■事実
UAE(ドバイ)拠点の修理業者「GPU Solutions」が、GeForce RTX2080TiのVRAMを11GBから22GBに倍増させる改造サービスを提供しています。
手法は基板レベルの改造(マイクロソルダリング)です。11GBモデルが搭載する1GB GDDR6チップ11枚を、2GB GDDR6チップに張り替えています。
RTX2080Tiの改造では基板上の「メモリストラップ抵抗」の構成変更も必要です。従来の(Low/Low/Low)から(High/High/Low)に変更することで、GPUがより大きなメモリ容量を認識できるようになります。
部品交換後はVBIOSを書き換え、ドライバが22GB構成を正しく認識できるよう調整した上で、負荷テストを実施しました。
同社はRTX3070についても8GBから16GBへ増設する同様のサービスを提供しています。
対象はTU102ダイ搭載のRTX2080Tiのうち、対応する基板レイアウトのモデルに限られる。申し込み時に型番の申告が必要でする
作業期間は12日間。UAE国内向け集荷・配送料はAED50(約14ドル)。作業・部材に対する90日間の保証が付帯しています。
今回の話題の一次情報源であるWccftech(2026年7月29日付)の記事では、現時点の具体的な改造料金は公表されていませんる
VideoCardzの報道によれば、同社は約2年前にもこのサービスを広告しており、当時のアーカイブページではRTX2080Ti改造の価格はAED860(当時のレートで約234ドル)と表示されていました。ただしこれは現在の価格を反映したものではないとされています。
一方、Wccftechの報道を引用する別のメディア(Windows News)によれば、GPU Solutions公式サービスページの価格欄は現在「AED0」というプレースホルダー表示になっており、FAQには「メモリ部材価格の急激な高騰により、VRAM増設サービスを一時的に停止している」との説明が記載されているといわれています。この停止措置はRTX2080TiとRTX3070の両方の改造に適用されるとしています。
情報源間で「現在受注可能」と「一時停止中」の記述に食い違いがあり、少なくとも本稿執筆時点でサービスの受注可否を断定できる一次情報は確認できていない
こうした改造の背景には、2023年頃に流出したNVIDIA内部ツールがあるとされ、以降RTX20/30/40世代、一部50シリーズでも同種の改造がmoddingコミュニティや修理業者の間で行われてきました。
過去の類似事例として、2024年2月にeBayで「22GB仕様に改造されたRTX2080Ti」が499ドルで出品された例がある(GPU Solutionsとは無関係の別出品者)。出品者は「NVIDIA公式ドライバでそのまま動作」「BIOS改造不要」と説明していました。
別の過去事例(RTX3070を8GBから16GBに改造したケース)では、NVIDIA公式ドライバが後に16GB構成を認識しなくなり、対応する旧バージョンのドライバへ固定する必要が生じたとWccftechが報じています。
表(比較用)
| GPU | 元のVRAM | 改造後VRAM | 提供元・時期 | 価格目安 |
|---|---|---|---|---|
| RTX2080Ti | 11GB | 22GB | GPU Solutions(UAE)、2026年7月時点 | 非公開(アーカイブ上の旧価格はAED860≈$234、現行反映せず) |
| RTX3070 | 8GB | 16GB | GPU Solutions(UAE) | 非公開 |
| RTX2080Ti | 11GB | 22GB | 個人出品者(eBay)、2024年2月 | $499 |
解説
VRAM増設改造自体は目新しい話ではなく、コンシューマー向けGPUのメモリ容量に対する不満がmoddingコミュニティの間でずっとくすぶっていたことの表れと言える。
22GBという容量は現行のRTX3090/4090クラスに匹敵する水準で、ゲーミング用途というよりローカルLLM推論やStable Diffusionなど、AI用途を強く意識した選定に見える。
ただし記事化にあたっては注意が必要。GPU Solutions自身のFAQでは一時停止中と説明されているとの報道もあり、「常時受付中のサービス」と断定しない書き方が無難だ。
ドライバ非対応リスクは軽視できない。RTX3070の16GB改造では公式ドライバが後から認識しなくなり、旧ドライバへの固定を強いられた前例がある。NVIDIAの正規ハードウェアIDデータベースに存在しない構成である以上、将来のドライバ更新で動作しなくなるリスクは常につきまとう。
Turingアーキテクチャ自体の演算性能は変わらないため、22GB化はあくまで「メモリ容量の余裕」を買うものであり、フレームレートやAI推論速度そのものを底上げするわけではない。ゲーム用途での恩恵は限定的で、VRAM律速になりやすいAI・クリエイティブ用途の方が向いている。
メモリ価格高騰という2026年の市場環境そのものが、こうした改造ビジネスの採算を直撃している構図は、正規GPUメーカー側の値上げ圧力(先日取り上げたRTX5080の話題)と地続きの話。中古GPUの延命需要とメモリコスト高騰という2つの潮流がぶつかっている状況だ。
8年落ちのGPUを開腹手術してまで延命させるあたり、もはや修理業者というより外科医の領分では。
「安さ」を求めて古いGPUを改造に出す前に、まずサービスが本当に稼働しているか確認したほうがよさそうだ。