※ 画像は記事の内容を基にしたイメージです。
Costcoの顧客が最近、複数の店舗で展示されているデスクトップPCからメモリモジュールが取り外されていることを発見し、Redditで話題になっている。
一部の展示ユニットではGPUも取り外されており、特に高価格帯のモデルではRAMとGPUの両方が欠落している状態だった。
投稿された画像には4台のPCが写っており、そのうち3台にはGPUが残っているものの、最も高価な2,600ドルのモデルはGPUとRAMの両方が取り外されていた。
Redditのコメント欄では、多くのユーザーが「自分の地元のCostcoでも同じ状況を確認した」と報告している。
ある顧客は「Costcoが実際に防犯カメラでPCパーツの窃盗犯を捉えた」と証言しており、被害が既に発生している可能性が高い。
複数のユーザーがCostcoだけでなくWalmartでも同様の対策が取られていると報告しており、大手小売チェーン全体で広がっている現象であることが示唆される。
コメントの中には「盗難が既に発生しており、Costcoは盗まれたパーツを新品と交換しない方針を取った」という推測も見られる。
理由は単純で、交換してもまた盗まれることがわかっているからだ。
盗難されなかったパーツは通常、倉庫に保管されており、顧客が実際にシステムを購入する際に組み込まれる仕組みになっている。
窃盗犯の一人はInstacartの買い物代行者として店舗に入っており、Costcoの会員資格なしでアクセスできたケースが報告されている。
Instacartは顧客の代わりに買い物をする配達サービスで、このサービスを利用すれば会員制の店舗でも入店できてしまう。
Costcoは以前からGPUを展示ユニットではなく倉庫に保管する対策を取っていたが、今回RAMも同様の扱いになった。
RAMとGPUは現代のPC構成において最も高価なパーツであり、公式価格を数百ドル上回る価格で取引されている。
パンデミック時代のマイニングブームでGPUが前例のない規模で転売された際にも、小売店は同様の予防措置を取らざるを得なかった。
しかし今回の危機はメーカーレベルから価格が高騰している「自然発生的」なものであり、Costcoのような大手小売業者でさえRAMを保護する必要に迫られている。
別の報道では、窃盗のパターンがより明確になっている。
韓国のオフィスでは、窃盗犯が強化ガラスのサイドパネルを割って、Micronの32GB DDR5-5600モジュール4枚だけを盗んで逃げた事件が報告されている。
机の引き出しや他のオフィス用品には一切手をつけず、RAMだけを狙った極めて選択的な犯行だった。
盗まれたモジュールは、Micronが消費者市場から撤退を発表した製品ラインのものだった。
配送中の窃盗も急増している。
イギリスの購入者は、32GB DDR5 SODIMMが午前4時に「配達完了」と記録され、判読不能な署名で約300マイル離れた場所で受け取られたと報告している。
RedditのPC自作コミュニティでは、「空の箱が届いた」「中身が低価値の日用品と入れ替わっていた」という報告が続出している。
一部の配達は、購入者が玄関を確認する前に「配達完了」とマークされていた。
オンライン販売での詐欺も横行している。
ある欧州の購入者は、DDR5として購入したメモリのヒートスプレッダーを外したところ、中身がDDR4にすり替えられていたことを発見した。
PCB上のノッチが合わず、マザーボードに取り付けられなかったことで詐欺が発覚した。
別のケースでは、スペインの購入者がDDR5として注文したものの、届いたのはDDR2モジュールと重りだった。
Amazon経由で購入した顧客の中には、Noctua製CPUクーラーを注文したのに中古のCore i5プロセッサが届き、後日Amazonから「返品された商品が間違っている」と請求された例も報告されている。
こうした状況を受けて、ハードウェアフォーラムでは「高価値パーツを注文する際は必ず開封動画を撮影するべき」という助言が広まっている。
パッケージのラベルを含めて開封プロセス全体を記録することで、詐欺や配送トラブルの証拠を確保できる。
イギリスでは、パッケージが正当な受取人に渡されるまで販売者が法的責任を負うが、実際には小売業者、配送業者、地元警察の間でたらい回しにされるケースが多い。
RAMはスマートフォンやスマートウォッチ、小型プロカメラ機器と同じリスクカテゴリーに入るようになった。
小型で高価値であるため、配送の最終段階での窃盗や巧妙な箱のすり替えの標的になりやすい。
一部の小売業者は既に対策を講じている。
高価値商品については署名確認を標準化したり、スタッフ常駐のピックアップポイントへの自動配送を実施したりしている。
マーケットプレイスの中には、販売者に改ざん防止シールの使用と配送時の写真確認を要求しているところもある。
配送業者は、製品を特定されないよう無地のパッケージを使用することを推奨している。
■メモリ市場の構造変化──Crucialブランド終了が象徴する消費者市場の放棄
