Ryzen 9 3950X PCを組むにあたってSliger SM580を個人輸入しましたので、レビューします。
Sliger SM580特徴
- Mini-ITXマザーボードをサポート
- USB 3.1 Type C(SS + 10 Gbit / s)、USB 3.0 Type A、およびデュアルオーディオジャックを備えたフロントパネル
- 1つの280mm AIO液体冷却器または2つの140mm / 120mm液体冷却器を取り付けるための上部プレナム
- 最大325mmの長さの3スロットGPU、SFXまたはSFX-Lフォームファクター電源、2x 2.5インチSSD
- 最大5x 3.5インチHDDおよび/または下部120mmラジエーター用のオプションのブラケット
- 高性能冷却のために底部に2つの140mmファンを搭載
- Demcifilterから入手可能な磁気ダストフィルター
- Sligerが米国で設計および製造
対応マザーボード | Mini-ITX (170mm × 170 mm)のみ |
対応簡易水冷 | 280mmラジエーターの簡易水冷X1を上面にマウント 最大 328mm x 150mm x 72mm (長さx幅x高さ — 72mm 高さにはファンとラジエーターの厚さが含まれます) 推奨: NZXT Kraken X62 or X61, ThermalTake Floe Ring 280, CoolerMaser Nepton 280L 取付が難しい: Corsair Hydro H115i, EVGA CLC 280mm 取付不可: Corsair H115i , CoolerMaster Liquid Pro 280 240mmラジエーターの簡易水冷X1 120mmラジエーターの簡易水冷X2 120mmラジエーターX1、140mmラジエーターX1 簡易水冷 (例: GPU用X1, CPU用X1) 120mmラジエーターX1か140mmラジエーターX1 とオプションの3.5″HDDブラケットX1 底面への取り付け 15mm厚のファンを備えた厚さ27mm未満の120mmラジエーターX1 簡易水冷は推奨しません。本格水冷のみ推奨します 最大55mmの高さのCPUポンプブロック |
対応CPU 空冷クーラー |
最大高さ55mmのCPUクーラー CPU側に通気穴付きサイドパネルが必要なクーラー ID-COOLING IS-60 (55mm) [CLIPバージョンのみ, ファンにネジがあるバージョンを使わないでください.] AMD Wraith Stealth (54mm) Cooltek LP53 (53mm) すべてのサイドパネルタイプ(通常、Window、または通気穴付き) と互換性のあるクーラー Alpenföhn® Black Ridge (47mm) Noctua L9i/L9a Intel 標準クーラー Cryorig C7 CU Cryorig C7 Cooltek ITX30 Phanteks PH-TC90LS RAIJINTEK Zelos Silverstone AR05 Silverstone AR11 セミパッシブモード:両側にUnvented(非通気)パネルまたはWindowパネルが必要 be quiet! SHADOW ROCK LP (ファンを除く) Phanteks PH-TC12LS (ファンを除く) Noctua NH-L9x65 (ファンを除く) REEVEN BRONTES RC-1001b (ファンを除く) Scythe SCSK-1100 Shuriken Rev. B (ファンを除く) SCYTHE Big Shuriken 3 CPU Cooler SCBSK-3000 (ファンを除く) Thermalright AXP-100H Muscle (ファンを除く) Thermalright AXP-100 Copper (ファンを除く) Cooltek CR-701 (ファンを除く) |
ファン取付 | 140mmファンX2底面に取り付け ファンの厚さは最大25mmまで 140mmファンX2ラジエーター無し、または280mmラジエーターの簡易水冷 推奨されるエアフローは、下部吸気、上部排気です 上記の(ファンを除く)ヒートシンクの場合、 両方のファンに高静圧ファンを取り付ける必要があります |
