Intel Core i7-11700K、シングルスレッドベンチマークでApple M1チップを上回る結果に
Notebookcheckによると、Apple M1がPassMarkで8コアのRocket Lake CPUを上回ったそうです。
Appleの8コアCPU「M1」は、Cypress Coveアーキテクチャを採用したアンロックの8コアCPUであるIntel Core i7-11700Kよりもシングルスレッド性能が優れています。
Apple M1がPassMarkに登場する前には、Core i9-11900Kとi7-11700Kの両方がPassMarkのスコアボードでトップの座を占めており、Zen3アーキテクチャを採用したAMDのRyzen 5000シリーズをも上回っていました。
Apple M1は、TSMC社の5nmノードで製造されています。
Apple M1は、コードネーム「Firestorm」と呼ばれる4つの高性能コアと、「Icestorm」と呼ばれる4つの高効率コアを搭載した、Apple初のARMベースのプロセッサーです。
これは、ARMのDynamicIQ(big.LITTLEの後継)や、インテルのLakefieldハイブリッド技術と同様のアーキテクチャです。
一方、AMDは、デスクトッププロセッサーではまだこのような技術を開発していません。
M1はシングルスレッドのベンチマークで3550ポイントを獲得していますが、Core i7-11700Kの平均スコアは3542ポイントです。
この差は誤差の範囲内(わずか0.2%)であり、明確な勝者を主張するにはサンプル数がまだ足りません。
今後、Intel 400シリーズおよび500シリーズのマザーボードに対応した新しいマイクロコードが利用可能になれば、Rocket Lake-Sがその座を奪還することになるでしょう。
電力制限のあるApple M1チップは、確かにシングルスレッドの性能は高いかもしれませんが、マルチスレッドのベンチマークではデスクトップCPUに対抗することはできません。
アップルのチップにはハイパースレッディング技術がないのだ。
この状況を変える可能性のあるプロセッサーは、次期高性能のApple M1Xチップです。
PassMark Single-Thread Benchmark(2021年3月) ソース:PassMark
2021年 PassMarkに搭載された8コアの高機能プロセッサ
Intel Core i9-11900K |
Apple M1 | Intel Core i7-11700K |
AMD Ryzen 7 5800X |
||
製造プロセス | 14nm | 5nm | 14nm | 7nm | |
アーキテクチャー | Cypress Cove | Firestorm & Icestorm |
Cypress Cove | Zen3 | |
コア数/スレッド数 | 8C / 16T | 4C+4c / 8T | 8C / 16T | 8C / 16T | |
ベース/ブーストクロック | 3.5 GHz / 5.3 GHz (TVB) |
3.2 GHz | 3.6 GHz / 5.0 GHz | 3.8 GHz / 4.7 GHz | |
TDP | 125W | 15.1W | 125W | 105W | |
小売価格 (米ドル) |
539 USD | 699 USD (Mac Mini) | 399 USD | 449 USD | |
シングルスレッドスコア | 3,741 | 3,550 | 3,542 | 3,506 | |
平均スコア | 27,308 | 14,951 | 25,800 | 28,664 | |
サンプル数 | 2 | 61 | 3 | 1,380 | |
整数演算 | MOps/Sec | 94,770 | 36,277 | 91,584 | 101,246 |
浮動小数数点演算 | MOps/Sec | 54,571 | 36,731 | 52,650 | 52,518 |
素数の発見 | Primes/Sec | 79 | 152 | 72 | 141 |
ランダムな 文字列の 並べ替え |
Thousand Strings/Sec | 41 | 22 | 39 | 37 |
暗号化 | MBytes/Sec | 18,063 | 8,871 | 17,317 | 21,739 |
データ圧縮 | MBytes/Sec | 337 | 155 | 328 | 343 |
物理演算 | Frames/Sec | 1,189 | 1,357 | 1,087 | 1,453 |
拡張命令 | Million Matrices/Sec | 25,458 | 8,207 | 23,159 | 23,462 |
解説:
Apple M1とx86の比較・・・Passmarkのシングルスレッド性能でCore i7-11700Kが負ける
M1とデスクトップCPUの比較は意味が無いです。
M1はTDPがたったの15Wであり、CPU能力をフルに使うマルチスレッドのベンチマークでは遠く及びません。
また、搭載される機器の多くがモバイルであり、省電力性を重視するため、CPUコアの半分は性能の低い高効率コアとなっており、この点において、総てが高性能コアであるCPUと同条件で比較した場合、遠く及ばないでしょう。
しかし、M1は製造プロセスにTSMCの5nmを用いて製造されており、こちらは世界最先端のプロセスとなっているため、効率と言う面において、IntelもAMDですらもM1には敵わないということは言えると思います。
それはTDP15Wのプロセッサがシングルスレッド性能でx86の最新CPUを打ち負かしていることからも想像できるのではないかと思います。
Appleが本腰を入れて、マルチスレッド対応のTDP95W前後のCPUを作ったとしたならば、intelもAMDもぶっちぎりの性能になるかもしれません。
高性能CPUとしてM1Xの名前が挙がっていまずか、もしこれがデスクトップやサーバー用CPUとして世に出たら、x86は低性能と言う烙印が付けられてしまうかもしれません。
実際には設計が半分と最新の製造プロセスを惜しみなく使えるAppleの資金力が半分と言ったところでしょう。
札束で殴られるというのはこういうことです。
スマホのゲームもそうですが、同じ知識、スキルを持っている人間同士で課金あり・なしで戦えば100%課金ありのユーザーが勝ちます。
海外ではこのようなゲームシステムをPay to Winと言って蛇蝎の如く嫌う傾向にありますが、現実の商売の世界ではまさにPay to Winが常識としてまかり通っています。
だからこそ、小兵であるAMDがIntelに勝つとユーザーは沸きますし活気づくということです。
本質的にどちらが強者かわかっているからだと私は理解しています。
札束で殴っている方がいつも勝つのはつまらないと見ている人も思っているのではないでしょうか。
そこに世界一資金力のあるAppleがARM系のCPUを使って札束で殴ってきたわけです。
Inlelも後追いでbig.Littleテクノロジーを採用しましたが、これは失敗すると私は思っています。
効率と言う面において、x86はARMには敵わないと思うからです。
Atomは元々スマホやタブレット向けに作られたものですが、結局低価格Windowsタブレットにしか搭載されずWindowsの高性能ノートのシェアを食いあったため、にあえなく撤退しました。
ARMでもサーバー向けのNeoverseは単一のコアで構成されています。
ノート向けはいざ知らず、サーバー向けやデスクトップ向けにbig.Littleテクノロジーを使ってもマルチスレッド性能が落ちるだけであまり意味が無いと私は思います。
Intelがもし、Appleから採用されなかったという理由だけでAlder Lake以降にbig.Littleテクノロジーを採用したのだとしたら、あまり良くない結果になるかもしれません。