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VRヘッドセットの状況について-2021年7月(2021年5月Steam調査)

更新日:

HammerandTusk / Pixabay

Oculus Qest2が発売されてからしばらく経ちました。

ここでVRヘッドセットの状況について整理してみます。

まず、Steamのハードウェア調査を参考にVRヘッドセットの普及率に関して調べてみました。

上が2021年5月のSteamハードウェア調査のVRヘッドセットの状況です。

表に纏めてみました。

使用率 先月からの増分
Oculus Quest 2 29.33% 1.55%
Oculus Rift S 19.17% -1.07%
Valve Index HMD 16.49% 0.10%
HTC Vive 11.11% -0.27%
Oculus Rift 5.94% -0.35%
Windows Mixed Reality 5.65% -0.16%
Oculus Quest 5.31% -0.27%
その他 7.00% 0.5%
Steamユーザー
ヘッドセット
使用率
2.31% 0.09%

表を見ると、Quest2が約30%と去年の10月に発売されたばかりにも関わらず圧倒的に普及していることがわかります。

使用率10%を超えているメーカーはOculus、HTC、Valveのみです。

つまりPCでVRヘッドセットを購入するならば、この3つのメーカーの製品に絞った方が良いということになります。

中でもQuest2の普及率は群を抜いており、今でも月に1.55%増加していますので、PCに接続するVRヘッドセットの世界でも事実上のスタンダードはOculus Quest2であると言ってもよいでしょう。

同じくOculus Linkを使用してPCと接続する初代Questと併せると34.64%となりVRと言えば圧倒的にOculusと言う状況になりつつあります。

勘違いされないようにお断りしておきますが、これはあくまでもSteamを通じて調査した結果であり、PCに繋がれていない単体動作のQeust2は含まれていないということです。

Steamを通じて判明している「PCに繋がれているQuest2」だけで29.33%を占めているということになります。

ソフトメーカーの側もこれだけ数に差があるとQuest2ネイティブのソフトを作って後は無視するという方法論を取るメーカーも出てくることでしょう。

ここまで普及率が上がると、総てのPC向けVRソフトは必ずOculus Qeust2での動作を確認するというレベルでしょう。

他に表に載っているVRヘッドセットにはWindowsMRもありますが、使用率は5.65%に過ぎず、複数のメーカーから製品が出ている状態ですから、特に明確な理由が無い限り選択することは無いと思います。

折れ線グラフにはOthersとして12.3%とありますが、そのうち5.31%は初代Qeustと言うことになります。

 

それではSteamの調査をさらに深堀してみましょう

使用率 先月からの増分
Facebook(Oculus)合計 59.77% -0.15%
Oculus Quest 2 29.33% 1.55%
Oculus Rift S 19.17% -1.07%
Oculus Rift 5.94% -0.35%
Oculus Quest 5.31% -0.27%
Oculus Rift DK2 0.02% -0.01%
Valve合計 16.49% 0.10%
Valve Index HMD 16.49% 0.10%
HTC合計 14.34% -0.36%
HTC Vive 11.11% -0.27%
HTC Vive Pro 2.02% -0.23%
HTC Vive Cosmos 1.19% 0.29%
HTC Vive Elite 0.82% -0.15%
WindowsMR合計 5.65% -0.16%
Windows Mixed Reality 5.65% -0.16%
その他 3.75% 1.34%
総計 100.00% 0.09%

この表はメーカーごとに使用率と先月からの増分を調べてみたものです。

メーカー別でみるとFacebook(Oculus)が圧倒的で実に6割近い使用率となります。

これはVRの標準コントローラーはOculus Touchであることを意味しています。

また、表を見てもわかる通り、圧倒的にQuest2が強いということがわかります。

しかし、Facebook全体で見ると、特にSteam内でも使用率に貢献しているわけではなく、逆に減っていることがわかります。

この傾向はValveを除くすべての表にある主要ヘッドセットで出ており、「その他」が大きく増えて全体でみると0.09%の微増と言う結果になっています。

Valve IndexはSteamの公式VRだけあって、初代製品でいきなり16.49%ものシェアを得ていますが、伸び率はあまり良くありません。

HTCはViveがガツンと売れたが、続くヒット製品が無く、Cosmosがやや売れているものの、全体としては数を落としています。

また、SteamVRのソフトウェアに依存する形のViveはSteam公式VRのIndexが出た後、すでにシェアを逆転されており、PCVRヘッドセット全体での影響力を落としていると判断してよいと思います。

WindowsMRはQuest2が出た後存在感を落としており、最近では目立った新製品も出ていません。

この表の傾向から判断すると、VRゲームと言うジャンルは既にPCでは頭打ちになっており、VRの世界は単体VRヘッドセット(Qeust2)がけん引していると判断してよさそうです。

ハイエンドに近い構成の高性能ゲーミングPCを用意する高額な費用、ルームスケールのセットアップ、VRヘッドセットを被る手間、ケーブルなどVRは決して手軽とは言えない大きな手間がかかり、その手間に見合うだけの体験が得られるゲーム、VRヘッドセットを使用し続ける動機を与えてくれるソフトを提供し続けることがかなり難しいことがわかります。