GPU及び PCI Express カード |
3つのスロット幅のカードをサポートし、 サイドパネルとカードの間に通気スペースを確保 拡張カードは、PCIe 3.0 16xフレキシブルケーブルライザーで マザーボードの裏側に取り付けられます 標準電源コード用金具 最大カード高さ: 133mm (157mm for power connectors) 最大カード長さ: 325mm 最大カード幅: 67mm ピッグテイル金具 最大カード高さ: 157mm 最大カード長さ: 325mm 最大カード幅: 67mm 分岐ライザーは、外側のPCIe 16x 2.0カードを幅2スロットに制限し、 内側のスロットを単一スロットカードに制限します。 分岐外側スロットの最大カード幅:47mm |
2.5″ SSD/HDDx2 フロントパネルの内側に設置 オプション 2.5″ SSD/HDDx4 マウントブラケット[140mmX1下部ファンを交換] 最大2つのブラケットで合計8個の2.5インチSSD / HDDを設置可能 オプション3.5″ HDDX1 マウントブラケット[140mmX1下部ファンを交換] 最大2つのブラケットを使いケース底面に3.5インチHDDを2台設置 オプション3.5インチHDDX2マウントブラケット(ケースの上部) ケースの上部に最大2つのブラケットを使い、合計4個の3.5インチHDDを設置 合計最大6台の3.5”HDDを設置可能 |
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対応電源 | SFX電源 Corsair SF シリーズ SilverStone SST-SX シリーズ EVGA SuperNOVA GM シリーズ FSP Dagger シリーズ SFX-Lはサポートされていますが、非常にギリギリのためお勧めしません。 Sligerは、SFX-Lを使用する場合は、ファンガード金具または カスタムケーブルをお勧めします。 |
フロントパネル I/O |
USB 3.1 Gen 2 Type CのUSB Eヘッダー (SS+ 10 Gbit/s) X1 USB 3.0 Type Aの20ピン Motherboardヘッダー X1 2オーディオジャックの標準9ピン HD AUDIOヘッダー |
素材 | ケース部 ASTM-A-653 G30 無光沢 20 ゲージ 亜鉛めっき鋼 サイドパネル ASTM B209-10 5052-H32 0.080インチアルミニウムシート 脚 キャビティ成形75デュロメーターノンマーキングブラックSBR |
表面加工 | パウダー加工済みシャーシ・パネル |
ケースの寸法 (長さx幅x高さ) |
357mm x 155mm x 287mm – 長さx幅x高さ |
容積 | 15.9 L(リットル) |
重量 | ベースモデル(電源コードとライザーを含む) 記載無し Windowサイドパネル 記載無し 通気サイドパネル 記載無し 通常サイドパネル 記載無し パッケージ素材 記載無し |
セキュリティ機能 | ケンジントンロックX1 |
保証期間 | 2年保証 |
取得認証 | HTS Tariff Code 8473.30.80.00 Country of Origin United States of America |
リビジョン | SM580-A (7/8/19 – X/X/XX) 初期リリース |
今回オーダーした内容:
本体(白)X1
オプション:
- WindowsサイドパネルX2(両サイド)
- フロントパネルUSB C Header / 19-Pin 3.0 A付コネクタX1
- 通常 PCIe 3.0 16x ライザーX1
- 底面用3.5インチHDD及び120mmファン取付ブラケットX2
- メッキハンドルX1
- 電源ケーブル・・・標準とピッグテール両方
※ フロントのUSB Cヘッダーに関してはマザーボードに取り付け端子が無く、接続できませんでした。日本で一般売りされているマザーで対応しているものは非常に少ないのではないかと思います。
日本円で上記のオプション込み本体37,000円弱+送料8,000円に加え、関税の損益調整分2,500円が後から請求が来ました。
