Meta社のOculus Quest2はSnapdragonXR2の出荷数から出荷台数が1000万台を超えたと言われています。
今まで最も売れたVR機器がPSVR1の500万台超ですから、間違いなく世界一普及しているVR機器と言えます。
まさに、Quest2の未来は無限に広がっていると言ってよいVR世界の覇者です。
一体このVR界の覇者のどこに不安材料があるのか?と思われる方も多いでしょう。
NY株式市場に衝撃が走った瞬間
2022年2月2日、NY株式市場に衝撃が走りました。
Meta社の2021年Q4の決算が発表され、それを受けてMeta(旧Facebook)の株価が26%も急落、1日で2400億ドル(約26兆円)も下落した。
会社の決算などに詳しくない方のためにお断りしておきますが、会社の貸借対照表に載っているのはあくまでも株式市場における時価ではなく、額面で、株価が上がったり下がったりしたら、貸借対照表の金額が上下するわけではありません。
しかし、株価が下がるということは業績が下がっているということです。
2021Q4 | アナリスト予想 | 2020Q4 | |
売上 | 3,367,000 | 3,341,000 | 2,807,200 |
営業利益 | 1,259,500 | 1,277,500 | |
売上に対する 割合 |
37% | 46% | |
純利益 | 1,028,500 | 1,127,900 | |
EPS | 3.67 | 3.84 | 3.88 |
単位:万ドル
と言うわけで、上にMeta社の2021年Q4の財務の一部を表に纏めましたが、アナリストの予想と比較してもそんなに悪いわけではありせん。
しかし、売り上げに対する営業利益の割合は10%近く下がっており、高収益体質だったMetaの収益率が下がっていることがわかります。
2020Q3 | 2020Q4 | 2021Q1 | 2021Q2 | 2021Q3 | 2021Q4 | 2022Q1予測 | |
前年同期比の 売上成長率 |
22% | 33% | 48% | 56% | 35% | 20% | 3%~11% |
さらに売り上げの前年同期比に対する成長率も2021年Q2を境に急激に落ちていることがわかります。
そして、2022年Q1の売り上げ成長率の予測は3%-11%となっています。
この売上成長率低下の予測の裏にはAppleのプライバシー強化による主力事業である広告収益の悪化と、FacebookをはじめとしたMetaの主力SNSの1日のアクティブユーザー数の伸び率が鈍化していることが挙げられます。
また、Meta社が社運をかけて挑む、社名を変更してまで力を入れているメタバース事業で1兆円以上もの赤字を出したことも悲観売りを助長した原因の一つです。
こういった要因から、Metaの株は先行きが悲観的となり、大暴落しました。
今まで前年同期比55%もの売上成長率を誇ってきた企業の成長が止まったので、当然と言えます。
Meta社が社運を賭けるメタバースとは何なのか?
メタバースとは何なのかと問われてすぐに答えが出る人はなかなか勉強熱心な人だと思います。
私もこの記事を書くまではハッキリわかりませんでした。
メタバースはインターネットの進化形であり、アバターを介して人々が交流したり、仕事をしたり、遊んだりできるオンライン空間
現在はこのように解釈されることが多いようです。
注意してほしいのは、メタバースイコールVRではないということです。
ゲームのフォートナイトでは、アーティストがアバターでライブなどを行っていますがこういったものも「メタバース」と解釈されるようです。
アバターを介するコミュニケーション空間と言うことであれば、Vertual Castなんかは既にメタバース的な空間を提供しているといってよいと思います。
Meta社はメタバースが収益化できるのは5-10年後と見ており、そう言う意味ではすぐに収益化できたインスタグラムなどと違って、最初から長い目で見て育てる事業だと言ってよいです。
つまり、Meta社の株が暴落したからと言ってすぐに何かが変わるというわけではないということです。
SNS事業ではReelsと呼ばれるTikTokのような短い動画を投稿するプラットフォームが流行しており、Meta社はこの事業には完全に乗り遅れました。
いくらMeta社でも次々と大流行するSNSを百発百中で押さえるというわけにはいかないようです。
2021年Q4の決算で、悲観売りは全て出てしまったともいえるので、後は5-10年間腰を据えてメタバース事業に取り組むことになるでしょう。
SNSとVRは相性が良いのか?
