NVIDIAはGDCにおいて、Arm買収後のPCゲームの方向性について大きなヒントを与えました。NVIDIAは、MediaTekのArmプロセッサ上で、リアルタイムレイトレーシング技術RTXとDLSSによるパフォーマンス向上のデモを行っています。これは、PCにとって、NVIDIAがArmのIPを保有するポストx86の世界でゲームの基礎を築いていることを意味します。この基礎は、ArmのCPU技術をベースにしたAppleとその強力なM1チップによって掘り起こされたものです。
これを明確にしているのがMediaTekです。「RTXは、過去20年間でPCゲームにもたらされた最も画期的な技術です」と、MediaTekのインテリジェント・マルチメディア・ビジネス・ユニットのゼネラル・マネージャーであるPC Tseng氏は述べています。台湾のArm SoCメジャーは、Kompanio 1200という新しいArmベースのPCプロセッサを開発し、Apple M1やQualcomm Compute PlatformsのようなPCプラットフォームを実現したいと考えています。
NVIDIAは、Arm上でRTXとDLSSの2つのデモを出す準備をしています。最初のデモは、ArmベースのLinux上の「Wolfenstein Young Blood」で、レイトレースによる反射とDLSSを使ったものです。もう1つはRTXを使った技術デモ「The Bistro」で、レイトレースによるフランスの都市風景を描いています。
どちらもMediaTek SoCに統合されたGPUではなく、Kompanio 1200に接続された個別のNVIDIA GeForce RTX 3060 GPUでレンダリングされており、Armマシンアーキテクチャ用の特別なデスクトップLinuxディストロを実行していることに注目したい。
NVIDIAがここで示そうとしているのは、将来のゲーム用PCはx86ベースのプロセッサを完全に排除できるということです。
ゲームはますますGPUパワーに依存するようになり、十分に高速なArm CPUがシリアル処理や低帯域幅のI/Oスタックを処理するようになるからです。
NVIDIAは、Linux用のRTX SDKを拡張し、DLSS、RTXダイレクトイルミネーション、RTXグローバルイルミネーション、AIで加速されたデノイジング、レイトレースアプリケーションのためのメモリ管理の最適化であるRTX Memory Utilityを追加しました。
ソース:techpowerup – NVIDIA Brings RTX and DLSS to Arm Platform
解説:
もう一つのx86滅亡論を主導するのはnvidiaか?
私は2020年を境にx86が滅亡に向かっていくという説を唱えています。
x86滅亡に至る道筋は2つあって一つはゲームもクラウド化し、ChromebookなどのARM系PCでもPCゲームが出来るようになりx86の利点が失われるということ。
今一つはPCの世界にARMが台頭し、ARMネイティブのアプリが主流となってx86の利点が失われること。
主にこの2つです。
このうち、PCの世界にARMが台頭するのは難しいのではないかと思っていました。
しかし、nVidiaによる、ARMの買収とAppleがM1のMacノートを発売したことによって随分と事情が変わってきたように思います。
まずM1搭載Macノートの出荷割合は世界でどのくらいだったと思いますか?
BCNiR – ノートPC市場でアップルが急伸! 販売台数シェアで2位に浮上
2020年度は全メーカー中2位、出荷台数自体が伸び悩む中、前年比181%と言う驚異的な伸び率になっています。
2021年4月の調査では市場の1割を占め、トップを突っ走っています。
Intelがハイブリッドテクノロジーに注力し、その他のメーカーもARMノートにこだわる理由がここにあるということです。
この調子で全出荷の90%以上を占めるノートPCがARM化してしまった場合、デスクトップの世界も影響を受けること必至です。
Windowsの世界も数年でARMに染まってしまい、PCパーツの世界もARM化する可能性も0ではなくなってきたのではないかと私は感じています。
また、nVidiaも上の記事通り、自社のGPUや関連技術をARMの世界に持ち込むことに積極的で、PCパーツの世界でプラットフォームを永らく持っていなかったnVidiaがARMを引っ提げて帰ってくる可能性も0ではないのかなと思います。
ARMノートの勢いがどこまで広がるかは未知数ですが、市場の大部分はもはやゲームの性能など関係のない一般人向けのノートが大部分を占めており、そこでマスを取れば、一気に情勢をひっくり返すことも可能なのではないかと思わせるニュースです。
M1Macのすさまじい躍進ぶりには私もかなり驚きました。
今後、ARMノートの流れがビジネスノートなどの世界にも入ってくるのかどうか注目です。