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TSMCの最大顧客がAppleからNVIDIAに交代、AI需要の高まりで優先出荷も見直しか

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※ 画像は記事の内容を基にしたイメージです。

 

半導体受託製造大手のTSMCにおいて、長年トップ顧客の座を占めてきたAppleが、AI向けGPU需要の急増によりNVIDIAに首位を明け渡したことが明らかになった。この変化は単なる順位の入れ替わりにとどまらず、Appleが享受してきた優先的な生産体制にも影響を及ぼす可能性が指摘されている。

NVIDIAのジェンセン・フアンCEOは、ポッドキャスト番組「A Bit Personal with Jodi Shelton」の初回エピソードで、NVIDIAが現在TSMCの最大顧客であることを明言した。番組ホストでGlobal Semiconductor AllianceのCEOを務めるジョディ・シェルトン氏が、フアン氏の自信の源について質問した際、「モリス・チャン氏(TSMC創業者)も同様の話をしていました。あなたが初めて会った時、すぐに『私はあなたの最大顧客になる』と言ったそうですね」と振り返った。これに対しフアン氏は笑いながら、「ところで、モリス(・チャン氏)はNVIDIAが今やTSMCの最大顧客だと知って喜ぶでしょう」と応じた。

この顧客順位の変動は、半導体業界における需要構造の大きな転換を象徴している。TSMCの2024年の年間売上において、Appleは24%を占めていたが、2025年にはNVIDIAがトップの座を獲得した。現在NVIDIAはTSMC総売上の13%を占めるまでに成長している。この逆転劇の背景には、生成AIブームに伴うデータセンター向けGPUの爆発的な需要増加がある。

NVIDIAとTSMCの関係は、実は2000年代初頭まで遡る。当時NVIDIAは既にTSMCの最大顧客だった時期があり、グラフィックスプロセッサの製造を同社に委託していた。しかし2010年代に入ると状況は一変する。Appleが自社設計のモバイルプロセッサ製造をTSMCに委託し始めたのだ。この経緯には、Intelが当初Appleとのパートナーシップ機会を見逃したという業界の転換点があった。IntelがAppleからの製造委託を断った結果、TSMCがその機会を得ることになり、以降AppleはTSMCの最重要顧客として君臨することになった。

特に2010年代後半から2020年代前半にかけて、iPhoneの世界市場シェアがSamsungを上回る場面が増え、AppleのTSMCへの依存度はさらに高まった。iPhone向けAシリーズプロセッサに加え、iPad向けチップ、さらには2020年以降はMacやMacBook向けのApple SiliconもすべてTSMCで製造されるようになり、Appleは同社の売上の4分の1近くを占める巨大顧客となっていた。

しかし、iPhoneやiPad、MacシリーズがAppleに記録的な売上をもたらしている一方で、AIブームはNVIDIAのAI向けGPU需要を想像を超える規模で押し上げた。企業顧客は数十億ドル規模の投資を惜しまず、可能な限り多くのAIプロセッサを確保しようとしている。OpenAIのChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの登場により、テクノロジー企業だけでなく、金融機関、医療機関、製造業など幅広い業種がAIインフラへの投資を加速させている。これは一般消費者向け製品とは大きく異なる構造だ。スマートフォンやタブレット、ノートPCには価格上限があり、消費者は一定価格を超えると他ブランドを選択する傾向があるが、AI向けハードウェアへの企業投資には事実上の上限が存在しない。計算能力の増強が直接的に競争優位性につながると判断されるため、企業は投資を継続する。

この状況を受けて、TSMCはAppleに対する姿勢を大きく変えつつあるとの観測が浮上している。中国のSNS「微博(Weibo)」に投稿された情報によれば、TSMC CEOのC.C.ウェイ氏がApple本社を訪問し、「近年最大規模の値上げ」を要求したという。TSMCは2nm製造プロセスのウェハー供給が逼迫しており、圧倒的な需要に対応するため、2026年から4年連続で先端プロセスノードの価格引き上げを実施する計画とされる。

先端プロセスノードの製造コストは年々上昇している。5nmから3nm、そして2nmへと微細化が進むにつれて、極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置への投資や、製造歩留まり向上のための研究開発費が指数関数的に増大している。TSMCは台湾、米国アリゾナ州、日本の熊本県などで新工場建設を進めており、これらへの投資も価格に反映される形となっている。

この価格改定はApple専用というわけではないが、同社の次世代A20プロセッサは1個あたり280ドルと試算されており、既に値上げが適用されている可能性がある。2nmノードでは3nmノードと比較して1.5倍のテープアウト(設計完了)が記録されており、Apple、Qualcomm、MediaTekだけでなく、多数の顧客が殺到している状況が浮き彫りになっている。これは2nm世代が5G通信、AI処理、高性能コンピューティングなど広範な用途で必要とされていることを示している。

さらに衝撃的なのは、TSMCがAppleに対する優先出荷体制を見直す可能性があるという点だ。AppleとTSMCの関係は長年、特別なものと推測されてきた。Appleが「良品」ウェハーのみの代金を支払い、不良品のコストをTSMCが負担しているという噂も一部で流れたが、アナリストのミンチー・クオ氏はこれを否定している。しかし、Appleが最先端リソグラフィ技術へ優先的にアクセスできる立場にあったことは業界内で広く認識されていた。新プロセスノードの初期段階では、Appleが最優先顧客として大量の生産枠を確保し、他社は後回しになることが常態化していたとされる。

iPhone 18シリーズに搭載予定のA20およびA20 Proプロセッサ向けに、AppleはTSMCの初期2nm生産能力の半分以上を確保したと報じられている。しかし、スマートフォン向けSoCがもはや最大の収益源ではなくなった今、TSMCはAppleへの優遇措置を再考している可能性がある。同社の2025年の設備投資額はAIブームにより520億ドルから560億ドルという前例のない規模に達する見込みで、収益構造の変化に応じた顧客対応の見直しは合理的な判断といえる。

ただし、これらの情報の一部は未確認の噂であり、仮に事実であっても両社が公式に認める可能性は低い。AppleとTSMCの契約条件は機密情報として厳格に管理されており、優先出荷や価格条件などの詳細が公表されることはまずない。

NVIDIAの成功はAI技術への期待に直結しており、多くのテクノロジー企業が数千から数十万個のGPUを購入し、最先端モデルのトレーニングに必要な計算能力を確保しようとしている。MicrosoftやGoogle、Amazon、Metaといった巨大テクノロジー企業は、それぞれ独自のAIデータセンターを構築しており、NVIDIAのH100やH200、そして最新のBlackwellアーキテクチャを採用したB200などのGPUを大量に調達している。NVIDIAがAIプロセッサ市場で80%以上のシェアを握っている限り、企業が追加の計算能力でより多くの利益を生み出せると判断する限り、同社は莫大な収益を上げ続けるだろう。

しかし、AIバブルが崩壊し、顧客のいないAIデータセンターが大量に残された場合、AppleがTSMCの最大顧客の座を取り戻すことになるだろう。TSMCもその可能性を視野に入れているはずだが、少なくとも当面の間、AI需要の勢いが衰える兆しは見えていない。一方で、Appleも手をこまねいているわけではない。同社は独自のAI戦略として「Apple Intelligence」を展開しており、将来的にはiPhoneやMac向けのAI専用チップ需要が拡大する可能性もある。TSMCにとって、AppleとNVIDIAという二大顧客のバランスをどう取るかが、今後数年間の重要な経営課題となりそうだ。