2026年初頭の水準と整合している。

AMD RDNA 4世代のRadeon RX 9070はシェア0.15%で計上されており、上位100位圏内にランクインしている。

RX 9070 XTおよびRX 9060シリーズは引き続き個別エントリとして上位リストに表示されていない。

一方「AMD Radeon(TM) Graphics」という汎用エントリが2.4%(全体9位相当)で計上されており、RDNA 4を含む複数のAMD GPUがこのカテゴリに混在している可能性がある。

ValveはSurveyにおける一部GPUのVRAM容量が誤報告されていた問題を認めており、過去数か月のデータに歪みが生じていたことも確認されている。

システムRAM:16GBが32GBを逆転

システムRAMの容量分布で、16GBが40.97%のシェアとなり、32GBの36.62%を上回った。

32GBのシェアは前月比で-20.31%の変動幅となった。

RAM価格の上昇傾向が16GB構成を選ぶユーザーの増加につながったとみられる。

DDR5メモリ価格が徐々に安定しつつある現状では、今後32GB構成が再び増加する可能性がある。

VRAM:16GBが急上昇

GPU搭載VRAMの分布では、16GB VRAMが21.53%(+3.27%)に急上昇した。

8GB VRAMが27.52%で依然として最多シェアを維持している。

システムRAMはいつでも増設可能だが、GPU換装にはより大きなコストがかかるため、VRAM容量は将来を見越した選択として重視される傾向が続いている。

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。

 

解説

Linux 5%越えをどう読むか

正直、5.33%という数字をそのまま額面通りに受け取るのは危険だと思います。

2月の調査では旧正月の影響で簡体字中国語ユーザーが大量に計上され、今月はその反動で一気に抜けた。

つまりこの3.10ポイント増の多くは、「Linuxが急増した」のではなく「中国語ユーザーの大量計上が修正された」ことによる相対的な変動です。

実際に調査サイト側も「分類不明のLinuxディストリビューション」が大量に計上されていることを認めており、4月に修正が入る可能性を示唆している。

これまでLinuxは長年2%前後を推移してきたわけで、1か月で3ポイント増えるような実態の変化が起きているとは考えにくい。

Valveが数字を修正するかどうか、来月の数値がどうなるかで判断すべきデータです。

それでも、LinuxとSteam Machineは確実に前進している

とはいえ、Linux普及が長期的に進んでいることは事実だと思います。

2024年の段階でLinuxは2%前後だったのが、今では修正後も3%台は維持できる水準になってきている。

Steam DeckとSteamOSがその牽引力になっているのは明らかで、SteamOSがLinux全体の24%強を占めているという内訳がそれを物語っています。

今後Steam Machineが本格的に普及すれば、さらなる底上げにつながる可能性はあります。

ただ、私のサイトでもLinux関連の記事はほとんど読まれないのが実情で、日本のWindowsユーザー層にとってLinuxの普及は「遠い世界の話」になっています。

Steam Hardware Survey自体の信頼性問題

RX 9070のシェアが0.15%しかない点についても、額面通りに受け取るべきではありません。

以前から指摘されていることですが、このSurveyには韓国のPC방(PCバン:ネットカフェ)が大量かつ同一ハードウェアで計上されるという構造的バイアスがあり、NVIDIAを搭載したゲーミングPC主体の韓国ネットカフェが結果を歪めています。

さらにRDNA 4カードの計測バグ問題も明確になっており、Valveは一部GPUのVRAM容量が誤報告されていた事実を認めています。

RX 9070 XTが個別エントリとして上位リストに表示されていないこと、「AMD Radeon(TM) Graphics」という汎用カテゴリに多くのAMD GPUが混入している可能性があることを合わせて考えると、RX 9070シリーズの実際の普及状況はSurveyが示す数字より相当上だと見ています。

システムRAM逆転は「物価高」のリアルな反映

16GBが32GBを逆転した件は、データとして非常に興味深いと思います。

2023〜2024年頃のDRAM価格は相対的に安定しており、「どうせなら32GB」という選択が増えていた時期がありました。

それが今年に入ってRAM価格が上昇したことで、「16GBでとりあえず」という選択に揺り戻しが起きている。

円安・物価高の環境下でユーザーが明確にコストを意識し始めているということで、GPUのVRAMが16GB志向を強める一方で、システムRAMは値段に敏感になっている、というちぐはぐさが面白い。

VRAMはGPUごとでしか増やせないから「最初から16GB」、でもシステムRAMはあとで足せるから「16GBで妥協」——という合理的な判断が数字に出ているのかもしれません。

Windows 10 EOLの影響も見逃せない

今回の調査でもう一つ注目すべきは、Windows 10から11への移行幅の大きさです。

Windows 10のサポートは2025年10月に終了しており、その余波が今になって数字に表れてきた形です。

Windows 11が10.57ポイント増(66.85%)、Windows 10が14.89ポイント減(25.36%)という変動幅は単月としては異常に大きく、Surveyの計測変動が絡んでいる可能性もありますが、EOL後のアップグレード圧力が実際に効いているのは確かでしょう。

Windows 11への不満が大きいにもかかわらず、多くのユーザーがサポート切れのOSを使い続けるリスクを選ばなかったということでもあります。

一部ではLinuxへの乗り換えを検討した層もいたはずで、今月のLinuxスパイクにわずかながら影響した可能性は否定できません。

Steam Machineへの道:「お前が始めた物語だろう」

そもそもSteamOSがここまで育ってきた背景を考えると、この数字は単なるLinux普及の話ではありません。

もともとValveがSteamOSとSteamプラットフォームの独自路線を育て始めた直接の動機は、MicrosoftがMicrosoft StoreとXboxブランドをWindowsプラットフォーム全体に水平展開しようとしてきたことへの対抗策でした。

そのValveの取り組みがSteamOSを生み出し、SteamOSがBazziteのようなゲーミング特化ディストリビューションの土台になり、気づけばLinuxが初めて5%を超えたわけです。

これは相当皮肉な話で、Microsoftが自らの支配力を強めようとしたことが、結果的にLinuxゲーミングという対抗軸を育ててしまったということになります。

Microsoftはかつてネットスケープ・ナビゲーターに対するIEのバンドルをはじめ、数々の分野で競合製品を市場から締め出してきた会社です。

ValveがLinuxで独自プラットフォームを構築しようとするのは、その過去を踏まえれば当然の自衛策であり、MicrosoftへのValveの返答は「お前が始めた物語だろう」というものでしょう。

今はまだ5%ですが、これが10%を超えてくると無視できない勢力になると思います。

ゲームタイトルの対応状況やドライバの成熟度を考えると10%の壁は高いですが、Steam MachineとBazziteの拡大次第では現実的な射程に入ってきます。

Surveyは「傾向を読む資料」であって「正確な市場調査」ではない

まとめると、Steam Hardware Surveyは構造的なバイアス(PC방問題、中国語ユーザー問題、AMD GPU計測バグ)を抱えたまま今も使われています。

単月の数字を「これが現実の市場シェア」と解釈するのは危険で、あくまでも複数月にわたる傾向を見る資料として扱うべきです。

Linuxが5%を超えた今月のデータは「記録的な数字」として見出しになりましたが、来月修正が入って3%台に戻っても驚かない。

それでも、ゆっくりと、しかし確実にLinuxとAMDがこのSurveyでも存在感を高めつつあるのは事実です。

Steam Hardware Surveyを「市場の鏡」として読みたいなら、単月ではなく半年〜1年単位のトレンドで見るのが正しいアプローチだと思います。