これらの問題の一部はOculus Quest2がケーブルの要らない単体VRヘッドセットであり、PCに接続するのにケーブルが要らないOculus Air Linkで解決しています。

 

販売台数について

販売台数に関しては、Quest2が2020年Q4までで109.8万台、PSVRが累計約500万台、HTC Viveが2017年Q1だけで9万5000台と言われています。

随分差がありますし、集計期間もバラバラですが公式には累計台数が発表されておらず、どのくらい売れたかに関してはハッキリとはわからない状況です。

ただし、世界で一番売れたVR機器はPSVRと言うのは現時点では間違いないです。

Quest2もいずれは並ぶと思われます。

HTCに関してはValveの公式VRであるIndexが出たため販売台数はあまり伸びていないようです。

VR機器を売るには独自のVRソフトウェアとゲームの販売ストアが必要と言うのは間違いないでしょう。

鳴り物入りで登場した超高性能VRのPimaxや初期にViveが売れたHTCのHMDのその後を見ると、いずれもソフトウェアのサポートが弱いため、市場に存在感を示せるほどの数が出せなかった判断してよいと思います。

Sonyがガッチリ囲い込んでいるPSVRは自由にソフトが出せる状態ではありませんが、Quest2の登場によって単体VRヘッドセットにはある程度の自由が生まれています。

Facebookは初期はQuest用に出すソフトには厳しい審査をしていましたが、AppLabやSideQuestなどによって自由にソフトを作成、販売できる土壌は作られていると判断してもよいと思います。

 

VRの今後

初代Riftが2016年3月に発売されてから5年が経過して、PCVRの問題点が浮き彫りになった形です。

特にPCVRに関しては今後、どのような形でユーザーにVR体験を行うインセンティブを与えていくのか?VR世界の今後はそこにかかっていると言ってもよいと思います。

PSVRと言う500万台売れたVR機器がありますが、現在の装着率(使用率)は3割ほどと言われています。

このため、Quest2が同じ台数以上に売れたとしても、ソフトウェアが現状のままであれば同じように大半のVRヘッドセットが死蔵されてしまう可能性が高いと思います。

VRは空っぽの洞窟なのか?それとも未来へ通じる輝かしい道なのかはまだ答えが出ていない状態と言ってよいと思います。

 

 

各社ハードウェアに関して

各社のハードがどの程度進化してきたのか初代と現在のハードを比較して検証

Oculus(Facebook)

Quest 2 Quest 初代Rift
ディスプレイ LCD
(液晶ディス
プレイ)
OLED
(有機EL)
OLED
(有機EL)
ディスプレイ
解像度(片目)
1832×1920 1,600×1,440 1080X1200
視野角 初代Questと
同程度
100度 110度
トラッキング 6DoF 6DoF 6DoF
トラッキング
方式
インサイドアウト インサイドアウト 外部センサー
リフレッシュ
レート
72/90Hz(120Hzも対応予定) 72Hz 90Hz
IPD調整 レンズで調節
(58、63、68mmの
3段階)
ヘッドセット
底部のスライダー
で調整
ヘッドセット
底部のスライダー
で調整
ストレージ 64GB,256GB 64GB,128GB 無し
プロセッサ Snapdragon XR2 Snapdragon 835 無し
RAM 6GB 4GB 無し
重さ 503g 571g 470g
オーディオ スピーカー
内蔵
3.5mmヘッドフォン対応
スピーカー
内蔵
3.5mmヘッドフォン対応
ヘッドホン付属
その他 バッテリー
内蔵
バッテリー
内蔵
無し

Quest1/2は単体VR製品だが、PCVRとしても使えるので初代のRiftと無理矢理比較してみた。

Quest2は初代のRift CV1と比較すると実に2倍以上の画素数を誇る。

視野角はRfit CVより若干狭いが、スペックを見ると時代の流れを感じるところだ。

最初期のモデルはほとんどが液晶にOLEDを採用していたが、最近のモデルは通常の液晶を採用している。

Quest2はOculus Air LinkでPCVRとして使用しても唯一ケーブルレスのVRHMDであり、価格も3万円台と安く、単体VRHMDとしても使用できます。

ゲーブルを使用するOculus Linkでも一本のUSB3.0ケーブルで接続できるため、使い勝手の良さと言う点で判断するならばQuest2しかないという状況です。

PSVRと比較しても半分以下の価格で使用できるため、非常に可能性を秘めているVRHMDだと思います。

ただし、Quest2がPSVRの二の舞になった暁には「VRは空っぽの洞窟」と判断されてしまう可能性が非常に高いと私は思います。

なお、価格は下がっていますが、単体VRとしての処理性能や液晶の性能はかなりの勢いで向上しており、この点は素晴らしいの一言。

SteamではQuest2だけでも3割の使用率を誇るため、PCVRを使う場合でも、よほどの理由が無い限りQuest2にした方が無難です。

IndexやViveを使う場合でも一台は持っておいた方が良いと思います。

他社のVR HMDは初期VRの延長線上に存在しているのに対して、Quest2は目指している場所や存在している次元が違っているという印象です。

SteamではOculusブランドのVR機器の使用率が6割に達しているため、今後のソフトはコントローラーがTouchが標準の前提として作られると思われます。

追記

Quest2は逆ザヤか?

