IntelがCES 2026で発表したCore Ultra Series 3(コードネーム:Panther Lake)の発売を来週に控え、AMDは自社のRyzen AI MAXおよびRyzen AI 400/300シリーズプロセッサの競争力を示す資料を公開した。AMDの主張は同社の内部試験データと公開情報に基づいている。
■各セグメントでの競争構図
AMDはノートPCプロセッサを4つのセグメントに分類している。最上位の「プレミアム」セグメントでは、Ryzen AI MAXファミリーがPanther LakeのXシリーズと競合する。AMDは最近、Ryzen AI MAX+ 392(12コア24スレッド)とMAX+ 388(8コア16スレッド)を発表し、いずれも40個のコンピュートユニットを持つRadeon 8060Sを搭載している。これにより、フラッグシップのMAX+ 395と同等のグラフィックス性能を、より手頃な価格で提供できる製品が登場することになる。
IntelのXシリーズは、Arc B390またはArc B370という最高クラスのグラフィックスオプションを搭載する。最上位のCore Ultra X9 388Hは12個のXe3コアを備え、最大5.1GHzで動作する。Intelは、Lunar Lakeと比較して最大60%優れたマルチスレッド性能、77%高速なゲーミング性能、最大27時間のバッテリー駆動時間を実現すると主張している。
メインストリームセグメントでは、AMDはRyzen AI 400シリーズをCore Ultra 9およびCore Ultra 7 Panther Lakeと対決させている。このセグメントのIntelチップのほとんどは4つのXe3コアを搭載しており、これはフル構成の3分の1に相当する。対照的に、AMDはRadeon 890M/880M iGPUを継続して提供し、16~12個のコンピュートユニットを備えている。AMDはコンテンツ制作だけでなく、ゲーミング性能でも優位性を主張している。
エントリーレベルでは、IntelのCore Ultra Series 3のWildcat Lake SKUが2つのXe3コアと6つのCPUコアを搭載する。AMDはRyzen AI 300とRyzen 200のエントリーレベルSKUで対抗し、すべてのセグメントで勝利を主張している。このセグメントは売上の大部分を占めるため、両社にとって重要な戦場となる。
■IntelのCES 2026主張への反論
AMDはIntelがCES 2026で発表した主張に対する反論も展開している。まず、グラフィックス性能についてだ。Intelは388Hが他に類を見ないグラフィックス性能を提供すると主張したが、AMDはRyzen AI MAX 395+がIntelが提示した数値より37%高速だと反論している。ただし、AMDはMAXシリーズがTDP 80~120Wという高い消費電力のシステム向けに設計されている点を明示していない。
CPU性能についても、IntelはCore Ultra X9 388Hが大幅な優位性を持つと主張したが、AMDはRyzen AI MAX 395+がスレッド数で2倍あると指摘している。Panther LakeのCPUは4つのPコア、8つのEコア、4つのLP Eコアという16コア構成だが、ハイパースレッディングをサポートしていない。対照的に、Strix Haloは16個のZen 5コアで32スレッドを提供する。
電力効率については、IntelがPanther Lakeで「x86最高の電力効率」を主張したが、AMDの分析によれば、Intelの自社データでもLunar Lakeと比較して大きな優位性が見られないという。IntelのスライドではAMD Ryzen AI 9 365を基準として、Core Ultra X9 388HのSoC消費電力が最大78%低いと主張しているが、実際のテストでどのような結果になるかは未知数だ。
AMDは、Intelがフラッグシップモデル以外について具体的な性能主張をほとんど行っていない点も指摘している。AMDはその理由として、Ryzen AI 400シリーズがプロセッシング性能とグラフィックス性能で先行しているためと推測している。
■Panther Lakeの技術的特徴
