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新型Nintendo Switch 2は、交換可能なバッテリーの代表例となるかもしれない。

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※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージで、必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。

■事実

Nintendo(任天堂)が、欧州連合(EU)市場向けにバッテリーをユーザー自身で交換できる改訂版Nintendo Switch 2の投入を計画していることが、日本経済新聞(Nikkei)の報道をThe Vergeが伝える形で明らかになった(https://www.theverge.com/games/898313/nintendo-switch-2-eu-replaceable-battery)。

Nikkeiによれば、改訂モデルの発売時期は「まもなく」とされているが、具体的な日程は明示されていない。

Nintendoはこの報道に対して、The Vergeへのコメント依頼に即答しなかった。

EU電池規制:2027年2月18日が期限

今回の改訂計画の直接的な原因は、EUが2023年に成立させた電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)だ。

同規則は、ポータブルバッテリーを搭載した製品について、「エンドユーザーがその製品のライフタイムを通じて、いつでも、専用工具・熱・溶剤を使わず、市販の工具だけでバッテリーを安全に取り外し・交換できること」を製造業者に義務付けている。

このバッテリー交換容易化に関する規定の適用開始日は2027年2月18日だ。 同日以降にEU市場で販売される対象製品は、すべてこの要件を満たさなければならない。 なお、同規制は製品ラインや製品カテゴリではなく「個別の製品ユニット」に適用されるため、適用開始日以前に市場に投入済みの既存在庫は対象外となる。

対象製品の範囲は広く、Nintendo Switch 2に限らず、ラップトップ・ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンなど、ポータブルバッテリーを搭載するほぼすべての消費者向け電子機器が含まれる。 ただし、携帯電話とタブレットについては今回の規制の適用除外となっている。

EU電池規則はバッテリー交換の容易化だけでなく、製造業者に対してユーザーが購入・交換できる純正バッテリーパーツを入手可能な状態に保つことも求めている。 つまり、ハードウェア設計の変更に加えて、交換用バッテリーの供給体制の整備も義務付けられることになる。

なお、EU規制への対応が困難と判断された場合、2027年末には初代Nintendo SwitchがEUでの販売を終了せざるを得ないとの見方もある。

他のメーカーもすでに対応を進めている。 Appleは近年のiPhoneにおいて、EU規制を見据えた内部設計の見直しを行い、バッテリー交換を容易にする改良を施した。 SonyはDualSenseコントローラーについて、対象地域向けにバッテリーをユーザーが交換しやすい設計を採用済みだ。

現行Nintendo Switch 2の修理容易性評価

修理情報サイトiFixitが実施した現行Nintendo Switch 2の分解調査では、修理容易性スコアが10点満点中3点と評価されている。

この数値は、初代Nintendo Switchの現行スコア(4点)をさらに下回る。 初代Nintendo SwitchはiFixitが最初に評価した2017年時点では8点を獲得していたが、2025年に改訂された評価基準への照らし合わせにより4点に引き下げられている。

iFixitの調査では、Nintendo Switch 2本体のバッテリーについて「初代Nintendo SwitchやSteam Deckと同様、強力な接着剤で本体に固定されており、取り外しにはこじ開けツールとイソプロピルアルコールが必要」と指摘されている。 この設計では、EU規制が定める「市販の工具だけで交換できること」という要件を満たせないことは明白だ。

Joy-Con 2については、外観は比較的容易に開けられるように見えるが、接着剤で固定された樹脂製のリブの下に隠しネジが複数存在する。 内部に入ってもバッテリーは接着剤で固定されており、こちらも交換作業は容易ではない。

その他iFixitが指摘した主な問題点を以下に示す。

  • フラッシュストレージモジュールとUSB-Cポートがメインボードにはんだ付けされているためユーザーレベルでの交換が事実上不可能
  • 複数のネジがステッカーの下に隠されている
  • 3種類の異なるサーマルパーストが使用されており、補修部材の調達が困難
  • ゲームカードリーダーがメインボードにはんだ付けされている

加えて、NintendoはNintendo Switch 2向けの公式修理パーツも公式修理ガイドも提供していない点も低スコアの一因となっている。

改訂モデルの変更内容

Nikkeiの報道によれば、改訂モデルでは本体とJoy-Con 2の両方について、ユーザーが自分でバッテリーを交換できる設計に変更される。

「交換可能」とは、単三電池のように抜き差しできるという意味ではない。 EU規制が定めるとおり、専用工具や特殊な溶剤を使わずに、市販の工具で安全に取り外し・交換できる設計への改善を指すと考えられている。