Oculusがソフトの販売に当たって手数料として3割ほど持って行っているという事実から逆ザヤだと思います。

Oculus Link / Air Linkも本体にCPUやバッテリーが付いているからこそできる芸当だと思います。

たとえPSVRが新しくなったとしても(PSVR2?)コスト的に無線にすることは非常に難しいと思います。

また、CPUとバッテリーと言う他社製のVRには必要ない機能を内蔵しているにも関わらず、本体は503gと非常に軽く、この点から見ても奇跡のような仕様だと思います。

他社製のVRでは出せない性能を持っていますので、現状、PCでVR機器を買うならばQuest2が一番得で使い勝手が良いと私は思っています。

現状のPCでのVR体験と言うのは準備に非常に手間がかかりますので、よほど体験したいソフトが無い限りは面倒になっていずれ使わなくなってしまいますが、無線やUSB3.0ケーブル一本でつなげるOculus Linkならば面倒はありません。

 

 

HTC

HTC Vive Pro2 HTC Vive(初代)
ディスプレイ LCD
(液晶ディス
プレイ)
OLED
(有機EL)
ディスプレイ
解像度(片目)
2448 × 2448 1080×1200
視野角 最高120度 110度
トラッキング 6DoF 6DoF
トラッキング
方式
外部センサー 外部センサー
リフレッシュ
レート
90/120Hz 90Hz
IPD調整 あり あり
重さ 不明 555g
オーディオ 付属 3.5mm
ヘッドフォン対応
その他 無し 無し

Viveが世に出て以来、PCVRの世界をけん引し、Oculusの後追いの仕様で単体VRのFocusなどを発売してきたHTCですが、Steamの使用率を見ると、なかなか厳しい数字になっています。

HTC Vive Pro2を発売予定で、こちらは片目2.5K、両目5KのVRHDMとなっています。

HTCは数を売ることをあきらめて、高級路線に走ったということになります。

今後、現行のユーザーの買い替えの他、どの程度の新規ユーザーが獲得できるかが販売のカギになると思います。

 

 

Valve index

Valve Index HTC Vive(初代)
ディスプレイ LCD
(液晶ディス
プレイ)
OLED
(有機EL)
ディスプレイ
解像度(片目)
1440X1600 1080×1200
視野角 130度 110度
トラッキング 6DoF 6DoF
トラッキング
方式
外部センサー 外部センサー
リフレッシュ
レート
80/90/
120/144Hz
90Hz
IPD調整 あり あり
重さ 748g 555g
オーディオ 付属 3.5mm
ヘッドフォン対応
その他 無し 無し

Valve Indexに関してはHTC Vive初期型と比較しています。

ValveがHTCと一緒に作り上げ仕様に準じたハードとなっています。

こちらもフルセット10万以上とかなり高額なHMDですが、液晶の解像度は価格からすると高くなく、あまりお得感の無いVR機器です。

HTC Viveのセンサーやトラッカーと互換性があるため、Viveからの乗り換え需要はこちらに取られている可能性が高いと私は考えています。

言ってみれば仕様的に「Vive殺し」になっています。

何よりSteam公式VRの安心感はやはりあると思います。

欠点は、Indexを購入するような層はQuest2も購入してしまうのかもしれませんが、スペック的にはあまり高くなく、液晶の解像度は3万円台で購入できるQuest2に負けています。

ディスプレイケーブルで接続しているため、どうにもならないのかもしれませんが、Qeust2がケーブル一本で接続していることを考えるとなかなか厳しい使い勝手なのではないかと思います。

過去のSteamコントローラーなどと同じで欧米での販売ではそれなりに実績を出していますが、日本での販売はそれほど力が入っているとはいいがたい状況です。

 

ソフトウェアに関して

Valveはindexの販売と同時にキラータイトルであるHalf Life:Alyxを発売しており、これがIndexの販売に拍車をかけたものと思います。

市場のけん引にはこうしたキラータイトルが必須です。

ソニーは長年のゲーム機販売でこうしたことを痛いほど理解しているため、PSVR専用のタイトルの他、Steamなどで販売されている有力なVRタイトルをいくつも販売しています。

VRゲームはVR酔い対策、長時間プレイによる健康被害など通常のゲームよりも気を使わなくてはならないところが多くあり、VRがプレイできる環境が限られているため、大きな販売が見込めず、プレイ延べ時間が長いタイトルと言うのはよくも悪くも少ないです。

ゲーム制作には莫大な手間と費用が掛かり、回収が見込めないプラットフォームには投資されることは無いです。

Facebookは初期のVRゲームの大作であるAsgard’s WrathのようなVRのキラータイトルを是非販売してほしいところです。

※ Asgard’s Wrathを制作したスタジオはFacebookに買収されたのでそう言う意味でも期待したいところです。

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