■事実
リーカーMEGAsizeGPU氏が、NVIDIAが計画していた「GeForce RTX5050 9GB」モデルについて「キャンセル、もしくは無期限延期」とX(旧Twitter)上で投稿しました。
VideoCardzが各AIB(ボードパートナー)に問い合わせたところ、RTX5050 9GBに関する新しい情報は得られていないと回答、現時点で近い将来の発売計画は確認できない状態です。
噂のRTX5050 9GBは、GDDR6からGDDR7メモリへ変更する一方でメモリバス幅を128bitから96bitへ縮小する仕様とされていました。
仕様変更による帯域の伸びはごくわずか(320GB/s→336GB/s)で、増えるVRAM容量もわずか1GBにとどまる計算でした。
同じくMEGAsizeGPU氏によれば、NVIDIAは同じ予算帯向けに「GeForce RTX3060 12GB」を再販する計画で、これがRTX5050 9GBの存在意義を薄れさせたとされています。
RTX3060 12GBは2021年1月発売、MSRPは329ドル、Samsung 8nmプロセス製造のAmpereアーキテクチャGPU、192bitバスでGDDR6メモリ12GBを搭載しています。
RTX3060 12GBの新規生産再開は2026年1月頃から関係者間で噂され、6月には韓国・ドイツ市場で新ロットの店頭流通が確認されています。
米国ではNeweggでGigabyte製RTX3060 12GB(Rev2.0)が339.99ドルで販売開始、MSRP比でわずか10ドル高です。
ドイツ市場では333ユーロから流通開始、同地域の昨夏(2025年)の価格水準(245ユーロ〜)と比べると値上がりしています。
NVIDIAは2026年1月のCES 2026でジェンスン・フアンCEOが「旧世代のトレーリングエッジノードGPUを再投入するのは良いアイデアだ」とコメントしており、今回の動きはこの発言を裏付ける形です。
RTX3060 12GBはDLSSフレーム生成・マルチフレーム生成など最新世代の機能には非対応、レイトレーシング性能でもRTX5050・RTX5060に劣ります。
一方でRTX3060 12GBの12GB VRAMは、8GBにとどまるRTX5050・RTX5060より大容量で、Steam Hardware Surveyでも今年に入って上位に再浮上した実績があります。
背景にはGDDR7メモリの供給逼迫とTSMC 4nmプロセスの生産能力がRTX40・RTX50シリーズに優先配分されている事情があり、Samsung 8nmで製造可能なAmpereチップの再投入はNVIDIAにとって生産面のハードルが低い選択肢となります。
NVIDIAはRTX5050 9GBと同時期に噂されていたRTX5060・RTX5060 Ti 9GB版についても、今のところ正式発表はありません。
■表:未発売のRTX5050 9GBとRTX3060 12GBの比較
複数記事の情報を統合。RTX5050 9GBの仕様は確定情報ではなく、リーク情報に基づきます。
| 項目 | RTX5050 (現行・8GB) |
RTX5050 9GB (噂・キャンセル説) |
RTX3060 12GB (再販) |
|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | Blackwell(GB207) | Blackwell(GB207) | Ampere(GA106) |
| 製造プロセス | TSMC 4nm系 | TSMC 4nm系 | Samsung 8nm |
| CUDAコア数 | 2,560 | 2,560 | 3,584 |
| メモリ規格 | GDDR6 | GDDR7 | GDDR6 |
| メモリ容量 | 8GB | 9GB | 12GB |
| メモリバス幅 | 128bit | 96bit | 192bit |
| メモリ帯域 | 約320GB/s | 約336GB/s | – |
| DLSSフレーム生成 | 対応 | 対応(想定) | 非対応 |
| 発売年 | 2025年 | 未発売・見送り | 2021年(再販) |
| 想定/実勢価格 | 約300ドル | – | 約339ドル〜 |
解説
RTX5050 9GBという仕様そのものが、最初から「中途半端」だった。GDDR7化はするのにバス幅を96bitに削るという組み合わせは、VRAM容量・帯域どちらの面でも決定打にならない設計だった。
結局NVIDIAが選んだ答えは「新しい中途半端なGPUを出す」ではなく「5年前の枯れたGPUをそのまま再販する」だったというのが今回の話のポイント。
帯域の問題は小さくなったが容量の問題は依然残る、という構図がここでも顔を出している。最新世代でも8GB止まりの製品が多い中、12GBという容量だけで存在価値を主張できてしまうのが今のローエンド市場の歪さだ。
RTX3060 12GBはDLSSフレーム生成にも対応せず、レイトレーシング性能でも今のRTX5050にすら劣る。それでも「12GBあるから」という理由だけで選ばれる可能性があるあたり、性能より容量が優先される異常事態が起きている。
価格面でも皮肉な状況。339ドルという再販価格は、5年前のMSRP(329ドル)とほぼ同じどころか、より高性能なRTX5060ともわずか数十ドルしか変わらない水準。「型落ちだから安い」という常識は通用しない。
これはNVIDIAの戦略というより、GDDR7・TSMC先端プロセスの供給がAI需要に食われている結果としての苦肉の策と見るのが正確だろう。
枯れた5年前のGPUを「新製品」として店頭に並べる時代が来るとは、誰も予想していなかったのではないか。
ローエンド製品に陳腐化しやすい古い製品をラインナップに復活させ、新しい製品をキャンセルするという選択は非常にNVIDIAらしい。
様々な批判を浴びても選ばれ続けるあたり、NVIDIAは今のゲーミングGPUでも神になったといってもよいだろう。
最近のAAAゲームは必要とされるVRAMの容量が増えており、RTX5050 9GBより実際にRTX3060 12GBの方が快適に遊べてしまう可能性がある当たり、なかなか皮肉なところだ。
このような話を聞くと、GTX1000やRTX2000の牧歌的な時代に戻るのはいつなのかと考えてしまう。GTX1000シリーズはもう10年前だ。