■事実
AMDのMFG準備状況
現時点でAMDのFSR(FidelityFX Super Resolution)フレームジェネレーションは「2倍モード」のみ対応しつまり1フレーム補完して描画レートを約2倍にする機能にとどまっています。
AMDは2025年12月にFSR “Redstone”をリリース済み;AIベースのアップスケーリング4.1、フレームジェネレーション4、レイリジェネレーション1.1などを含むが、MFGは含まれていません。
FSR Redstoneの各機能はRDNA 4アーキテクチャ(Radeon RX 9000シリーズ)専用で、従来世代GPUにはFSR 3.1ベースのアップスケーリングとフレームジェネレーションが引き続き提供されます。
AMDがADLX FidelityFX SDKの最新アップデートに「IADLX3DFidelityDXFrameGenUpgradeRatioOption」という新インターフェースを追加しました。
このAPIは、フレームジェネレーションの「倍率」をユーザーが選択できるようにするもので、MFG(マルチフレームジェネレーション)の実装が近いことを示す技術的な手がかりです。
競合他社のMFG状況(比較)
IntelはXeSS(Xe Super Sampling)3でMFGを2026年1月に導入し、最大4倍(3フレーム補完)まで対応しています。
Intelは2026年2月のドライバー更新でXeSS 3 MFGをArc B系列(Battlemage)、Arc A系列(Alchemist)、Meteor Lake/Lunar Lake/Arrow Lake統合グラフィックスにまで展開済みです。
XeSS 3のMFGはXeSS 2対応済みのゲームであれば、ゲーム側のアップデート不要でドライバーのオーバーライド機能から利用可能です。
NVIDIAはRTX 5000シリーズと共にDLSS 4 MFGを導入(2025年初頭)し、最大4倍モード(3フレーム補完)に対応しています。
NVIDIAはさらにDLSS 4.5にてDynamic MFGを追加(2025年3月末ベータ開始)し、モニターのリフレッシュレートに合わせて自動的に倍率を調整する最大6倍モードまで対応しています。
MFGの技術的な仕組みと注意点
MFGによる恩恵を受けるには一定以上のベース描画レートが必要で、60fps未満のベースでは補完アーティファクトが目立ちます。
MFGは「補完(interpolation)」技術で、すでにレンダリングされた2枚のフレームの間にAIが生成したフレームを挿入する方式です。
生成フレームにはプレーヤーの入力が反映されず(入力受付はネイティブレンダリングレートに縛られる)表示フレームレートは上がっても、ゲームが入力を受け付けるのはネイティブに描画したフレームのタイミングのみです。
NVIDIAはこの入力遅延問題をReflex技術で緩和し、DLSS MFGはReflex有効化が必須要件です。
IntelのXeSS MFGもXe Low Latency(低遅延技術)との組み合わせが推奨されています。
今後のAMD技術ロードマップ
AMDはさらに先を見据えた「FSR Diamond」技術も開発中;次世代Xbox・PlayStation向けおよびRDNA 5 GPU向けに設計されるとされています。
FSR Diamondの具体的なPC向け対応状況・対応GPU世代は現時点では未発表です。
比較表:各社フレームジェネレーション対応状況(2026年4月時点)
| 項目 | NVIDIA DLSS | Intel XeSS | AMD FSR |
|---|---|---|---|
| 通常フレームジェネレーション(2倍) | RTX 2000以降 | Arc A/B系列、Core Ultra iGPU | RX 5000以降(FSR 3.1.6)※1 |
| MFG(3倍/4倍) | RTX 5000シリーズ(DLSS 4) | Arc A/B系列全GPU、Core Ultra iGPU | × 未対応(準備中) |
| 最大倍率 | 6倍(DLSS 4.5 Dynamic MFG) | 4倍 | 2倍 |
| 動的倍率自動調整 | DLSS 4.5 Dynamic MFG | × | × |
| 低遅延補正技術 | Reflex(必須) | Xe Low Latency(推奨) | Anti-Lag 2(推奨) |
※1 ML(機械学習)ベースのフレームジェネレーション4はRDNA 4(RX 9000シリーズ)専用です。
解説
NVIDIAが6倍、Intelが4倍まで来たところにAMDが「2倍に加えて倍率選択のAPI追加しました」と登場するのは、マラソン中に「靴紐締め直しました」と報告する感じでほほえましくもある。
MFGは「より多くの生成フレーム=より良い体験」とは限らない技術で、AMDが後発として何倍まで対応するかより、「ゲーム体験として実用的か」という設計思想のほうに注目したい。
AMDがSDKにAPIを1行追加しただけで「MFG準備中」と話題になるあたり、業界がいかにこの機能を待ちわびているか伝わってくる。
現状はNVIDIAが最大6倍、Intelが4倍、AMDが2倍という序列で、フレームジェネレーション競争でAMDが一周遅れになっている構図だ。
Intelが旧世代Arc A系列(Alchemist)や統合グラフィックスにまでMFGを展開したのは、ある意味 “量より広さ” の戦略;ゲームタイトル対応数は少ないものの、対象ハードウェアの広さでは他社を上回る。
ただし現実問題として、Intelの旧世代GPU(Arc A380など)にMFGを乗せても実用的な性能は出にくく、ゆっくりしたゲームで2〜3倍なら使えるという話で、高速なFPSゲームでは苦しい。
MFGの最大の問題点は製造元があまり大きく宣伝しないことにあり、生成フレームにはプレーヤーの入力が反映されず、(入力受付はネイティブレンダリングレートに縛られる)「240fps出た!」と喜んでも、実際に入力を受け付けるのは元の60fps分のタイミングだけ、という話であることは読者に正確に伝えるべき。
このため、競技系FPSプレーヤーがフレームジェネレーション全般を無効にして使うケースがあり、ゲームジャンルや用途によって有益かどうかが大きく変わる技術である。
つまりフレーム生成を含めて、MFGは比較的性能の低いGPUの性能を底上げする技術ではなく、60FPSが出せる性能のGPUとゲームの組み合わせでさらにフレームレートを底上げする技術である。
AMDにとってMFGの追加は単なる機能拡充ではなく、「ハイエンドGPUを持っているのにMFGが使えない」というRadeon RX 9000シリーズユーザーへの説明責任でもある。
FSR 4アップスケーリング・フレームジェネレーション4はRDNA 4専用であり、RDNA 3以前のユーザーには恩恵が少ないという問題はMFGとは別に依然として残っており、既存ユーザー切り捨て問題として引き続き注目すべき点だ。
AMDはRDNA3以前のGPUでFSR4を実装したらRDNA4の売り上げが下がると思っているのかもしれないが、サポートが短いという欠点がフォーカスされてしまっているのが現状のように思う。
FSR Diamondが次世代コンソール向けという話は興味深く、PS6・次世代Xbox向けAPUに搭載されるとすれば、その性能が将来のPC版FSRにフィードバックされる可能性がある。
個人的にはMFGやフレーム生成はゲームを快適にする決定打になるような種類のものではないと思っている。
遅延は必ず発生し、各社とも処理の順番を変更するなどして遅延を隠蔽しているが、まったく新しいフレームを予測して生成する外挿ではなく、フレームとフレームの間のフレームを補完する技術である限りは限界はある。