※ 嘉造は記事の内容をもとにしたイメージです。必ずしも現実を反映しているわけではありませんのでご注意ください。
■事実
ATX12VO規格の経緯
ATX12VO(ATX 12V Only)はIntelが2020年に策定したPSU規格。従来ATXで電源ユニット内で行っていた5V・3.3V変換をマザーボード側に移し、PSUを12V単一出力に簡略化する思想です。
2022年にV2(ATX12VO 2.0)へ改訂。ATX 3.0・12VHPWRコネクタと同時リリースし、アイドル消費電力の低減を主な改善点としていました。
V1・V2ともにOEMメーカー(BTO・一体型PC)での採用が中心で、自作市場への普及は限定的で、対応マザーボードと対応PSUの両方が必要という二重の障壁が普及を妨げました。
ATX12VO V3の主な変更点(リークスライドより)
情報源はXユーザーのmomomo_us(188号)が公開したIntel内部スライド。Computex 2026直前のリークです。
スライドの謳い文句は「Simpler(簡素化)、Smaller(小型化)、Smarter(高機能化)」の3つです。
コネクタの変更:
メインコネクタのピン数が10ピン→8ピンに削減されました。
スタンバイレール(+12VSB)を完全廃止したことによる削減し、常時給電用の専用レールをなくし、メイン12Vを常時オンにする設計になりました。
24ピンATXコネクタも廃止対象(ヘッダーはATX12VO V3 MAINとして12ピン構成に)です。
CPUコネクタも4.2mm→3mmに小型化(51%サイズ削減)しました。
動作モードの追加:
Low Power mode / High Power modeの2モード制御を導入しました。
低負荷時は省電力モード、高負荷時は安定供給モードに自動切替。効率と安全性の両立が狙くなっています。
PMBUS(Power Management Bus)の導入:
サーバー向け電源で一般的な通信インターフェース「PMBUS」をデスクトップPCに初導入されました。
メインコネクタのオプションピン4本(計12ピン)を使い、PSUとシステム間でデジタル通信が可能になりました。
PSUのリアルタイム状態監視、システムへの過負荷通知などが実現できます。
効率改善の数値(リークスライドのベンチマーク)
テスト構成はLenovo LOQ Gaming Tower(Core i5-14400F+GeForce RTX 4060)のATX12VO v3機 vs ASUS Z790M-Plus Prime(同CPU・GPU構成)の通常マルチレールATX機です。
アイドル時はATX12VO V3の消費電力を1とした場合、マルチレールATXは1.29倍(≒29%増)です。
負荷時ベンチマークはマルチレールATXは1.12倍(≒12%増)です。
効率向上のメリットはアイドル・低負荷時に特に大きく、ゲーミングPCの「起動しているだけ」の状態での節電効果が高くなっています。
発表・普及見通し
Intelはまだ正式発表していないが、Computex 2026(6月2日〜、リップ・ブ・タンCEO基調講演)での発表が有力視されています。
仕様確定から実製品登場まで数年かかるのがこの規格の常で、V3が今年発表されても、対応PSU・マザーボードが店頭に並ぶのは2027年以降になる可能性が高くなっています。
解説
ATX12VO V3の最大のニュースは「24ピンコネクタが消える」という視覚的なインパクト。ただし現時点はリーク段階であり、確定情報として扱うのは早計だ。
スタンバイレール廃止は理にかなっている——現代のPCはスリープ・シャットダウン中も常時5VSBや12VSBで待機電力を消費しており、ここをカットするのは効率改善として有効だ。
PMBUSの導入は長期的に見て重要だ。GPUが過電力引きしたときにPSUがシステムに通知して制御できれば、12VHPWR溶断問題のような事態を減らせる可能性がある。
ただし「自作市場での普及」という点では、V1・V2の前例が暗い——6年経っても自作向けの対応製品はほぼ存在しない。V3でこの壁が崩れるかは未知数だ。
普及の鍵はAMDプラットフォームへの対応。IntelだけでなくAMD対応マザーボードメーカーが動くかどうかで普及速度が大きく変わる(MSIはV2でAMD向けを計画していたが立ち消えた経緯がある)。
効率比較のベンチマーク対象がLenovo OEM機というのは少し気になるところ。自作向けハイエンド構成(350W級CPU+600W級GPU)での挙動は別の話になる。
「24ピンよ、さらば」と言いたいところだが、ATX12VOがそう言い続けてもう6年。今度こそ、という気持ちと、また言ってるという気持ちが拮抗している。
規格として正しい方向性なのは誰もが認めるところ。あとは業界が本気で揃うかどうか——それがずっと問題だった。
ATX12VはPSU側はコスト減になるが、マザーボード側が設計が複雑になり、コスト増の要因になるため。
OEMで普及が進んでいるのはメーカー側が一貫してトータルのコストを考えるから。
自作リテール市場の製品が従来のATXから進まないのはこれが要因で、自作ユーザーなら覚えておいて損はないだろう。