具体的な内部設計の変更内容(接着剤の廃止やネジ止めへの変更など)については、現時点では詳細が公開されていない。

なお、The Vergeは「今後コンソールの世代が10年近く続く状況を考えると、バッテリー交換を容易にすることはユーザーが長く使い続けられるという意味で強く歓迎したい」との見解を示し、EU限定にとどまらず他地域への展開を期待している。

地域展開の見通し

Nikkeiの報道では、日本では現行のNintendo Switch 2が仕様変更なく継続販売される予定とされている。

米国を含む他の地域への展開については、「修理権(Right to Repair)に対する消費者意識が日本や米国でも高まれば対応を検討する」とNikkeiは伝えている。

現時点では、EUの法規制対応としての地域限定モデルという位置付けになる。

米国ではRight to Repairに関する連邦レベルの包括的な立法は実現していないが、ニューヨーク州では2023年7月1日以降に製造・販売された製品を対象とする修理権法が成立している。 EUと類似する法規制が他の地域でも整備されれば、改訂モデルの展開範囲が広がる可能性がある。

地域限定モデルの先例として、フジフイルムのInstax Mini Link 3がEU限定でユーザー交換可能なバッテリーを採用している事例をThe Vergeは紹介している。

※ 画像は記事の内容をもとにしたイメージで、必ずしも現実を反映しているわけではありませんので注意してください。

■解説

正直なところ、「やっとか」という気持ちと「なぜ最初からやらなかったのか」という疑問が同時に浮かぶ。

EU電池規則は2023年に成立していた。 Nintendo Switch 2の発売が2025年6月である以上、設計段階でEU要件への対応を盛り込む時間は十分あったはずだ。 iFixitのスコアが示すとおり、現行モデルのバッテリーは強力な接着剤で固定されており、明らかにEU規制の要件を満たしていない。 EU向け改訂モデルを後出しで用意しなければならない事態は、設計時の見通しの甘さだったと言わざるを得ない。 米国に次いで第2の主要市場であるEUでこうした後手対応を強いられるというのは、コスト面でも、ブランドイメージの面でも、好ましくない状況だ。

EU限定で終わるかどうかが最大の注目点

個人的に最も気になるのは、「この改訂モデルが本当にEU限定で終わるのか」という点だ。

製造コストの観点では、EU向けと非EU向けで設計が異なる2種類のモデルを並行生産するよりも、全世界で1種類のモデルに統一する方が圧倒的にシンプルで低コストだ。 Nikkeiが「日本や米国でも消費者意識が高まれば対応を検討する」と伝えている文言は、全世界展開への含みを残したものと読むこともできる。

初代Nintendo Switchは2019年にチップを刷新した改訂モデル(いわゆるMariko版)を投入し、後にNintendo Switch Liteや有機ELモデルへと展開していった実績がある。 今回のバッテリー交換可能モデルが、Nintendo Switch 2ラインナップ全体の設計基盤になる可能性は十分ある。

要するに、「EU対応がきっかけで全世界モデルが改善される」という流れは、コスト論的にも自然だと見ている。

修理容易性はコンシューマーゲームハード全体の課題

もう一点触れておきたいのが、これが単なるNintendo個社の問題ではなく、コンシューマー向けゲームハードウェア全体の設計思想に関わる話だという点だ。

コンソールのライフサイクルはここ数世代で明らかに長くなっている。 Nintendo Switch初代は2017年の発売から8年以上にわたって市場に存在し続けた。 Nintendo Switch 2もそれに近い寿命を持つとすれば、数年後にバッテリーが劣化した際の現実的な選択肢は「メーカー修理(数万円)」か「本体買い替え」だけということになる。 バッテリー1個の劣化で本体全体を廃棄せざるを得ない状況は、明らかに不合理だ。

バッテリーが自分で交換できれば、本体の使用可能期間が大幅に延びる。 電子廃棄物(e-waste)の削減にも繋がるし、中古市場の健全化にも貢献する。 Sonyが規制に先んじてDualSenseのバッテリー交換設計を採用した動きを見ると、業界が少しずつこの方向に進みつつあることは確かだ。

日本ユーザーとしては今すぐ購入判断を変える必要はないが、EU向け改訂モデルの設計が全世界展開されるかどうかを見極めてから購入を検討するのも悪くない選択肢だと思う。 もし全世界統一モデルに移行する方向性が確認されれば、それを待つことに十分な合理性がある。

EU規制という外圧が、修理容易性への真剣な取り組みをNintendoと業界全体に促すなら、それは文句なしに歓迎すべき「外圧」だ。