RAMの窃盗が小売店レベルで問題になっている背景には、2025年に起きた異常なメモリ不足がある。
この不足は、AI向けデータセンター需要が原因で起きている構造的な問題だ。
Samsung、SK hynix、Micronといった主要メーカーが、より高利益なHBM(High Bandwidth Memory)生産にリソースを集中させた結果、一般消費者向けDRAMの供給が激減した。
実際の数字を見ると、この異常さがよくわかる。
DRAM価格は2025年だけで171%上昇した。
32GBのDDR5キットが2025年中盤には95ドルだったのが、10月には184ドルになり、12月には300ドルを超えた。
現在では一部のキットが400ドルから650ドルで取引されている。
DDR4メモリも同様で、32GBキットが従来の50ドル未満から170ドルに跳ね上がった。
64GBのDDR5キットは、数ヶ月前には209ドルだったものが、現在では650ドルで販売されている。
TrendForceのアナリストは「2026年第1四半期だけで、DRAM価格がさらに50-55%上昇する」と予測している。
これは「前例のない」上昇率だと同社のアナリストが述べている。
なぜこんなことになったのか?
答えは、HBMを1ビット作るために、通常のメモリ3ビット分の生産能力を犠牲にしなければいけないからだ。
Micronの幹部によれば、「HBMの供給を増やすと、3対1の比率で非HBM向けの市場に残るメモリが減少する」という。
AI企業は「いくらでも払う」姿勢で大量発注している。
GoogleやAmazon、Microsoft、Meta Platformsは、コストに関係なく「供給可能な限り受け入れる」という無制限の発注を行っていると報じられている。
OpenAIは2025年10月に、「Stargate」AIインフラプロジェクトのために、SamsungおよびSK hynixと戦略的パートナーシップを正式発表した。
一般消費者向けの供給がどんどん削られていく構造になっている。
そして2025年12月、この構造変化を決定的に示す出来事が起きた。
Micronが、29年間続いた消費者向けブランド「Crucial」の終了を発表したのだ。
Crucialは1996年に設立され、PC自作ユーザーにとって「技術的リーダーシップ、品質、信頼性」の代名詞となっていたブランドだった。
Micronは2026年2月末までにCrucialブランドの全製品出荷を停止する。
同社の幹部は声明で「AIによるデータセンターの成長が、メモリとストレージの需要急増を引き起こした」と述べている。
「Micronは、より大規模で戦略的な顧客への供給とサポートを改善するため、Crucial消費者事業からの撤退という困難な決断を下した」
つまり、消費者市場を切り捨ててAI・エンタープライズ市場に注力するという明確な方針転換だ。
Crucialの終了は、単なるブランド廃止ではない。
これは世界のDRAM生産能力の約20%を占めるメーカーが、消費者市場から完全撤退することを意味する。
残る主要メーカーは実質的にSamsungとSK hynixの2社だけになる。
この2社で世界のDRAM生産能力の約78%を占めている(Samsungが43%、SK hynixが35%)。
CorsairやG.Skill、Kingston、ADATAといったメモリモジュールメーカーは、DRAMチップをこの3社から調達している。
Micronの撤退により、これらのメーカーはSamsungとSK hynixからの割り当てを巡ってより激しい競争を強いられる。
2026年を通じて、価格安定性と製品入手性に影響が出る可能性が高い。
Micronの株価は2025年だけで180%上昇した。
これはHBM事業がGPUメーカーやAIインフラに供給したことによる。
同社のクラウドメモリ事業部門の収益は前年比257%増の45億ドルに達した。
一方、Crucialを含むモバイル・クライアント部門は、はるかに大きな顧客基盤を持っているにもかかわらず、収益はわずか2%増の38億ドルにとどまった。
Micronの株主にとって、消費者市場を放棄することは完全に理にかなっている。
しかしPC自作ユーザーにとっては、既に異常な高値にあるRAM価格がさらに悪化する壊滅的なニュースだ。
解説
──2028年まで続く可能性が高い異常事態
正直、展示品からRAMを抜かなきゃいけない状況と、Crucialのような信頼されたブランドが消費者市場から撤退する状況が同時に起きているって、かなり深刻ですよね。
これ、単なる一時的な供給不足じゃないんです。
半導体業界全体の構造が変わっているんですよ。
Micronの幹部が「より大規模で戦略的な顧客」と呼んでいるのは、要するにAI企業のことです。
彼らは価格を気にせず大量発注し、長期契約を結び、予測可能な需要パターンを提供してくれる。
消費者市場はどうかというと、薄利多売で、価格競争が激しく、需要が不安定。
製造能力が限られている状況で、どちらを優先するかは明白です。
いつまで続くのか?