IntelのCore Ultra Series 3は、同社の18Aプロセスで製造された初のAI PCプラットフォームだ。2026年1月27日から200以上のPC設計で展開される予定で、14種類のSKUが用意されている。Panther Lakeは、CPUアーキテクチャ、GPU、NPU、Wi-Fi、カメラ入力処理など、ほぼすべての主要機能ブロックに新しいアーキテクチャを導入している。
GPUは3つの構成が用意されており、すべての構成が同じチップパッケージタイプを使用するため、OEMはSKU間の交換が容易だ。すべてのコンピュートタイルはIntelの18Aプロセスで製造される。これは、Intelチップの最も重要な部分の製造がIntel自社ファブに戻ったことを意味する。Lunar LakeはコンピュートタイルをTSMCに依存していた。
最上位のCore Ultra X9 388HはAI性能として合計180 TOPSに達し、そのうち120 TOPSがGPUから、50 TOPSがNPUから提供される。
■実機レビュー待ちの状況
AMDには説得力のある主張があり、Intelも大きな数値を主張しているが、最終的には実機レビューが公開されるまで待つべきだろう。この反応は、AMDがしばらくぶりに見せた最も直接的なマーケティング対応の一つだ。IntelのCore Ultra Series 3 Panther Lakeチップは、初期の主張と展示フロアでのテストから有望に見える一方、AMDのRyzen AI MAXは高性能SoCの標準として確立されている。Ryzen AI 400ラインナップはRyzen AI 300が築いた強固な基盤の上に構築されており、PC市場では健全な競争が期待できる。
AMDは「Intelの主張にかかわらず、AMDはAI PC向けの最速プロセッサを提供することが期待される」というメッセージを打ち出している。しかし、Strix Halo以外のプラットフォームのレビューがまだ公開されていないため、両社の主張をすべて検証することは不可能だ。Intelはより効率的なアーキテクチャでノートPC市場への攻勢を強めると見られており、統合グラフィックスも改善されている。Panther Lakeは2026年1月下旬に発売予定で、両社の新世代製品が実際にどのように競合するか、今後のレビューが待たれる。
■筆者の見解:価格設定が普及の鍵を握る
技術的な性能競争は確かに興味深いが、最終的にこれらの製品が一般消費者にどれだけ手の届く価格で提供されるかが最大の焦点となるだろう。
Intelは過去に統合GPU性能の最上位構成に対して高額なプレミアム価格を設定してきた経緯がある。今回のCore Ultra X9シリーズ、特に12個のXe3コアを搭載した388Hのような最上位モデルが、果たしていくらの価格になるのかは大きな懸念材料だ。高性能な統合グラフィックスは確かに魅力的だが、その恩恵を受けられるのが一部のハイエンド購買層に限られるのであれば、市場全体へのインパクトは限定的なものとなる。
さらに深刻な問題として、現在のDRAM価格高騰が挙げられる。2025年から2026年にかけて、メモリ価格は大幅に上昇しており、この傾向は当面続くと予測されている。Panther Lakeが最大96GBのLPDDR5や128GBのDDR5をサポートすることは技術的には素晴らしいが、実際にこれらの大容量メモリを搭載したシステムの価格は、メモリコストの影響を大きく受けることになる。
AMDのRyzen AI MAXシリーズも同様の課題を抱えている。Strix Haloは最大128GBの統合メモリをサポートするが、これは同時に高額なメモリコストを意味する。新たに追加されたMAX+ 392と388が「より手頃な価格」で提供されると謳われているものの、現在のメモリ市況を考慮すれば、依然として高価格帯の製品となる可能性が高い。
結局のところ、どちらのメーカーも技術的には印象的な進歩を遂げているが、それが一般消費者、つまり「普通の人」が実際に恩恵を受けられる価格帯に落とし込まれるかどうかが真の試金石となる。メインストリームおよびエントリーレベルのセグメントこそが最も重要な戦場であり、ここで両社がどのような価格設定を提示するかが、2026年のノートPC市場の行方を決定づけることになるだろう。
高性能統合グラフィックスの時代が到来したことは間違いないが、それが真に市場を変革するためには、技術的優位性だけでなく、価格面での現実的なアクセシビリティが不可欠である。DRAM価格が高止まりしている現状では、両社とも難しい舵取りを迫られることになるだろう。