自作PCユーザーがゲーム用PCの解説をします

自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド

RTX 5090がなぜ5,000ドルもするのか ― AI企業がゲーミングGPUをパレット単位で買い占めている

投稿日:

■事実

RTX5090はMSRP 1,999ドルで発売されたが、現在は米国で最安でも約5,000ドル、欧州では€5,200を既に超えています。

香港のテックメディアHKEPCが2026年9月13日、X(旧Twitter)にAIサーバーを組み立てている業者の写真を投稿しています。(写真4枚付き)

投稿文は「中国の多くの業者が各地でRTX5090を買い集め、AIワークステーションに組み立てて販売している」という内容です。(原文中国語)

写真に写っているのは未開封の小売パッケージがパレット単位で積まれた状態で、開梱後マルチGPUシステムに組み込まれる様子です。

これらはRTX PRO 6000など業務用アクセラレータではなく、NVIDIAがPCゲーマー向けに販売している通常のGeForce RTX5090そのものです。

写真の中には、AI性能を制限した中国向け特別仕様(RTX5090 D/V2)は写っておらず、グローバル仕様の無印RTX5090であることが確認できます。

RTX5090 Dは輸出規制対応のためAI性能が通常版の3,352 TOPSから2,375 TOPSへ約29%引き下げられており、マルチGPU動作も制限されています。

025年4月にも、ベトナムの業者がRTX5090を7枚使い消費電力4,000W・8ピン電源ケーブル28本というカスタムAIサーバーを組んだ事例を報じられています。

過去にも、中国国内でRTX5090のパレット出荷が目撃された件についてMSIが自社の関与を否定したと報じられています。

各カードにシリアル番号がある以上、NVIDIAがAIB・販売代理店経由の大量販売を追跡・制限することは技術的に可能なはずだが、実際にはそうした対策は取られていないと指摘しています。

結局のところ、RTX5090はもはやゲーミングカードではないのだろう。

 

ソース:

  • HKEPC(X投稿) https://x.com/hkepcmedia/status/2097959743994388735

■解説

5,000ドルという価格は単なる品薄値上げではなく、GDDR7を含むDRAM供給全体が逼迫しているという構造要因が背景にある。TrendForceなどの分析では、AIデータセンター向けHBM生産へのシフトにより2026年のGDDR7供給が圧迫されているとされる。

一部のメモリサプライヤーは2026年末にかけて月10〜20%規模の追加値上げを顧客に通告しているとの報道もあり、AIB側のコスト増そのものが価格転嫁の一因になっている可能性がある。

この構図は2021年の仮想通貨マイニングブームと相似形だ。当時NVIDIAはLite Hash Rate版RTX30を投入してマイニング性能だけを制限したが、2022年にはほぼ回避されてしまった過去がある。

ただし今回はNVIDIA自身がAI事業に深く依存しているため、当時のような抑制インセンティブが働きにくい。記事中でも「Jensen Huang氏のSNS投稿はAI信者と投資家のエコーチェンバーに過ぎない」と評されている。

製造側(NVIDIA/AIB)には技術的な抑止手段(シリアル番号によるロット追跡、RTX5090 Dのような性能制限版の投入)が既にあるにもかかわらず、通常版RTX5090の法人向け大量販売には手をつけていない ― 「儲かる限り黙認する」という構図に読める。

流通側ではMSIが過去に「パレット出荷は自社正規チャネルではない、並行輸入品」と釈明した経緯があり、AIBメーカー自身も自社ブランドが意図せず輸出規制の抜け道に使われることに神経を尖らせている。

中国側の受け手企業が輸出規制対応版のRTX5090 Dではなく無印グローバル仕様を欲しがっている点が重要。AI推論・学習用途では素のAI性能が価値の源泉であり、規制対応版は「使い物にならない」と判断されている可能性が高い。

見方を変えれば、これは米国の対中輸出規制の実効性そのものを問う話でもある。並行輸入と現地組み立てというグレーな経路さえあれば、規制対象スペックのGPUが実質的に中国のAI企業の手に渡ってしまう。

一番コストを負わされているのはゲーマー層。MSRP 1,999ドルで買おうとしても、原価度外視で買い占めるAI業者と同じ土俵で競わされる以上、実質的な市場価格はAI需要側が決めてしまっている。

一方でこの値上がりを全てAI需要のせいにするのは単純化しすぎとの見方もある。転売ヤーの介在や、一部消費者が関税を原因視する声もある。(ただし半導体の大半は関税対象外との指摘もあり、この説には疑問符がつく)

時間軸で整理すると「過去(2021年仮想通貨ブームとの既視感)」「現在(HKEPCが可視化したパレット単位の中国組み立ての実態)」「未来(GDDR7価格が月次10〜20%ペースで上昇し続けるという供給側予測により、2027年以降も高値継続の可能性)」という3つの軸が重なっている構造だ。

 

「ゲーミングカードのはずが、いつの間にかAIカードになっていた」は、RTX5090の一種のアイデンティティクライシスと言えるかもしれない。

「1,999ドルのはずが5,000ドル」に驚くより先に、「そもそもこの製品は誰のために売られているのか」を問い直す時期に来ているのかもしれない。