Micronは2027年にアイダホ州で新工場が稼働開始予定ですが、それまでは供給不足が続く見込みです。
TrendForceのアナリストは「2026年末までに、メーカーは既存施設での増産能力を使い果たす」と予測しています。
つまり、状況が本格的に改善するのは2027年後半から2028年になる可能性が高い。
Micronの幹部も「業界全体の供給は、予見可能な将来にわたって需要を大幅に下回る」と述べています。
実際、SK hynixは2026年全体のHBM生産能力を既に完売したと報告しています。
業界アナリストは「メモリ価格の上昇は2028年まで続く可能性がある」と警告しています。
Samsung とSK hynixは増産に慎重な姿勢を取っているため、価格高騰は長期化する見込みです。
PC自作市場への影響も深刻です。
CyberpowerPCは2025年12月に「RAMが500%値上がりした」ことを理由に全システムの価格改定を発表しました。
DellとLenovoは2025年12月から15-20%の価格引き上げを発表しています。
IDCは「スマートフォンとPC市場は、より高いコスト、製品ロードマップの変更、販売量成長の鈍化に備えている」と警告しています。
ゲーム開発にも影響が出始めています。
Larian StudiosのCEOは、Baldur’s Gate 3に続く新作について「限られたRAMとVRAMを持つデバイス向けに最適化する方向に変更せざるを得なくなった」と述べています。
「通常なら、ハードウェアの成長カーブを予測できるが、今はそれが狂ってしまった」
「本来ならアーリーアクセス段階で行う必要のない最適化作業を、今の時点でやらなければならない」
小規模なハードウェアメーカーも壊滅的な打撃を受けています。
Libre Computerは、4GBのLPDDR4モジュール1枚の価格が35ドルになったと報告しています。
これは、シングルボードコンピュータの他の全コンポーネントを合わせた価格よりも高い。
「製品を赤字で販売し続けることはできないので、現在の生産バッチが売り切れたら、価格を上げるか、特定の製品ラインを在庫切れにするかのどちらかだ」
Raspberry Piも価格引き上げを実施し、新たに1GB版のPi 5を導入しました。
NVIDIAは、GPU用のVRAMをボードパートナーに提供しなくなり、「自分たちで調達してください」と通告したと報じられています。
Xbox Seriesコンソールも近々さらなる価格上昇に直面する見込みです。
個人的には、今PC自作を考えている人は相当慎重になったほうがいいと思います。
「もう少し待てば安くなるかも」という期待は、少なくとも2027年までは持たないほうがいいでしょう。
むしろ「必要なら今買う、不要なら2028年まで待つ」くらいの二択で考えるべき状況ですね。
そして、高価値なパーツを注文する際は、必ず開封動画を撮影すること。
署名確認配送やロッカー配送、スタッフ常駐のピックアップポイントを利用すること。
無地のパッケージングを依頼し、改ざん防止テープで密封されているか確認すること。
これらは今や必須の対策になってしまいました。
Costcoが展示品からRAMを外さざるを得ない状況が、この異常事態の深刻さを物語っていますよね。