あくまでも現時点での私の評価ですが、Quest2は単なるゲーム機であり、アバターを介してSNSで他人と交流したり仕事したりするものではないです。
Facebookの2021年Q4の1日のアクティブユーザー数は全世界で19億2900万人で、それに対してQuest2の販売台数はやっと1000万台を超えたところです。
Quest2でメタバースと言ってもこれでは事業の柱になるはずがありません。
また、マイクロソフトやHTCも眼鏡型のVRデバイスを投入していますが、SNSや仕事をするサイバー空間で現行のVRHMDのようなVRデバイスを付けて生産性が上げられるかと言うと私は難しいと思います。
長時間使うには重くて疲れますし、髪型も崩れますし、VR酔いなど人体に対する影響もまだ完全にクリアされたわけではありません。
ARや眼鏡型のVRデバイスを各社が発売しているのは明らかにこの問題をクリアするためだと思われます。
また、HTCやValve、Meta、ソニーなどごく一部を除けば、VR/AR事業は社員教育などの莫大なコストがかさむ分野で活用するものとして製品を投入しています。
VR/ARが身近になるには、着用しても重さを感じなくなるほど小さく、髪型が変わらないようになるまで手軽なサイズになるよう、もっと時間が必要なのでしょう。
Quest2はメタバースで使われるデバイスの初期のモデルになるかもしれませんが、主流にはなりえないと私は思います。
現行、我々ゲーマーにとってはQuest2はただのゲーム用のVR機器であり、それ以上のものになる可能性は極めて低いです。
少なくともメタバースに使われることになる主力のVR/AR機器は早くても次世代か、その次になると思われます。
未来はどうなるのかわかりませんが、現時点ではメタバースは絵にかいた餅です。
Meta社のVR事業に不安はないのか?
これは、大いにあると私は思います。
現在、FTCがMetaのVR事業を独占禁止法違反で調査中とされており、Quest2があまりにも一人勝ちしすぎてしまったがゆえにMeta社は別の問題を抱えています。
また、ソフトに関しても同様です。
Quest2はソフトが弱いと言われており、現在、ゲーム機を展開しているソニーやマイクロソフトなどと違って、自社で抱えるVRのノウハウを持ったゲームスタジオからPCゲームのAAAタイトルに匹敵するような大作が年に数本出るという体制にはなっていません。
日本のメーカーからはバイオハザード4VRがQuest2向けに発売されましたが、後に続くメーカーの話は聞きません。
現在、VRゲームはその将来性に疑問符が付いている状態ですから、Meta社にはメタバースだけではなく、VRのゲーム事業にももう少し投資してほしいところです。
Meta Quest2ではアプリの審査が厳しく、審査を申し込んでから可否がわかるまでかなりの時間がかかると言われています。
また、Meta社の審査に合格しなくてもアプリが発売出来るAppLabと言う仕組みも出来ましたが、このAppLabですらも販売にこぎつけるまで数か月から半年の時間がかかると言われており、Quest2でゲームを発売するのはかなりの厳しい道のりと言わざるを得ません。
自社でスタジオを抱えてHalf Life:Alyx並みの大作を年に2-3本出しているのならともかく、現行でのソフトはサードパーティ頼みの現状では厳しすぎるのではないかと私は思います。
特に日本メーカーからQuest2のタイトルを発売するのは英語が必要と言うこともあってなかなかに遠い道のりのようです。
日本メーカーが作ったVRゲームのアルトデウスのDemo版(無償)はAppLab扱いになっています。
アルトデウスの貢献度から言っても普通にストアでダウンロードできるようにしてもよかったのではないかと思います。
また、Steamでは販売している日本のメーカーの作品のいくつかはApplab扱いになっており、ちょっと厳しいのかなと思います。
これからVR事業に新規ハードを投入してくる実績のある大手はソニーしかありません。
ソニーのPSVR2はなかなかに凄いハードに仕上がっているようで、ソフトにも力を入れてくることは確実です。
PSVR2のタイトルは独占になる可能性が非常に高いです。
そのため、ハードの性能差もあって、ここでもQuest2にも大きな差が付く可能性が高いです。
ソニーはPSVR2を使ってコンテンツ事業に全力を投球するでしょう。しかし、Meta社が見ているのはメタバースと言う遥か未来です。
この点がゲーマーから見た場合、「Meta Quest2はゲーム事業にあまり力を入れてない」と感じるかもしれません。
少なくとも私はPSVR2のリークを見て、そう感じました。
まとめ
ゲーマーから見たQuest2の問題点
- 独占禁止法で調査中
- ゲームとは現行関係ないメタバース事業への注力
- 自社タイトルの不足
- SNSではなく、コンテンツ事業に全力をぶつけてくるPSVR2の動向
Meta Quest2の不安材料とはこんなところではないかと思います。
審査が厳しいことに関してはいい面と悪い面があるので、一概に悪とは言い切れないところが難しいところです。
Steamで販売されている適当に作られたVRタイトルを見ると「厳しい審査も必要なのかな」とも思います。
以上、株価が暴落したMeta社とそれに関する影響について、簡単に説明してみました。
今後、Meta社の投資に何らかの影響が出る可能性も0ではありませんが、Quest2はMeta社の中でもかなり中心になる事業だと思いますので、大きな影響は出ないと思います。