本体自体は常識的な価格に収まってはいますが、送料と関税の損益調整分がほぼ一万円のため、合計で48,000円弱と非常に高価なケースとなりました。
写真:
※ クリックすると別窓で拡大します。
このケースの特徴
このケースの特徴はスペックに様々なことが書いてありますが、280mmの簡易水冷と3スロットのGPUを標準でケース内に収められるということに尽きると思います。
ケースがあまりに高価なため、使うCPUは最高のものに限られると言っても過言ではないと思います。
このハイエンド構成にする場合、熱をスムーズに逃がすため、底面には140mmのファンを2つ設置することを推奨します。
HDDを設置してもよいですが、その場合、ケースのファンは上面の簡易水冷の140mmファン2つのみとなります。
ケースファン制御ではないファンのみの冷却というのは非常に不安があったため、私は底面に3.5″HDDをマウントすることを諦めました。
また、これ以外の構成ではもっと安く、常識的な価格で、国内取り扱いのRijitek Ophion EVOなどのケースが普通にamazonなどで販売されています。
よって構成はM.2 SSD1-2台マザーボードに設置して、SATAの2.5″SSD/HDD 9.5mm厚を2台、もしくは12.5mm/15mmのHDDを一台をフロントパネルに設置するという使い方になります。
それ以外の使い方で高い金を出し、アメリカから個人輸入してまでこのケースを購入する意味はありません。
電源はSFX-Lさえ設置スペースがぎりぎりになるため、今時SFX電源のみという非常にタイトなパーツ制限があります。
そのため、使える電源の最大容量はCorsairのSF750の750Wということになります。
また、空冷のCPUクーラーを使う場合は基本的に55mmの高さ制限がありますので、Thermalright AXP-100/AXP-200などのロープロファイル向けの高性能クーラーは使えません。
AXP100は使えますが、ファンを外してケースファンで冷却するという非常に変則的な使い方になりますので、実質使えないと考えてよいでしょう。
簡易水冷もメーカーが設置できると確認しているもので日本で入手性の高い280mmラジエーターの簡易水冷はNZXTのKRAKEN X62とThermaltakeの280mm簡易水冷のみとなります。
このケースを購入すると選択した時点で、構成が非常に限られてしまう、Mini-ITXでハイエンド構成を組む方のみのケースと考えもらって差し支えないと思います。
コスト的なメリットが0ですのでハイエンド以外の構成にする場合は普通に日本で販売されている小型Mini-ITXケースにした方が無難です。
分岐ライザーに関しては
分岐ライザーは、上級ユーザーにのみお勧めします。
分岐ライザーは、1つのPCIe 16x 3.0スロットを、それぞれに8x帯域幅を持つ2つのPCIe 3.0 16xスロットに分割する技術です。
サポートされている既知のマザーボードには、Gigabyte Z390 Auros,Z370N/ASRock Z390、Z370、X299、およびX99/ほとんどのサーバーマザーボードが含まれます。
購入する前にsales@sliger.comに連絡して、マザーボードとの互換性を確認してください。
と注釈がついており、メーカーさんで確認が取れているマザーボードはほぼintel限定となるようです。
今はRyzenが大流行していますが、AMD構成の場合は絶対に問い合わせして確認してから購入するかどうか決断したほうがよいでしょう。
購入オプションには両方というのはありませんでした。
基本的にケースに直付けされているため、取り外しや交換はできません。
そのため、残念ながら私は分岐ライザーを入手することはできませんでした。
分岐カードが機能すれば、2スロットGPU+4K60FPS対応の1スロット高性能画面キャプチャカードなど配信に向いた構成にすることも出来てMini-ITXの可能性を広げてくれる構成です。
ただし、このような変則的な構成の場合、安定的に運用できるという実績がどこにも公開されていないため、使っていくうちにどこかで不具合が発生する可能性があることは念頭においてください。
「動作する」とか「使える」ことと、「高負荷をかけても長期にわたって安定的に運用が可能」というのはイコールではありません。
例えば1週間に一度くらいの割合で再起動したりハングアップしたり、もしくは再現性の低い不具合などが発生したりした場合、そのマザーボードに由来する不具合なのか、分岐ライザーによるものなのか、メーカーでもほとんど確認はできないでしょう。
人と違う道を行くというのはそのようなリスクを背負うことだと頭の片隅に入れておいてください。
安全、安心な構成にしたい方はやはりATXで標準的な大きさのケースで組まれることをお勧めしておきます。
非常に作業性は低い
※ こちらが組み立てマニュアルになります。これを見て組み立て方法がよくわからないという方は購入は控えた方が良いです。当然全部英語です。
実際に組んでみました。
非常に作業性は低いです。
ラジエーターのマウントに当たっては、ケースの上部を分解せねばならず、一番最初に底面に設置するもの(ファンやHDD)を決めなくてはなりません。
また、内部が15.9Lと非常に狭いため、全て推奨通りのパーツをそろえてもケーブルは全てケーブルタイでまとめなければなりません。
マザーボード、電源、簡易水冷ユニットの交換が必要な場合、ほぼすべてをばらす必要があります。
あまりに作業性が低く、Youtubeに動画を上げる予定だったのですが、仮組-配線計画-作業-修正のPDCAサイクルを回していると長くなりすぎてしまうため、断念しました。
この記事を書いている時点でまだパーツがそろっていないため、長時間高負荷をかけた場合、どうなるのかの検証はまだ済んでいません。
実は初期に予算の都合でSATA2.5″SSD+3.5″HDDの構成にする予定だったのですが、あまりに内部が狭くて作業性が低いうえにパーツ交換する場合は基本的に全部分解する必要があるため、急遽ポリシーをまげてM.2SSD+2.5″HDDに構成を変更しました。
NVMe SSDには格安のLexarのM.2を購入しており、この記事を書いている時点ではまだ届いていません。
私はあまり格安のパーツは使わない主義ですが、もう一回全部分解する手間を考えると妥協せざるを得ませんでした。
この点は非常に遺憾です。
この記事を読んで購入を検討されている方がいましたら、このようなケースであることは頭に入れておいてください。
私はネタとして買いましたが、5万円近く払って購入する価値があるかどうかは人によりますが微妙です。
情報発信してなかったら確実に買わなかったでしょう。
工作精度は非常に高い
猛烈に高いだけあって工作精度は非常に高いです。
前面のパネルと両サイドのパネルは金属製のノッチ4か所を本体の穴に押し込む形で固定し、ねじは一切使われていませんが、まったくずれがありません。
6面ある本体の面当てもずれがほとんどなく、価格に見合った工作精度と言ってもよいでしょう。
Fractal DesignのDefine C Miniも各部の接合部に関しては面当てが多少ずれているのが手で触るとわかりますが、このケースの場合、ほとんどずれがありません。
トヨタ車の板金並みにずれが無いです。
工作精度が一般売りされている高級ケースと呼ばれるケースよりも一段階くらい上になります。
但し内部フレームはねじを回す際にたわみますので、やや弱いです。
日本での発売はあるか?
これは無いと思います。もともとが高い上によくある中国の上海や深セン、香港など工場からの発送ではなく、アメリカからの発送になるため、非常に高価につくからです。
日本で発売するならば、転売価格だと7万円程度は取らないとペイしないでしょう。
代理店価格にしても4万円以上、5万円に達するかも知れません。
一般的に売れ筋と呼ばれるMini-ITXケースは7,000円前後ですので、この価格では数が出ることは全く期待できません。
素晴らしいケースなだけに非常に残念です。
結論:
〇
280mmの簡易水冷+3スロット・325mmGPUというウルトラハイエンド構成が使える唯一無二のMini-ITX小型ケース
工作精度が非常に高い
質感が高い
パーツが非常に限られるが、構成によっては分岐ライザーカードが使え、Mini-ITXにも関わらずPCI-Express3.0の拡張スロットを2スロット使える
×
価格があり得ないくらい高い
使えるパーツの制限が大きい
空冷構成は考えない方が良い
よくも悪くもメーカーが想定する特定の構成以外の場合使いづらい
作業性が悪い